https://www.cosmopier.com/shoseki/4864542081/

 

 

書店にもamazonさんにも「イギリス英語」の参考書はたくさんあります。どれも著者さんと編集者さんナレーター(声優)さんの工夫と熱意と未來の読者に対する誠意が感じられる作品。だって、ーー最大手学習参考書出版社と大手予備校で企画者・ディレクター・編集者としての、ずぼらで無意味に尊大だったわたしでさえそうだったのですから、わたしの経験からもーー1冊でも自分の本を出版しようとするなら誰だって一生懸命なんです。

 

イギリス英語の入門書紹介――役に立つのにお洒落で楽しい「イギリス英語」の招待状のようなもの

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/2387050ede4ca0a2947e1c5783157128

 

けれども、著者や編集者の工夫と誠意がその作品の出来映えと正比例するわけではない😢のも現実。まして、例えば、「イギリス英語」を学びたい、イギリス英語でするコミュニケーションスキルを開発したい。そう、イギリス英語を習得・修得したいという、その実、多様な能力開発のレベルとスキルのスペックのニーズを抱えた、これまた実に多様な読者を想起するとき、それらの大方の読者にとって能力開発の効果が期待できる作品は少ない。その多くは多くの読者にとって単なるイギリス英語の「ショーケス」でしかない、鴨。残念ですが、英語教材・カリキュラムの企画と制作に四半世紀以上たずさわってきたわたしはそう思います。

 

蓋し、それらのイギリス英語の参考書の多くは、(1)語彙では定番の(以下、アメリカ英語ーイギリス英語)「地下鉄:subwayーunderground, tube」「建物の1階:first floorーground floor」「エレベーター:elevatorーlift」「サッカー:soccerーfootball, footy」「女性用のハンドバッグ:purseーhandbag」「財布:walletー女性用の purse, 男性用の wallet」「1区画のアパート居住空間, そのアパートの集合体たる建物:an apartment, apartments or an apartment house/ buildingーflat, flats」

 

「茄子:eggplantーaubergine」「トウモロコシ:cornーmaize」「ポテトチップス:potato chipsーcrisps」「フライドポテト:French friesーchips」「お菓子:candyーsweets」「ビスケット:cookieーbiscuit」「スコーン:biscuitーscone」や「もっている:haveーhave, have got」「ホットモットの🍱お弁当🍱とか🍔ビッグマック🍔お持ち帰り:take out, to goーtake away」「素晴らしい:awesomeーamazing, fantastic, marvellous」から始まり、

 

他方、(2)文法はといえば*「family 型集合名詞での衆多名詞使用回避傾向ー衆多名詞使用選択選好」*「主語の要請・要求・推奨・命令を意味する動詞(be+形容詞)に続く目的語としてのthat節内の述語動詞が仮定法現在形かーshould+動詞の原形か」「引用符の使い方、アメリカ英語では引用やセリフ記述の際にダブルクォーテーションマーク("アメリカ")を使用ーイギリスではシングルクォーテーションマーク('イギリス')を使用」「be動詞と助動詞を欠く疑問文では助動詞doがほぼ原則用いられるー疑問文にする元のセンテンスの述語動詞がhaveやhave got などの場合、助動詞doを用いないことも希ではない↖️実に🇬🇧イギリス英語🇬🇧らしい♥️」

 

そして、(3)「母音の後の/r音/も漏れなく発声される(rhotic, say r-full)ーその/r音/が母音の前にない限り母音の後の/r音/は原則発声されない(/r音/を発音しない非R音性的な, non-rhotic , say r-less)」「母音に挟まれた/t音/が/d音/に濁るか/l音/に強化されるーいえいえこちらイギリスでは普通の/t音/のままです、それがなにか?」という発声のお話で終わる(↖️実はイングランドでも北部を中心に「r音」が落ちない方言は広く分布しており、アメリカでもニューイングランドを中心に「r音」を落とす方言も根強いのですけれどもね🎵)。

 

それら多くのイギリス英語の参考書では、このような実に興味深く重宝な情報が丁寧に印象深く(interesting and informative as well as impressive and meticulous)紹介されています。しかし、繰り返しになりますが、それらは高尚優美な「ショーケス」に終わっているものも少なくない。

