湊かなえ先生「人間標本」の読後感の続きです。

「人間標本」は中盤で一回どんでん返しがあるのですが、巧妙なのは読んでいる途中で「あれ?これってもしかして・・・」と読者にうっすら気付かせるように仕掛ける書き方です。これがまず素晴らしい私も昔趣味で短編小説を書いていたことがあるので、この読者を誘導する書き方の難しさ、組み立て方はひたすら感心します

そのトラップに心地よく引っかかりながら、読むスピードが徐々に加速していきます早く読みたいので、娘の習い事のある日が早く来ないかなと思うようになり、ついにはそれを待っていられなくなります

そして話も後半部分が進み「はぁー、そういうことか。さすが湊かなえだ」とその段階で既に十分感嘆しているのですが、最終章のラスト30ページで4回ほどどんでん返しのラッシュが続き、とにかく凄まじい壮絶な伏線回収で読者を翻弄していきます。オセロでギリギリ負けか・・・と思っていたら、最後の4手で全部黒にひっくり返されたくらいの激しいショックを受けました

またテーマ的に色々と蝶を絡めてくるのですが、この絡め方も絶妙。全体の3/4は2ヶ月で書き上げたというインタビュー記事を見て、一体先生の頭の中は本当にどうなっているのか、覗いてみたいです

動画で見る湊先生は本当におっとりしていて、町中で出会ったら、こんな人がこんなことを考えるなんて想像も付きません。生成AIの開発が凄まじいですが、いつ先生の脳に追いつくのか、そして彼女を超える作品ができる日が来るのかどうか・・・。AIが人間の心を理解しないと難しいようにも思います。(つづく)