明治の後半から大正にかけての北九州・小倉を舞台に、密かに思いをよせる未亡人とその一人息子に献身的に尽くした車夫・松五郎の生涯を描いた作品で、監督は稲垣浩、主演は三船敏郎、共演は高峰秀子、芥川比呂志、松本薫、笠原健司、笠智衆等です。
(1958年度:東宝)
喧嘩っ早くて乱暴者だけど人情に厚く、粗暴な言動とは裏腹に繊細な性格で心優しい無法松こと松五郎。そんな愛すべき九州男児を三船敏郎が熱演しています。世界のミフネの豪快なイメージが松五郎のキャラにピタッとハマっているんですよね。そしてデコちゃんも上品な未亡人を好演しています。松五郎が祇園太鼓をたたくシーンが名場面となっており、時が進む際に挿入される人力車の車輪の映像が効果的。松五郎の無償の愛が大きな感動を呼ぶ叙情あふれる秀作です。ちなみに本作はヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞していますが、阪東妻三郎主演のオリジナル版は一般的に本作以上の評価を受けているようです。でも、僕が印象に残っているのはリメーク版のこちらの方です。こっちの方が出演者に親しみがあるからかもしれません。もう一度オリジナル版も観てみたいです。
(NHK-BSで再鑑賞)