前著『憲法で読むアメリカ史』(PHP新書・2004年10-11月)は文字どおり、アメリカ憲法を巡る動向ーー制定・改正・連邦政府と州政府(就中、連邦最高裁)による解釈の変遷ーーを縦糸にして編み上げられた〈アメリカ史〉の書籍であるのに対して、本書『憲法改正とは何かーアメリカ改憲史から考える』(新潮選書・2016年5月)は、「憲法の改正」ということに照準をあてた上で、アメリカ憲法の変遷過程を眺める中で思念された〈憲法基礎論ー法哲学〉的の著作である。それは、「憲法の概念」つまり〈憲法〉という事柄のイメージについて「歴史的と具体的の事実をして語らしめた作品」である。と、私はそう思います。


而して、本書で阿川さんはーー大方の偉い(就中、「立憲主義」なるお題目を連呼しているだけの、リベラル派のダウンダウンダウン)学者先生のような上から目線のご託とは違いーー、アメリカ憲法の変遷過程を辿る散策に読者を誘うというあんばいで、読者と同じ目線の高さを貫徹されています。

尚、阿川尚之さんは「憲法の変遷過程」に関して、「新憲法の制定」「憲法典の改正・修正」、そして、所謂「解釈改憲」の三者に本質的な差違を認めない立場なのだと思います。けだし、著者は、おそらく、ブルース・ウィリスじゃなかった、イエール大学のブルース・アッカーマンの「二重の民主制論」を基盤にして本書を編み上げたと思うから。

ちなみに、「二重の民主制論」とは、(1)政治過程を、憲法の変更に関わる「憲法政治」と、憲法の枠内で私的・公的な利害の調整が行われる「通常政治」に二分し、(2)前者に関しては、改正条項に則ったフォーマルな改憲手続きと、司法や行政府と立法府か解釈の変更によって行うインホーマルな改憲手続きも憲法基礎論の観点において差はないーーすなわち、フォーマルとインホーマルなプロセスによって「変更後の憲法が帯びる正統性と正当性」に差はないーーとするアイディアのことです(ちなみに、アメリカでは大統領ひきいるアメリカ政府が持つのは「執行権」であり、「行政権」は連邦政府と連邦議会、さらには、各州政府が分有しているのですけれどもヒヨコ)。同論に関してご興味がおありのようなら、坂口正二郎『立憲主義と民主主義』(日本評論社・2001年2月)のご一読をお薦めします。

 



本書は、我が国の占領憲法の改正や、例えば、集団的自衛権を巡る政府解釈の変更の是非について直接触れたら書籍ではない。しかし、占領憲法の破棄または改正を期す、われわれ保守派にとっても、実に、参考になる一書だと思います。少なくとも、「立憲主義を守る」ことを要求しながら、実は、世界の憲法論と法哲学の水準と地平からみてもかなり特殊な、戦後民主主義流のリベラル派の占領憲法の解釈内容を政府は採用しろと言っているだけのーー「おたく何様」もんのーー朝日新聞やNHKの社説・論説のいかがわしさを理解できる作品ではないか。そうわたしは思います。本書を憲法改正を目指すすべての保守派の皆様にお薦めいたします。


飛行機が落ちるかもしれないからショック!、本格的な書評記事の前に本稿をアップロードすることにしました。

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・<改訂版>自薦記事一覧:保守主義の憲法論と社会思想

 -憲法学の再構築と占領憲法の破棄・改正を求めて
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/5f7bef87927eae129943ca8b5bb16a26


於福岡空港
by KABU


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