
創造力とコミュニティ研究会の第34回目。
保苅さんをこの研究会にお呼びしたのは、今からおよそ3年前に2022年11月のこと。
2022年11月15日「そして私は猟師になった~命をいただくということ」(1) | カドベヤのブログ
あれから3年。保苅さんはたくましくなって戻ってきた。今回は総勢21名の参加者を前にして、まずは自己紹介からお話を始めます。不登校だったころのこと、自然の中でのサバイバー、カメ五郎さんの動画に啓発されて、自分で採ったもの、捕ったもので自給自足してみたいと自ら西伊豆で野営生活を始めたこと。なんか頭のおかしい若者がおるぞ~とたずねてきた地元の人たちとだんだん交流が深まっていったこと。その後、西伊豆地域おこし協力隊に入ったこと。今もそうですが、西伊豆も鹿や猪による野生動物の被害の深刻化により、狩猟免許を取ってハンターとなったこと。26歳で独立して、西伊豆ジビエフードを立ち上げ軌道に乗せていったこと。

実は3年前はちょうどこの西伊豆ジビエフードを立ち上げた時だったのですね。この3年間で保苅さんは地元の人々に支えられ、自らも支えつつ着実にジビエの底力を皆に伝えています。
山奥に単身移住した20代。彼が引きこもりをやめたきっかけとは?【田舎暮らし】He moved to an old house deep in the mountains in his 20s.
鹿は農作物に被害を与えるのみならず、食べるものが少ない時は木の皮をはいでしまう。
猪は田畑を掘り起こすのみならず、車との衝突など人への気概も大きい。
それ以外にもハクビシンなど屋根裏に住み込む動物のことも知られています。

今回は、実際の捕獲の様子を詳しく説明していただきました。くくり罠と箱罠。箱罠は箱の中に餌を仕込んでおいて追い込むもの。くくり罠は罠の上を通ると、バネが作動して、脚に縄がくるりとかかるというものです。

ここで保苅さんはそのくくり罠を使って実践してくださいました。地面にバネの部分を埋めておいてその上を踏むとバネが跳ねて足の部分にワイア―が巻き付くというものです。



圧力がちゃんとかかること、そして、ワイア―の巻き付き方も大切。きつすぎると脚が折れてしまいます。またかかった鹿が暴れるとやはり脚が傷ついて、血が肉にまわってしまう。こうなると売ることができなくなるそうです。

(右は血が肉に流れてしまったもの)
もちろんハンターとしては保苅さんは仲間たちとさまざまな猟を行います。四方から皆で追い詰める捲き狩り、静かに寄っていく忍び猟、そして車で移動しながら獲物を探す流し猟。もちろん仲間たちは人間だけではなく、猟犬の存在。保苅さんと猟犬のすう君のパートナーシップももう長い。
今までの猟の中で危ないこともたくさんあったそう。鹿は基本的に逃げていきますが、猪は時々こちらに歯向かってくるそう。今まで3回ほど恐ろしい目に遭ったそうです。40キロぐらいの猪だったらまだしも、今まで80キロ級の猪に体当たりされそうになったことも。確かに車に衝突して大破することもあるぐらいですものね。体当たりならまだしも、噛みついてくることもあります。
ジビエは血抜きをして鮮度を保つためにすぐに処理して冷凍しなくてはなりません。
保苅さんはいま、解体所も持っていて、一人でさばいてきました。皮はするりと向けるのだそうです。ただ気をつけなくてはならないのは、寄生虫がいることもある。細心の注意が必要なのです。今回もお肉を持ってきてくださいましたが、さすがに野生の生き物には脂肪がない。霜降りをありがたがる私たちの食肉文化は人間本位なのだとわかります。

(保苅さんの解体所)

(寄生虫がいると肉は売ることができない)
狩猟文化は命と向き合い、仕留めた命を敬い、大切にいただくというプロセスです。しかし現在伊豆にいるでおよそ7000人いるハンターたちは高齢化が進んでいます。なかなか運んで解体するまでの体力もなく、きちんと掘って埋設することもできないので、そのまま山の奥に放置されてしまうことも。高齢化の弊害はいろいろな意味で大きい。
そして皆が知りたい問題は熊。本来伊豆にはいないはずの熊が100年ぶりに保苅さんの罠にかかったのも3年ほど前でした。そのころは麻酔銃を撃って山奥に放獣したそうですが、これから伊豆にも熊が増えてくるとなるとやはりハンターの手を借りなくてはなりません。そのためにもハンターの育成は重要になってきます。また熊たちはおそらく箱根から伊豆に折りてきたのだとすると、やはり人との共存も大きな問題となります。地面はつながっていますから、私たちの暮らしそのものが自然との共存を促しているのです。

