33話/式部誕生 | 華月洞からのたより

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ひとこと多い華月(かげつ)のこだわり

大河ドラマ「光る君へ」33話 式部誕生

 

寛弘2年(1004)、12月29日

まひろは中宮彰子の女房として藤壺(彰子の御座所)に上がり、父の官位「式部丞」にちなみ「藤式部」(とうしきぶ)という名を授けられるが、「物語を書く専門の女房」という聞いたこともないお役目に、迎える他の女房たちもいぶかしげ。局を与えられたとはいえ、女房達が廊下をしょっちゅう気忙しそうに行き来する様子は目に入るし、公任と中宮大夫の斉信が様子を見に来るし、筆をとって集中するどころではない。日中は見よう見まねで他の女房と供に中宮のお世話をして、夜にようやく筆をとる。

女房達の寝所は几帳で仕切られただけで、他の女房のいびきや寝言で寝付けず朝寝坊して叱責されるは、他の女房には「昨夜は誰かのところに足を揉みにいったの?(夜とぎにいったのか)」と皮肉られるは、散々である。数日後には、夜、物語を書こうにも猛烈な眠気が襲ってくるようになった。「無理。」

 

 

まひろは道長に「物語の続きは里で書きたい」と訴える。道長は「ならぬっ!ここで書け!」と怒鳴るが、次の瞬間「ここで書いてくれ、頼む」と深々と頭を下げる。「帝は物語の続きを読んだらおまえに会いたいと仰せだ。おまえに会いに藤壺にお渡りになれば中宮様との仲も深まろう。これは賭けだ。お前は我が最後の一手なのだ。」まひろはこれまで書き上げたものを道長に差し出す。「この章はここまででございます。物語を書きたいことに偽りはございません。まだ続きはございますし、書きたいときに書かねば、物語は勢いを失います。必ず書き上げてお渡しに参りますので、どうか家で書かせてください。」・・・まひろは道長を押し切った。

藤壺に戻ると、冬の陽が差し込む縁に彰子がひとり立っていた。まひろは思わず「お寒くはございませぬか」と中宮に尋ねる。中宮は「・・・私は冬が好き。私が好きなのは青。空のような」と、自分の好みをごく自然に語る。まひろは新鮮な驚きを胸に御前を辞する。

 

・・・寛弘3年、新年の除目が帝の御前で話し合われた際、「武力で事を進める」と評判の平維衡を伊勢守に着かせることに道長は反対した。伊勢守は空欄のまま除目は発表することとしたが、後日、道長の知らぬ間に維衡が伊勢守に任じられている。陣定に復帰した伊周が帝に進言したのであろうか。道長中心の今の政権を突き崩す伏兵として維衡を使おうという魂胆か。

・・・道長は「初めてお耳に入れますが、すでに寺社では武士を抱え込み国守と対するものまで出てきております。朝廷は律令によって世を統べるもの。武力で意を通すことがまかり通る、血で血を洗う世にしてはなりませぬ。」と帝を説得し、帝は伊勢守の交替をしぶしぶ約束する。

 

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家中の者の涙で送られてから8日後、まひろはバツが悪そうに為時の家に帰ってきた。

弟・惟規(のぶのり)は、「いじめられたの?」と、まひろの様子を見に来る。「局(つぼね)は落ち着かなくて。帰りたくなったの。」「まーったく。姉上のような面倒くさい女子は俺なら好きにならないなー」「私だって惟規のような殿御は好きになりませんからね」早速姉弟のいつもの日常が始まった。

・・・まひろは着々と物語を書き進め、ある日、惟規といとに読み聞かせる。「それ・・・面白いよ。」と、惟規は感心する。「何人もの男と睦み合ったわけでもないのに、よくそんなの書けるよな-」「睦みあわなくても書けるの」と言い返すまひろに「中宮様ってうつけなの?みんな言ってるよ」「うつけではありません。奥ゆかしいだけ。ご意思はお持ちよ。」

 

・・・まひろは道長との約束どおり、物語の続きを持って藤壺に参内した。「帝のお読みになるものを私も読みたい」思いがけない彰子の言葉に、まひろはすでに帝に献上した物語の最初の部分を語りだす。

