■まずは、彼が生きた時代について■

《「ウィッシュ」は13世紀―古代欧州(ロマネスク)とシルクロード文化を意識している》と、パンプレットの製作ノートで説明されていますーこれは作品の世界観を述べているようですが、どうも時代背景にもなっているのではないかと感じましたー製作ノートでは《シルクロード文化/東洋風建造》を強調し、13世紀では前世紀でのモンゴル帝国(元朝)によって、ユーラシア大陸は《欧州とアジア圏の往来》という革命的な変化と共に、《異民族の襲来》に脅かされていました。

そうした時代背景ならば、マグニフィコ王の思いとロサス王国設立に一致しますー

 

■マグニフィコ王の軌跡と、ロサス建国■

プロローグと、作中でのマグニフィコの話で、

【青年時に賊に国と家族を奪われ、放浪の中で人々が叶わない願いで悲しむのを見て、人々の願いを叶うために魔術修業し、偉大な魔法使いとなると、人々の願いを《善良な物》は叶え《悪から傷つかないよう》守るようになり、妻と地中海にある島でロサス王国を建国すると誰でも歓迎するようになった】

と、《人を動かし作り上げる》願いの力を信じながらも、おぞましい《人の欲》にも苦しんできたのは、言わずかなでしょう・・・彼に従う妻である王妃様も、ロサス王国建国後も崩れそうになる彼を支えてきたのは、彼の苦労を知っての事でしょう。

  

■マグニフィコ王の苦悩■

 それだからこそ、理想郷ともいえるロサス王国運営には相当心を砕いたのは、想像に難くないでしょうーロサスはマグニフィコの理想を形にした物で、福祉国家として行き届いたロサスに着いた時点で、ほぼ《夢》は叶えられているのにも拘わらず、人々はマグニフィコ王におねだりしていく―

作中、アーシャがマグニフィコ王の弟子面接時に、アーシャに語った

「頼み事は数か月か1年してからにする物だ」

「みな、困難や不公平によって《願い》が叶えずここに来たのだー叶わない《願い》に煩わないよう、私が忘れさせている」

の二つが、彼の本音で優しさであると思います。

 それに、アーシャの父に対しても

「夢見る哲学者でよく星の話をしていた」

といとおしそうに話している様子は、きっとアーシャの父とは気が置けない関係で、その娘にも一入な思いがあったからこそ、人に見せない物と秘め事を全て出してしまったのでしょうかーそこを組み切れなかったアーシャに反抗されて、《可愛さ余って憎さ百倍》となって長年ため込んだ怒りが爆発させてしまったとしかありませんね・・・

 

 この作品って、結構《逆バンジー(役割が逆転した見る手に思考させる)物》?

 

■ディズニー史上初の同情され系悪役マグニフィコ王■

 明らかに、この「ウィッシュ」は《逆バンジー》以外の何物でもありませんーアーシャ、《フェアリーゴッドマザー》って何?←ゴッド姉ちゃん張りにやっちゃった人w

 

 冗談抜きで今回の作品は極めて大人の作品で、私の中では

【アーシャ側の市民たちにもマグニフィコ王を追い込んだ責があるー自分たちで《夢》を目指して努力する、マグニフィコ王はそれを支援してくれる、ちょっと過保護なお母さんみたいな王様】

と認識しています。

 マグニフィコ王は、悲しい過去を持った人だけに、つらい人を見ると手を差し伸べたくなる性分だったからこそー度が過ぎた行動になってしまいましたが、彼ももう一人のアーシャといえます。