やっと詳細メモを取ったので、「信州川中島合戦 輝虎配膳」の観劇レポを書きます
実は先日見た時に予習をしていなくて、人物関係がわからず「よくわかんない」と思ってしまったので、昨日はちゃんと予習をして行きました。そうしたら問題なく理解できたので、私が予習したポイントを皆さんにもお伝えいたしますね~♪
1.上杉謙信・・・じゃなくって演目の中では上杉輝虎(謙信の別名が長尾景虎ですので)は、武田信玄の軍師である山本勘助を味方に引き入れたいと思っている。
2.唐衣(中村児太郎さん)は、山本勘助の妹であり、現在は敵方の家老である直江山城守真綱(坂東彌十郎さん)に嫁いでいる
3.越路(白髪の女性、市村萬次郎さんが演じられてます)は山本勘助の母。
4.お勝(中村扇雀さん)は山本勘助の妻、つまり越路にとっては「うちの嫁」です。
以上の4点を頭に入れて観に行ったらよくわかりました☆
たったこれだけを頭に入れて行かなかったら、ほんとによくわからないのです。
なのでこれからご観劇の皆さんは、ぜひぜひこの4点だけは頭に入れて行ってくださいね
「輝虎配膳」は義太夫狂言です。
最初に「いかに方々~」とお侍さんが舞台に並ぶのですが、中村橋吾さんの姿が立派。(舞台に向かって一番左端)
あんまり他の方のことが印象に残ってなかったみたいで、初回観劇時に勝手に「4人の侍が」と思っていたのですが、よく見たら5人でした。「あれ?5人だったっけ?増えた?」と思ったくらいです。
今回の「輝虎配膳」では師匠の中村橋之助さんの立ち姿も立派でしたので(後でそのことは書きます)、師匠譲りの心根でしょうか
本題が始まると、中村児太郎さん演ずる唐衣(勘助の妹)。
どうやらここは、唐衣が嫁いだ直江山城守の住居みたいです。
(山本勘助って妹居たっけ?嫁も居たっけ・・・?と史実が気になりましたが、半分伝説のような人物なので、いかようにも脚色できるというわけなのでしょう)
唐衣は、自分の母に手紙を出して「この世の名残りに顔が見たい」と書いたようなんです。
そんな手紙を出されてやって来た母 越路。(市村萬次郎さん)と、勘助嫁のお勝(中村扇雀さん)
花道から登場です。
萬次郎さんはコミカルなお役も面白く、こういう重厚な貴婦人のお役もうまく、見甲斐のある役者さんです。
扇雀さんは着いてきた嫁風に徹しておられましたが、着物の色が綺麗。(帽子に黒の着物に紺色と鈍い金色の混ざったような色の上着)
婿どの(坂東彌十郎さん=直江山城守)が、歓迎のお品、と小袖を持ってまいります。
将軍家から賜った大切な小袖。それを、義母の越路は「(敵である)輝虎の古着だからいらない」「いややの、忌まわしい」と断ります
(「小袖に罪はありませんし、敵味方はそれとして、婿殿からの贈り物として貰ったらいいのに」と思ったワタクシ・・・いや、やっぱりいやかな。敵の大将が袖を通したものですものね)
「勘助へのみやげはいらぬ。自分が元気に戻った顔で充分だ」という越路。
全くとりつくしまがありません。
ご機嫌を直すために、直江山城守は「料理を持て! 料理、料理~!」と云います。
そして運ばれてくるお膳。給仕の人が持ってくるのかなと思いきや・・・
運んで来たのが、なんと中村橋之助さん!上杉輝虎本人なのです
烏帽子に金ピカの着物、そんな姿です。一目で殿とわかる拵え。
「うわ~まじですか~。殿が自ら運んでくるんだ~」と思ったのですが、これこそが「輝虎配膳」の意味ですねぇ。
そうして殿お手ずからお膳を越路の前に用意します。
敵方の大将がこんなに礼を尽くしているのに、まだとりつくしまのない越路。
「いつもは女中たちに給仕をしてもらっている。慇懃な給仕では窮屈だ」と云います。
(台詞は違いますが、意味は合ってます)
上杉輝虎は、勘助が味方に欲しい旨を伝え、越路に「お料理を食べてください」と頭を下げます。
越路はいきなり立ち上がり、御膳をひっくり返します!
さすがにこれには輝虎もわなわなと震え、怒り心頭!(無理もないわ)
ここで怒りのほどをぶちまけてゆくのですが、ここが面白くって♪
上杉輝虎は、ここで一枚一枚着物を脱いで怒りを表わしてゆくのですが、「えっ(≧▽≦)何枚着ているの!?」と思うくらい、何枚も何枚も、脱いでも脱いでも着物が出てくるんです。まるで・・・筍の皮を何枚剥いてもまだある、っていう感じで。金太郎飴か、マトリョーシカか ちょっと面白かったです。
会場からもほんのりと笑いが(笑)
橋之助さん、あれは暑くないのかなあ?白い着物は薄いものには見えましたが、何枚も何枚も・・・
着物を腰まで脱いで下ろして身軽になった輝虎は、お手討ちにせん!と意気込んで・・・!
刀に手をかけます。見得! かっこいいー!
橋之助さんの心根が素晴らしく、終始立ち姿が立派でした。お殿様役、素晴らしい
そこへ止めに入るのが勘助嫁のお勝。
御琴を弾きながら止めるのです! 扇雀さんのこのお勝も素晴らしい。
三味線の音とピッタリのお琴の音。
弾きながら、歌いながら、輝虎の怒りを鎮めようとするのです。
「母を斬るなら私を斬ってください」
嫁のこの願いに、輝虎も「早くここから立ち去れ!」と。
御赦しが出たのです。一旦引っ込む輝虎。
花道に向かう越路とお勝。
もう一度ズカズカと出て来て、刀に手をかけて荒ぶる上杉輝虎の見得!
橋之助さん、かっこいい~ 越路の義理の息子に当たる彌十郎さん扮する山城守は手でそれを制してます。手と表情だけでも制していることがわかります。彌十郎さんも素晴らしい。
ここで舞台には幕。
花道だけのお芝居。上を見上げ、ぐっとこらえる越路の萬次郎さんも素晴らしい。
威厳を崩さずに花道を歩いてゆきます。
そして、母の命を救うことができてほっとして力が抜けた感じの扇雀さんのお勝。上杉照虎に向かって一礼。そして引っ込み。
場内拍手・・・ 完。
そんな物語でした。
良かった~
橋之助さん、かっこいい~
こんなにかっこいいお殿様を演じてくださる役者さんでしたっけ?
橋之助さんのお芝居は昨年の錦秋名古屋顔見世の、色悪役(それも良かったです)。
それから「俊寛僧都」を見たことがあるだけだったかもしれません。
時代物がよく合う役者さんなのですねぇ。重厚な殿役がとってもいいわ、と思いました
それから、扇雀さんのプロ根性には脱帽です。前の記事にも書きましたが、今月4つもお役をこなしてらっしゃるのに、さすがの武家女房っぷり。(といっても母を思う義理の娘としてのお芝居ですが)
お琴を盾にして振り回して、刀を振り上げた輝虎と、琴を挟んで弾きながらの見得にはびっくりでしたが、なんて珍しい演目なの お琴を挟んだ見得は、この演目くらいしかないのでは?
萬次郎さんの芸の広さも素晴らしく。
コミカルなお役の時も可愛らしく、今回の母君役は重厚で。
見甲斐のある演目でした~♪
それでは~
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