信長の陣羽織 『黒鳥毛揚羽蝶模様陣羽織』 | 華月洞からのたより

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ひとこと多い華月(かげつ)のこだわり

おととい(1.18)、TVの歴史バラエティー「今夜はヒストリー、織田信長スペシャル『長篠の戦い』 」 を見た。
TVだとて油断はならぬ、〇〇田が出てたら見ないからッ、と、画面をにらむ(出てなかった)。
不快な説は聞きたくない、本当のこと(今、現在確認されている事実)が放送されるに越したことはないでしょ、バラエティーでも。

『戦国TVショッピング 鉄砲(火縄銃) 』 には笑ったわ。まったくTVショッピングのナレーションと段取りで。
「新しもの好きなあの人も(織田信長さん)、前田利家さんもご愛用『これがないと、戦に向かう気がしないですよ。もう、手放せません。(個人の感想です)』」

戦国武将のおしゃれチェックをデザイナーのドン小西さんがやっていて
信長の陣羽織 『黒鳥毛揚羽蝶模様陣羽織』 を絶賛されていた。
みっしり黒い鳥の毛を埋め込んだ背いっぱいに、羽を広げた蝶が白い鳥毛(か?刺繍か?確認できない)を使って描かれている、斬新にして繊細な一品。

この蝶は家紋の蝶(=平氏が有名)ではない。
源平交替思想を意識していたとしても、まったくオリジナルの「蝶」。

純粋にデザインとして、信長は自らの背一面を覆う蝶を、陣羽織に描かせた。
干支だからいうわけでもないが龍でも、信長が大好きだった鷹でも、陣羽織にふさわしい勇壮な図案になりそうなモチーフは他にいくらでもある。
現在、失われたか発見されていないか、というだけで信長の家紋、織田木瓜以外のモチーフの陣羽織も、もちろん存在しただろう。動物モチーフもあったかもしれない。

でも、残されたのは、これ。
死と隣合わせの陣中の狂爛の中にあって、蝶はあまりに儚く、美しく、禍々しい。
これぞ覇王の美意識なのか。


この蝶は信長の背で何を見たのだろう。
信長は蝶に何を見せようとしたのだろう。


『歴史の泉』 の楠乃小玉さんは、この陣羽織の蝶をご覧になって、信長正室、濃姫の本名は、やはり帰蝶だったのではないか、と推察されている。
(帰蝶という名 2011.10.6 )



私も、そう思う。
だから、この蝶の陣羽織が、陶然とするほど官能的に見える。