 

*Her family is all tall.(アメリカ英語風)

 Her family are all tall.(イギリス英語風)

.(彼女の家族はみんな背が高い)

*They insisted that he resign as Secretary General. (アメリカ英語風)

 They insisted that he should resign as Secretary General. (イギリス英語風)

(欧州の多くの市民がNATO事務総長を辞めるように彼に求めた)

 

畢竟、しかし、所謂「イギリス英語」の紹介ショーケス書籍も悪くない。まして、定年目前で溜まりにたまった有給休暇消化中とか「昨日は地元の県庁に職が決まっている末娘の慶應大学の卒業式」と子育て卒業とか人生の閑雲野鶴の時なれば上に例示したような語彙・文法・発声における所謂「アメリカ英語」との違いに焦点を当てたイギリス英語の参考書もーーほとんど「英語」といえば「アメリカ英語」にしか触れてこなかったであろう日本人と在日韓国人、在日華僑やロシア人を包摂する日本語母語話者にとって、ーー悪くはない。

 

間違いなくそれらも、イギリス英語でするコミュニケーションスキル開発という最大公約数的の目的に背馳することなく役に立つこともないわけではないでしょう。ただ、イギリス英語もアメリカ英語も実に多様なそして重層的な「地域方言」と「階層・階級方言」の束(🌺Two Bunches of Flowers🌺)であることは拳々服膺しておくべきでしょうけれども。

 

🍎関西弁はなぜ強靭なのか? 

世界の共通語としての英語の現状を理解する補助線として+改訂あり

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/b6b246bc05470fe6bdf3a504544172aa

 

🍎ネットで見かける「食パンは英語でなんと言う?」類いの記事

↖️面白いけどちょびっと迷惑かも

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/5fc098f9884e1ac07f0c697584644f81

 

 

 

而して、本書、マリ・マクラーレン「ネイティブが教える イギリス英語フレーズ」(コスモピア・2024年1月)は希少な「多様な能力開発のレベルとスペックのニーズを抱えた実に多様な読者にとって、その大方の読者にとって効果が期待できる作品」だと思いました。なぜか? その根拠は?

 

その根拠・理由はただ一つ。そして、🍎神は細部に宿る:God is in the details.≒Devil is in the details.🍎 たった一点のこの明らかな強み(one definite advantage over its competitors)を具現する、①記憶の定着/知識の血肉化ための工夫と、②学習を継続させる/モティベーションを下支えする工夫が秀逸なのです。

 

🍎英単語を覚えるには諦観と気迫ですーー「短期記憶・長期記憶」談義のその先へ

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/71dfff5f7a1c019a7ab58ced83266b3b

 

🍎進路指導ー余滴:文系と理系? あのー、ご両親、わたし「占い」は専門じゃないんですよ❗️

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/a32c70ace1aa198c573e4d56603a9263

 

本書の優れたところは、それが、

 

>イギリス英語の紹介ではなくてイギリス英語の母語話者のする

>普段着の普通の発話を通して日本語母語話者がイギリス英語を

>習得・修得するためのテキストに特化しているところでしょう

 

 

換言すれば、イギリス英語母語話者の普段着の目線から普通のイギリス英語を使うーー日本語母語話者にとってはーー素敵な擬似体験が、たのしくたんたんとたくさん、効率的に享受できること。これが本書の秀逸なところでしょう。

 

そして、ひょっとしたら本書のこの優れた特質と効用の一部は著者マクラーレンさんの出自とか経歴によるものなの、鴨。そう、大学卒業後、イングランド中北部の街と言っても不思議ではない、可愛いお城のある京都府福知山市で二年間の(おらくALT)体験の中で日本人のイギリス英語ニーズを把握された、この著者はイギリスの茨城県は結城市とか下館市ともいうべきベッドフォードシャーのご出身(ちなみに、かのマーガレット・サッチャー男爵の出身地はイギリスの栃木県は佐野市とか栃木市に喩えべきリンカンシャーのグランサム市)、そして、イギリスの東北大学とか福島大学に比すべきヨーク大学の卒業生。

