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[忠実な猫]

「あ!定時の5時だ!帰ろ。今日も疲れたなぁ。マッサージしてから帰ろう。」
週に1度、仕事の疲れを癒すためにマッサージ店に通うのが、この男の習慣である。
電車に揺られながら、うとうとしている。人混みの中立ちながらよく寝れるもんだ。余程、疲れているのか、無神経なのかどちらかだ。
駅員(次わぁ、神戸、神戸、お降りの方はお忘れ物のないよう、ご注意ください。)
男は目を覚ました。「いっけねぇ、着いた!降りなきゃ!危ねぇ、ギリギリだった、ふぅ...」
周りを見渡し、異変に気付く。
「また、やっちまったよ。寝過ごしてしまった。あぁー。」
どうやら、降りる駅を間違えていたらしい。男は大阪駅で降りなければ家には帰れない。
間違えた、のではなく、寝過してしまったが、正解である。
男にはよくある事らしいが、毎度の事となると、あほうとしか言いようがない。やはり、無神経なのだ。
晩6時半。やっと降りるべき駅についた。
辺りはもう暗い。
「急がなきゃ!閉まっちゃう!」閉店は8時までらしい。
マッサージ店に着くと、店の前に1匹の猫が座っていた。
男は初めて見たかのように、そっと避ける。
なんとかマッサージ店には間に合ったらしい。
マッサージが終わり店を出ると、また猫が座りこんでいた。
野良猫なのだろうか?キジトラだったのでそう思った。
帰り道、足になにか触れた気がした。下を見ると、マッサージ店にいた猫だと思った。
「おまえ、ついてきたのか?やっぱり野良猫なのか、おまえ。まぁ、ちょっと待ってろ。」
近くのコンビニで猫缶を買い戻った。
猫は座って待っていた。
「おまえ言葉がわかるのか?偉いな!ちゃんと待って!そこの公園に行こうか!」
猫は美味しそうに猫缶を食べる。
(ぐぅー)そういえば男はまだ、晩御飯を食べてはいない。
そうすると、猫は猫缶を差し出すかのようにそっと、足元に置いた。男は驚きの顔を隠せないでいた。「ありがとう。おまえが食べな?そう言えば名前がないと呼びづらいな!えーっと、ミケ!おまえの名前は今日からミケだ!」(にゃーお)
たまたまだろうが返事をしたように聞こえた。
「また、会えたらいいね!今日は帰るから、またな!バイバイ!」
公園にいた若い男女は男の姿を見てクスクス笑っている。
それはそうであろう。男は30歳くらいだろか。暗い夜の公園で、スーツを着た男が猫に喋りかけているんだから気味が悪いか、馬鹿にしか見えないものだ。
次の日。また、マッサージ店に行った。週に1度のはずだが、猫が気になったのであろう。
店の前に着くと、周りを必要以上に見回した。
昨日は店の前にいた、猫がいないからだ。
「おかしいなぁ、おーい!ミケ!今日はいないのかぁ?」やはりいないようだ。
諦めて、マッサージをせず、帰ることにした。
週に1度のマッサージの日である。相変わらず、また、寝過ごしたようだ。
店の前に着くと、猫はいた。
「ミケ!久しぶり!次の日行ったのにいないから、もう会えないかと思ったよ!マッサージしてもらうから、待ってて!」
もちろん、猫は待っていた。
今日も猫缶を買い、公園に行った。
「今日もよく食べるなミケ!おまえは可愛いやつだなぁ。」そっと撫でる。
これは男の習慣の1つとなった。
もちろん、週に1度のマッサージの日にしか猫は現れない。
ある日、男は仕事で失態をしてしまい、帰りが遅くなってしまった。どこまでも鈍臭い男だ。
急いで、マッサージ店に行くと、猫は待っていた。
マッサージの時間には間に合わなかったが、いつも通り、コンビニに行こうとしたが、猫はついてこない。
ゆっくり歩き、振り返ってみても、猫は動かない。
なぜ、動かないのか不思議に思った。
面倒だが、コンビニに行き、店の前に戻った。
猫缶を差し出すと、ゆっくり食べだした。
男はホッとした。
約束を破ったから、嫌われたかと思ったのであろう。
「また、くるね?」と言って男は帰った。
次の週、猫はいない。時間もいつも通りのはずだが、猫はいない。
男は本当に嫌われたかと焦ったのだ。
週に1度とはいえ、男には家族同様の気持ちがあったからだ。
「すみません!今日はマッサージはしないんですが、週に1度、店の前にいた猫今日いませんね!」
店主「あぁ!あの猫なら、先週のこの時間帯くらいに、そこで、轢かれて死んだよ!」
「え、なぜ、轢かれたんでしょうか?先週のこの時間、猫は元気だったはずです!」
店主「わからないなぁ、でも轢かれた車のそばにぺちゃんこになった猫缶もあったらしいよ!」
「猫缶?...」
それは男が猫にあげた猫缶しか考えられない。
男は泣いた。なぜ、あの後、車に轢かれたかもよく考えた。でも、男には理解もできなかった。
たんぽぽを供えて、黙祷した。

次の日、マッサージ店にもう1度行った。
店主が現れ、男に言った。
店主「あんたが、殺したようなもんだよ!名前なんかつけて、エサもあげて!」
「え?僕はただ。ついてきたミケが可愛くて、エサをあげただけですよ!」
店主「わかってないなぁ、それはあんたの勝手なエゴだよ!あんたが、そうやって、毎回、毎回、猫を構うから、あんたに懐いちゃって、ついていこうとしたんだろ?あんたには悪いが、その日も猫に餌あげているところ見たんだよ!あんたが帰った後、猫缶を食べ残したまま咥えて、あんたを追っ掛けていったよ!そのや先に轢かれたんだ!」
男は黙り込んだ。
猫の気持ちを考えずに、さっさと帰った自分を悔やんでいた。
時間通りに行っていれば、いつも通りだったのだろうか、いっぱい考えて悔やんだ。
悔しさで涙を流した。
「なぜミケは、追いかけてきたのだろうか...ごめんよ。」

男は週に1度、猫缶をお供えすることにした。
もちろん、時間はいつもと同じ。
だが、寝過ごすわけでもなく、1度帰った後、お供えをしに行くようにしている。