平成29年5月23日、衆議院本会議にて「組織犯罪処罰法等の一部を改正する法律案」が可決され、参議院に送付されました。今回の法律改正は、「テロ等準備罪」を新設することで重大犯罪の計画・準備行為の段階で処罰することを可能にし、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結するにあたって条約の求める義務を果たすためのものです。
例えば現状では、水道施設に対する水源等への毒物投入などのテロ攻撃を受けるような破壊活動に対して、実際に毒を入れるまで検挙できる法律がないことが問題です。これを、事前の計画と、実行の準備を察知した段階で検挙できるようにすることが今回の法律改正の目的です。
テロ等準備罪では組織的犯罪集団に入っていない一般の方々は処罰の対象にはなりません。テロ等準備罪の成立要件としては、まず犯罪主体をテロ集団、麻薬密売組織などの「組織的犯罪集団」に限定しています。さらに「重大犯罪の計画」があり、「犯罪の実行準備行為」があって初めて処罰対象となるものです。対象となる重大犯罪は懲役・禁錮4年以上の 676の対象犯罪のうち277に限定しています。「居酒屋で上司を殴ると意気投合したら処罰される」などといった一部の主張は全くの誤解、ミスリードです。
テロ等準備罪が制定されたからといって、それだけでテロが防げるわけではありません。法律を実効性のあるものにするために、警察の捜査権限のあり方をどのようにしていくか、その際には取り調べの可視化を導入した方が良いのかどうか、といった建設的な議論こそ求められていると考えています。