脚本が巧妙「上州土産百両首」@新春浅草歌舞伎 | 油絵で歌舞伎! KABUKI OIL PAINTING

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「上州土産百両首」は、脚本的によくできていると思います。

(ネタバレ含みますので、おいやな方は観劇まで読まないでねニコニコ

舞台はお江戸。麻布生まれとか、そういうお話の中で進みます・・・ 
「う~ん、一体どこが『上州土産』なんだろう?江戸じゃないか・・・」と思いながら一幕目を見てました。

でもタイトルの謎は大詰できちんと明かされます。
「そういうことだったのか」って私も納得いたしましたもの。

物語のキーパーソンは、なんといっても中村亀鶴さんの演じる「身ぐるみの三次(さんじ)」。

男女蔵さんの演じられる親分は、スリという職業なのにめちゃめちゃいい人!
気立ても良く、男気もある!

猿之助さんの演じる正太郎は、普通にいい人です。
例えば、普通の人間である私が正太郎の立場だったら、同じように怒って罪を犯して、同じように脱獄して、同じように幼馴染に会いたいと思うと思うだろうから。

坂東巳之助さん演じる無頼漢の牙次郎は、自分のことをドジとかバカとか愚図とか言っているけれども、まっすぐで綺麗な心の持ち主。

我が君 門之助さんハートの演じる岡っ引きの親分 隼の勘次は本当にいい人!
粋な計らいのできる、気の回る江戸の男って感じなのです。

寿猿さんの演じる「たつみ屋」の親父様(宇兵衛さん)も、娘の縁談がまとまって大喜びして、本当にいい人!

梅丸さんの演じる宇兵衛さんの娘 おそでちゃんも可愛くて、一途に(そしてちょっと大胆に)正太郎に恋してて、とってもいい娘さん!

隼の勘次の手下衆も、牙次郎の事情を分かってあげて親分の言うことを聞いてくれる、本当にいい人たち!

そんなに「いい人」しか出てないこの演目の中で・・・ 
中村亀鶴さんの演じる「身ぐるみの三次(さんじ)」だけが悪い!
一人だけワルなんです!!目 

いや。この人だけが悪の美学を貫いているって感じでした。亀鶴さん、この演目ではヒールまっしぐらですね。ぶれない悪役、徹底してます(笑)
しかも亀鶴さんてこういうニヒルな悪役が似合いますよねぇグッド!「仮名手本忠臣蔵」のニヒルな敵役、二刀流の小林平八郎正胤なんかもかなりいい味を出してらっしゃいましたもの。

正太郎がこのワルの三次の前で「10年で稼いだ二百両~~」とお金の話をした時、三次は悪だくみのことしか考えてなかったですよ。『バカバカ、どうしてその人の前でお金の話をしちゃうのさ!』と思いましたあせる 

一生ゆすってたかって生きようとする、どうしようもない悪党です。
でもこんなヒールを演じるのも楽しいものでしょうか♪

皆さん、考えてみてください。自分が10年間真っ当にコツコツと貯めてきたお金。大事な人に渡そうと思っていたお金をゆすられる気持ち。そして一生食い物にされようとしている状況。そりゃ~怒りますよね、許せないに決まってます。正太郎が三次を殺してしまうのは、気持ち的にはもっともですよ。
(こういうことって、現代の世の中でも起こっている気がします)

結果的に人殺しになってしまった正太郎は、せめて自分の首に懸った賞金 百両を弟分の牙二郎に土産としてあげようと思っていて、牙二郎は牙二郎で その殺人犯を捕えて手柄にして、その手柄を正太郎への土産にしようと思っていた。