 

この背景が、例えば、ロンドンやバーミンガム出身でオックスフォードやケンブリッジ卒業の competitors (↖️アメリカの応用言語学、就中、TESOLの分野でいえば、コロンビアとかハーバードにミシガン大学卒業とかのお利口さんたち)と違って、

 

厳選された1000個の単文・短文のみ使用

記憶の定着のために復習を繰り返す構成

記憶の血肉化のために「物語性」を貫く

普段着の「イギリス社会」の素敵な紹介

 

を可能にしたの、鴨ということです。

(*^o^)/\(^-^*)

 

 

繰り返しになりますが、要は、「ネイティブが教える イギリス英語フレーズ1000」の素晴らしさをサポートしているのは、学習者が(読者とは最早いいません!)①記憶を定着する上での工夫と②学習を継続していく心の体勢(マインドセット)を維持する工夫にある。と、そうわたしは考えます。具体的に言えば、

 

【壱】重層的な復習の仕組みの採用。所謂「スパイラルメソッド」の採用がその工夫の一つなのですけれども、「重層的な復習の契機」が織り込まれた、1個1個は簡単な単文・短文による、

<Unit:Routine→Tweet→Chat→Dialogue→Self-check>の有機的な編成。そして、全10Unit 全体もこのスパイラルメソッドが貫かれていること。

 

しかも、それは②の工夫の例でもあるのですが、ーー日本でもよく取り上げられるロンドンやオックスフォード、バーミンガムやマンチェスターやケンブリッジとかの知名度のある街ではない「普通の田舎のパブ」、加之、「Cornish pasty ≒イギリス風肉じゃがと玉ねぎ饅頭」「Ploughman's lunch≒チーズとピクルスの厚手サンド」とともにKABUも大好きな「Shepherd's pie ≒イギリスの肉じゃが」「a pint of beer ≒日本のロング缶くらいの容量のジョッキビール」「duvet≒欧州大陸風の羽毛掛け布団≒comforter」。あるいは、地名として取り上げられる「オックスフォード」「ケンブリッジ」「バース」「ブライトン」「ストーンヘンジ」そして「ウェールズ」「スコットランド」就中「アイルランド」おまけに「パリ」は幾度も登場して、ーーこの繰り返しの工夫によって現在のイギリス国民、なにより、イングランドの人々が抱いている最も身近な世間と世界のイメージが実感・体感できるようになっています。例えば、

 

Have you got a duvet cover I could use?

(わたしが使ってもいい羽毛掛け布団ありますか?)

(Unit1,Routine 10)

I'm having a duvet day today.

(今日は1日お布団から出ませんから❗️)

(Unit1,Tweet 13)

 

さらに、本書の優れた特徴は、厳選された簡単な単文・短文の多くが必ずしもお子さま向けの平易かつ平凡なものではないということです。そこには「適度なセンテンスの難度」がある。なにを言いたいのか? 

 

The first day was so much fun❗️

(最初の日はめちゃくちゃ楽しかった)

↗️「このfunは名詞です。したがって日本人がよく使う very fun は正しい英語ではありません」p.68

(Unit3,Tweet 8)

I bought some souvenirs of London for my family back in Japan.

(日本にいる【残してきてわたしはこっちのロンドンに来ている】家族のためにロンドンのお土産を買った)

↗️この副詞の「back」の意味と用法に関してKABUなら1コマ90分講義で半ダースは話すことあります❗️

(Unit7,Tweet 19)

 

はい、下記拙稿でも述べているように、大人が興味を持つような内容と適度な難易度の単語や文法のルールが盛り込まれ織り込まれたものでなければ、ーー読者の現在の英語力的にはそれが適切だとしても、正直、「つまらない」と受け取られかねないだろう。逆に言えば、ホッブス「リバイアサン」、アダム・スミス「国富論」、バジョット「イギリス憲政論」等々、読者や研修生の現在の英語力からみて高難度のテキストでも提示の仕方や導き方によっては適切な教材に化けさせることは幾らでもできる。けれども、一度でも「つまらない」と思われたテキストに前向きに取り組んでもらうのは至難。ほぼ不可能。よって、学習を継続するモティベーションを下支えできないがゆえにーーそのテキストは大人が学ぶ教材としては不良品。使ってもらえないのだからそれらは粗大ごみ予備軍になりかねない、ということです。