「・・・帝は更衣の忘れ形見の皇子を宮中に呼び寄せて可愛がられますが、この皇子が物語の主でございます。皇子はそれは美しく賢く、笛もお上手でした。」

「帝みたい」彰子は嬉しそうに言う。「その皇子の名は?」

「あまりにも美しかったので、『光る君』と呼ばれました。」

「その皇子は何をするの?」

「何をさせてあげましょう」

・・・帝は道長を連れて藤壺を訪れ、まひろを御前に召した。

「帝とは朕か。光る君は敦康か。」と問われても、まひろは「秘密でございます」と、堂々としている。「あの書きぶりは朕を難じておるのかと腹が立った。されど次第に朕の心に染み入ってきた。・・・朕ひとりだけが読むのは惜しい。皆に読ませたい。」という言葉にまひろと道長は内心ガッツポーズ。

 

局を訪れた道長に、まひろは「家には帰らずここで続きを書く、まだまだ物語は続く」と言って喜ばせた。また、「中宮様は青がお好きです。」「中宮様はお心の中に秘めた言葉をお持ちです。」と聞かされて、彰子がまひろに心を開いている様子に驚く。

「褒美である。」道長は黒塗りの細長い箱をまひろに差し出すと「これからもよろしく頼む。」と言って立ち去った。

箱の中には美しい扇・・・そこには川辺に立つ少年と少女、空には小鳥・・・道長とまひろが出会った時の光景が描かれていた。まひろは思わず扇を胸に抱きしめる。

 

同年7月、興福寺別当の定澄(じょうちょう)が道長の土御門邸を訪ねてきた。「すでに3000の兵が控えております。我らの訴えを、ただちに陣定におかけくださいませ。それが成らねばこの屋敷を焼き払い奉ります。」「やってみよ。」道長は静かに応えた。

 

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オープニングで「まひろ/藤式部 吉高由里子」と出て、ああとうとう内裏での生活が始まると、ドキドキした。

 

今回の一番の見どころは「俯瞰で撮った女房たちの寝所」!

面白い映像だった。今でいう3畳ほどのプライベートスペースで隣人との間仕切りは几帳だけ。きつい。

 

まひろちゃんの「家に帰って書く」発言に本気で怒る道長(苦笑)。倫子さまにも明子さんにも感情的にならないのに、まひろには素で食らいつく。まひろは道長を押し切ったが、ちゃんと家で物語を書き進め、いつの間にか内向的すぎる彰子ちゃんからの信頼も得ているよう。さすが俺の惚れた女。

まひろに向かって「帝を藤壺に招くおとり」だ、「おまえは賭けの最後の一手」と、まぁ左大臣だもの、どれだけ高圧的だって許されるけれど言いたい放題。でも「褒美である」と、ちゃんとプレゼントを用意してくれるところが柄本道長。それも二人が出会った時の様子を描いた美しい扇。・・・戻れないけれど心の中にはずっとあの日がある・・・柄本道長の告白でしょう。素敵すぎますわ。

 

彰子ちゃん、入内時(12歳)の「仰せのままに」の破壊力は凄かったが、この時点で17~8歳か。少しづつ自我が表に出るようになってきた。庭先に自らお手玉を投げて女官たちが気を取られてる隙に敦康親王にこっそり干した果物をあげて「秘密ね」とニッコリ笑いあうシーンは可愛かった。

浅黄色の手ぬぐいを差し出したのは、まひろと知っていての「私は青が好き」発言。観察力はまひろ並みかもしれない。

 

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今回のMVPは藤原惟規(のぶのり:高杉真宙(まひろ)殿

内向的で生真面目で学者肌の父と姉に対して、惟規くんは学問好きとはいえないけれど、頑張って試験に合格して「少内記」という公文書に関わる役職に就いている。明るく楽天的で、自然体で、地頭の良さそうな直球発言を繰り返す。姉の面倒くさい性格を茶化しているわりに心配になっちゃう優しい弟。

まひろの書いた物語に「何人もの男と睦み合ったわけでもないのに、よく書けるよなー」は、心底感心したんだろうけど笑ったわ。