すごくよくできた脚本ですよね。二人とも違うことを思いながら土産を探していて、結果として二人とも同じ物を狙ってあげようとしていたんですもの。

これ、オーヘンリーの小説(『二十年』ていう小説?)が元ネタらしいですが、読んでみようかなぁ。

そんな、相手を思う心に討たれたのが捕手側の親分(門之助さんハート)の隼の勘次。
門之助さんの世話物調(江戸っ子調?)の台詞を初めて拝聴しましたが(「いけねぇよ~」みたいな口調の)、すごく良かったです恋の矢ラブラブ この親分が出てくる最後のところって、もう舞台の正太郎と牙二郎は最高潮!って感じに泣いていて、そんな場面に出てきて「話は聞いたよ」的な登場の仕方は、難しいと思うのです。
門之助さんはその場にも違和感全くなく溶け込んで入って来られるので「流石!」と思ったのでした。
やっぱり門之助さんて、私が惚れていることを除いても上手い方なのだわキラッ
(惚れているので尚更サイコーハートに上手く思いますけどねチョキラブラブ

お互いを想う正太郎と牙二郎の気持ちに、少しほろっときましたが、縄を解いてあげる親分の心あっての感動で御座いました。「捕り親のお前が決めることだよ」っていうような台詞もぐっときました!!

会場は、門之助さんが出て来られた時分には既に涙でグスングスンタイムでしたよ。
私も親分と二人の場面でぽろっと泣きました。

ラストに月を見上げる正太郎と牙二郎にもほろり。
でもこのラストってどうなるんですか?

(超ネタバレなので、読みたくない方は読まないでくださいね)

「ガジ・・・これでお前とも歩き納めだなぁ」
「違うよ、アニキ。地獄までも一緒だよ」(←泣かせやがって!コノヤロウ!)

って、二人で歩いてTHE ENDなんですが・・・ 

これ、どう解釈したらいいんでしょうね。牙二郎も一緒に罰を受けて、地獄まで一緒に道連れになるってことを決めたってことなんですか? 台詞どおりだとそうなりますよね。

なんだか切ない。。。 

猿之助さんが、最初の場で良心が咎めて座っているところが源九郎狐に見えてしまいました。なぜ「四ノ切」のイメージが重なったのだろう(笑)
猿之助さんはこういう、時代劇みたいな新しめの歌舞伎 いいですよね~。ご本人の持つ味がぐっと生きる気がいたしますニコニコ 

巳之助さんも、ちょっと間が抜けているけれども綺麗な心の持ち主の牙二郎役、良かったですよね。アニキ役の猿之助さんの正太郎がけっこう全開なので、受けとめる方も「のほほ~ん」としたキャラクターですが全開のはずですよね。難しいお役どころをうまくこなしてらっしゃると思いましたグッド!

隼の勘次の住居の場。 
奥様役の上村吉弥さん、いつも立ち上がった門之助さんの着物の裾を直してくださっていてありがとうございますニコニコラブラブ歌舞伎の女形さんて、いつもそういうところを自然に気を遣ってくださるキラッ女房役、ありがとうございます音譜 そのシーンで吉弥さんの株、大幅アップでした音譜(まじめに、ああ素晴らしい女形さんなんだなと思いましたよ)

隼の勘次の手下衆。
1回目に3階席から観た時は双眼鏡で門之助さんを見るのに必死でしたが、なんとなんとビックリマーク
瀧乃屋のご一門の門松さんに、澤瀉屋の猿三郎さん、猿四郎さん(もう一人は中村又之助さんという方みたいです。私が今まで存じ上げない方でした)と、なんと豪華な顔ぶれを引き連れているではありませんかキラッ 一階席は、やっぱり全部を味わうことができますね。3階席がどれほど見ることに労力を削がれているか実感しました。(また3階でも観ますけどね)

中村梅丸さん。
こういう舞妓さん、実際にいると思います~!本物の女の子みたい!可愛かったです。
で、「泊まってったら?」なんてちょっと大胆な娘さんラブラブ
ここで正太郎が泊まって行っていたら、運命が狂わなくて済んだのにね。色っぽい台詞ですが、実は運命の歯車のような台詞ですよね~汗

つらつら書きましたが、楽しみました!「上州土産百両首」キラッ 

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