 

わたしが弟子の皆によく言う喩えで換言すれば「大人用の英語教材は「赤ずきんちゃん」では駄目で、アガサ・クリスティー先生の「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」「アークロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」とまではいわないけれどジーン・ウエブスター先生の「あしながおじさん(Daddy-Long-Legs)」くらいの英語の難易度と内容は欲しいものです」ということ。

 

【再掲】アーカイブ☆英語教材としての<カーペンターズ>

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/6394ffb89d93ecbf00ad095b61649812

 

 

 

 

【弐】本書では物語性とイギリス英語の母語話者の目線から見える/感じられるイギリス社会の現在の普段着の風景がイギリスへの興味を維持させている。もって、「継続は力なり」「努力することこそ人生の真善美である」「常に精力善用」「日々これ決戦」「やって良かった公文式とZ会」的のマインドセットをサポートしてくれる。これが本書のもう一つの工夫でしょう。どういうことか?

 

簡単な話です。本書の全10 Unit はすべてロンドンに語学留学してきた、おそらく20代後半から30才前後の日本人女性Akiさんのイギリスでの体験を描いたもの。これがわたしの言う「物語性」。加之、しかも、「病院・薬局」ネタはないものの、それら10 Unit が取り上げている場面は普通のほとんどの「英会話入門書」と全く同じ。つまり、おおよそ英語でするコミュニケーションの場面がすべてカバーされている。際物はなく安心安心。つまり効率的。

 

 

けれども、本書を構成する単文・短文は他の多くの「イギリス英語入門書」とは明確に違う。それが何度も述べた「イギリス英語の母語話者からの今のイギリス社会を背景にした普段着の発話」ということ。それが、日本語母語話者には地味だけれど鮮烈。興味津々。よって、この作品を何度でも読みたくなるし、この作品をご縁にイギリス英語をさらに学びたい、イギリスについてもっと知りたいと読者に思わせる。例えば、

 

I tried a traditional English fry-up for the first time.

(イギリスの伝統的なフルブレークファストを初めていただいてみた)

(Unit1,Tweet 7)

↖️そりゃー、イギリスの人が家庭で「English Breakfast」とは

言わないでしょう❗️

Why are kitchen sinks in the UK so small?❗️

(イギリスの台所の流しはなんでこんなに小さいの?❗️)

↖️本当に吃驚です👀‼️

(Unit1,Tweet 21)

 

It's time to make lunch. What shall I have?

(昼食の時間だ。何作ろうかな/いただこうかな?)

「lunchは日本語の「ランチ」と同じ意味になりますが、イギリスの地方【階級】によって昼食を dinner と呼ぶところがあります。その場合は夕食は dinner ではなく、tea 【supper】という言い方になります」

(Unit1,Tweet 33)

Are we allowed to eat on the train?

(電車の中でものを食べてもいいの?)

「イギリスの電車は飲食自由です」

(Unit2, Routine 17)

 

Does this pub serve food?

(このパブは料理を出していますか?)

「料理を出さないパブもありますので、この表現で確認することができます」

(Unit6,Routine 5)

This pub has a beautiful garden.

(このパブには美しい庭がついている)

「田舎のパブにはほとんどの場合 pub garden があります」

(Unit6,Tweet 7)

 

Shops in the UK close really early.

(イギリスのお店は早く閉まる)↖️その通り😢

(Unit7,Tweet 5)

Having pre-drinks at home before going out.

(出かける前に家でお酒を少し飲んでいます)

「イギリス人は「お酒」をたくさん飲みます。そして、パブやバーのお酒は少し高いので、遊びにいく前に家で飲む人が多いです。その際のお酒をpre-drinks と言います」↖️KABUもこの単語知りませんでした👀

(Unit9,Tweet 3)

 

 

 

 

今日も朝ごはん食べて英語頑張りましょう❗️