何も考えなかった...。

気づいたら目標を達成していた...。

 

 

だんなくんの出張があって

またハワイに来れることになった。

 

「絶対にスノーケリングをして

そのあと自分の足で立つ!」

 

ハワイ行きチケットを買った時

そう心に決めた 。

 

 

1年半前、治療1ヶ月後にハワイに来て

大好きなスノーケリングをしたあとに

自分で立つ事ができなかった

 

何度も立とうとしたけれど

弱ったカラダが 重力に勝てなくて

その度に

ヘナヘナと砂に沈んでいった。

 

悲しかった...

 

情けなかった...

 

 

あの時に比べたら

体重もずいぶん増えた。

筋肉も 目に見えてしっかりとついている。

 

大丈夫。できる。

 

 

...スー.....ハー

.....スー.....ハー.....

 

海の中の 

静かな、しずかな世界。

 

聞こえてくるのは 自分の呼吸だけ。

 

周りにいるのは 魚たちだけ。

 

生きるために

 食べ、

 泳ぎ、

 逃げる。

 

そんな海の生物だけ。

 

 

体温と同じぐらい 暖かな海の水の中で

スーハー、スーハーという

呼吸音だけを聞きながら

 

母親の胎内って こんなのかな、と思った。

 

海から生まれた 生命体のひとつとして

自分がそこにいるのが

なんだか とても自然な気がした。

 

 

死んだら、海に帰ろうか...

 

役目を終えた 自分のカラダが 

魚たちの栄養になるっていうのも

悪くないんじゃない?

 

...ふと、そんな風に思った。

 

灰を 海に撒いてくれ、

と 遺言を残した

父の気持ちが わかる気がした。

 

 

たっぷり海の中の世界を堪能して

岸に上がった。

 

気づいたら 立っていた。

 

目標を達成していた。

 

当たり前のことが 当たり前にできた。

 

 

がんはまだ 

カラダのどこかに潜んでいるかもしれない。

 

そいつが 元気にならないように、

「当たり前のこと」が いつも「当たり前のこと」であるように

免疫機能を 強く保っておかなきゃ。

 

年をとっていくにつれて

「当たり前のこと」は 

少しずつ無くなっていくんだろうけれど

 

できるだけ多く 最後まで保っておきたい

「当たり前のこと」。

 

 

ちょっと 気恥ずかしい思いを抑えながら

久しぶりに

前にハワイに来た時のブログ

読んでみた。

 

I Lava You について読んでいて

ハッとした。

 

 

Lavaくんが、一度海に沈んでしまって

再び 海面に顔を出したように

 

前は一人で立てなかった自分も

いま、重力に負けずに 

しっかりと 砂を踏みしめて 

立っている。

 

歌と同じような

ハッピーエンディングの

この瞬間。

 

大事にしよう。

 

 

うちに帰ったら

ウクレレを弾きながら

だんなくんと二人で

あの歌を歌おうかな。

 

「当たり前」に感謝しつつ…。