杉村三郎シリーズ2作目。吉川英治文学賞受賞作。今多コンツェルン会長の娘婿である杉村三郎が所属する広報室は、仕事ができず、仕事場に馴染もうともしないトラブルメーカーのアルバイト・原田いずみを解雇した。しかし逆恨みした彼女は三郎たちに度を越した嫌がらせを開始する。折しも連続無差別毒殺事件が世間を震撼させていた…。
『名もなき毒』のタイトルの意味は、殺人事件に使われた物質の毒物(青酸カリ)の他に、人間の心に潜む悪意、嫉妬、恨みといった負の感情を表現しています。
日常の中の身近な狂気的存在の原田いずみと、毒物を使用して既に一線を越えてしまっている犯罪者。最初は全く無関係だった事件が並行して描かれる二重構造のストーリーが展開され、クライマックスで「二つの毒」が交錯する構成がお見事です。原田いずみというモンスターを通して、悪意という精神的な毒でも、他人の幸せな日常を破壊できてしまうことが示されています。物質的な毒とはまた違った恐怖を覚えました。


