もちろんジビエをもっと知ってもらうための試みも保苅さんの大きな課題です。これもチームの取り組みが大切。まず料理人たちが、食材として使いたい!と思うことが大切。もちろん食材に向き合う料理人の態度も重要です。

もう一つ。地域食材として地元の人々にこそ知ってもらうこと。究極の地産地消でもある保苅さんの取り組みですが、同時にジビエを通して、まさに地元の食文化そのものも変わっていくはず。

最後にこの地元に対する思いを保苅さんは語ってくれました。

「何の能力もなかった私を迎え入れ、育ててくれた西伊豆町。
移住してからの困難も、地域の皆様の支えがあったからこそ乗り越えられました。
このジビエ事業を持続可能な産業にし、若者が戻ってこられるような基盤を作ること。
それが私の、地域への恩返しです。」

続く時間は質疑応答にあてられましたが、皆さんからの質問が途切れない。
最後に脇に立って聞いていたこーたさんが手を挙げてコメントをくださいました。
3年前も保苅さんのお話を聞いていたこーたさん。台所前のカウンターで2年前に亡くなった小宮さんと聞いていたそう。小宮さんが「声が小さくて聞き取れねえよ」とぶつぶつ言っていたのを思い出して、今日は小さなマイクを持ってきてくれた。「でもそれ、今日は必要ありませんでした。すごく声もとおるし、自信に満ちて、3年前と全然違う。それ、自分でもわかります?」
会の終わりにふさわしいコメントでした。
さて、今日はもちろん台所チームはジビエ料理に取り組みます。3年前も保苅さんの持ってきてくださったジビエに向き合った庭田さん。
「そして私は猟師になった」(2)庭田シェフ、ジビエに挑む | カドベヤのブログ
今日はさらにジビエについて研究して、カドベヤに臨んだ。
作ってくれたのは、
・ジビエのビリヤニ(バスマティライス)
・ダルカレー
・サラダ
・ジビエのチリコンカルネ
・神戸からの直行おいしいパン(飛行機で神戸から今日のために来てくれたJさんがおいしいパンを持ってきてくれました)

ビリヤニは何度も家で試してみたという庭田さん。バスマティライスがどうもうまくいかないと言いつつ、今日は塩加減もスパイスとの愛称、そしてなんといってもほろほろの鹿肉ともうばっちりの炊き具合でした。

様々なスパイス。黄色い袋がバスマティライス


ジビエには脂肪分がない

しっかり水につけたバスマティライス。
チリコンカルネは肉を炒めるところから。「ジビエは普通の肉と違って弾力が違う」と言いつつ、食材と向き合う庭田さん。食材の研究とうまみを出す方法はやはり料理人のなせる業。今日はスーシェフに徹する加賀さんとのチームワークも素晴らしく、たっぷりのおいしい料理が出来上がりました。


ジビエは料理していても手にその弾力が伝わる。こうしてチリコンカルネが出来上がります。


今日は虹色畑の原田さんも来てくださいました。
総勢20名の皆さんと囲むテーブル。今日は話だけで帰宅しようと思っていた方も、保苅さんのお話を聞いて残ってくれました。
そう食べるまでが今日の話の結論なんです。

今日のもう一品はダルカレー。こーたさんが手際よくよそってくれる

お豆のカレーです。

ビリヤニにはドライオニオンと切りたての玉ねぎも添えて。

おいしそうなチリコンカルネ

一人でも多くの方々に私たちの自然との共存を味覚でも考えてもらうこと。
それがいただく命への恩返しなのかもしれません。



久しぶりのにぎやかな女子テーブル

もちろんこれでもかと作った鹿肉のビリヤニは完食。

ご飯を食べ終わった後もしばらく歓談が続きました。今日はシロアリ研究者の林先生も来てくださいました。
食はみんなをつなげて、あらためて異なる視点から聞いたお話を振り返るツールになる。
保苅さん、庭田さん、加賀さん、そして皆さん、ありがとうございました。
そして、西伊豆ジビエフードをこれからもよろしくお願いします。
西伊豆ジビエフード
