弁護士の妻・園子は、絵画教室で知り合った商家の娘・光子に恋心を抱く。そして園子は絵のモデルとして目にした光子の裸身に激しく欲情し、最初戸惑いを見せた光子も園子の愛を受け入れるようになる…。原作は谷崎潤一郎さん、監督は増村保造さん、主演は若尾文子さんと岸田今日子さん、共演は船越英二さん、川津祐介さん等です。
(1964年度:大映)
当時の映画界でタブーだったとされる同性愛を妖しく、そして美しく描いた文芸作です。小悪魔的な魅力を振りまく光子を若尾さんが、光子に翻弄される園子を岸田さんが、それぞれ好演しています。単に同性愛を描くだけではなく、光子の情夫と園子の夫も重要な役割を担っており、更に奥行きのあるストーリーにしている点が良いです。別に激しい絡みシーンがあるわけではありませんが、エロスの世界を描くのに、必ずしもヌードシーンや過度のエロ描写が必要でないことを本作が見事に証明しています。
ちなみに本作は市川崑監督が温めていた企画でしたが、ドキュメンタリー映画『東京オリンピック』と時期が重なったため、増村監督にこの仕事が回ってきたそうです。