ヒーローになりたい。
男なら誰でも一度はそう思った事があるはずだ。
仮面ライダー、ウルトラマン、ゴレンジャー、とにかく悪いやつから人々を守るヒーローが僕は昔から大好きだった。
でもそんな子供の夢は物心がついたらみんな次第にあきらめていく。
僕もそんな中の一人でヒーローになんかなれない、そう思っていた。
「ただいまー。おーい。じいちゃんー?いないのー?おーい。…ちぇっ。いないのか。」
僕はじいちゃんの研究室の椅子に座り器具を見つめていた。
暇だったのでじいちゃんが帰ってくるまで研究室にあるものを色々物色していた。じいちゃんの研究室はわけのわかんないもんがいっぱいあっておもしろい。海に眠る宝を探すような感覚になる。
「なんだこれ。」
傘の形をした機械に何かタコのような絵が書いてあるようなやつとか墓石のようなカバンとかとにかくガラクタがいっぱいあった。
「またこんなもんばっかり作ってんのか。まったく、じぃちゃんは。は、は、はっくしょん!!はーてかここ寒いな。風邪引いてるのかもなー。」
そう思っているとその時、ちょうど僕は机の上に薬のビンを見つけた。
「おっ!ちょうどいいや。飲んどこ。」
僕は近くにあったビーカーに水を入れ薬を飲んだ。
その時、
「はー大変じゃったー。」
小走りでじいちゃんが帰ってきた。
「じいちゃん!」
「おー!タケシ!きとったんか!すまんすまんちょっと近くの公園で実験しとったもんじゃから!」
「へー!今日はどんな実験してたの!?」
「うむ、よくぞ聞いてくれたな!ご、ごほん!聞いて驚くなよタケシ!今回の実験はな人類の、いや世の男達の夢である透明人間になる実験じゃ!」
「透明人間?」
「そうじゃ!!これが実現すればワシはノーベル賞なんか目じゃないぞ!で、今もマウスで実験しておったんだが…今回も…失敗じゃ。」
「まーまたやり直せばいいじゃん!いつか完成したらすごい事だよ!!」
「そうじゃろ!やっぱ男はロマンじゃろ!!」
そういうとじいちゃんは辺りをなにやら探し始めた。
「あれ?…おかしいな。」
「どうしたのじいちゃん?」
「いやな、ここに置いてあった薬が一粒足らんのじゃ。あれ?どこに置いたかな。」
「あーそれなら俺飲んだよ。ちょっと風邪っぽかったから。」
「なんじゃ。お前が飲んでたのか…ってえー!!!!!!!お前!!え!?!?お前あの薬を飲んだのか!?!?」
「う、うん。ちょっと風邪っぽかったから。なんかいけなかった?」
「いけないも何も…。あーなんて事を…。そうだ!早く!今すぐ吐き出せ!!まだ間に合う!ほれ!吐け!」
「わっわっ。ちょっと!やめてよ!大丈夫だよ。何も変な事はないし。むしろ治ってきたかも!ってかあれ風邪薬じゃなかったの?」
「風邪薬なんて生易しいもんじゃない。あれは劇薬じゃ。マウスでの実験では96%が死んだ。あの薬に耐性がある遺伝子を持っている生物は地球上にわずか5%しかいない。しかも耐性があるかないかは薬を実際飲む事でしか判断できないんじゃ。だから人に試す事ができずにずっと置いてあったのに。」
「えーー!?そんな危ないやつだったんだ…。でも俺何ともないよ。」
「うむ。どうやら奇跡的に耐性を持った5%の人間だったようじゃな。まあ結果オーライ。よかったわい。」
「てかなんでそんな劇薬を捨てずに置いといたんだよ!」
「それはな、この薬が世紀の大発明だったからじゃ。」
「どこがだよ!!95%の人が死んじゃうんでしょ!?!?」
「そうなんじゃが、その副作用さえなければその薬はノーベル賞は確実じゃった。」
「へー。で、どんな効果があるの?」
「その薬にはな、脳のリミッターを強制解除する効果があるんじゃ。聞いたことはないか?人間の脳というのは普段、全体のわずか3%しか使っとらんということを。」
「あー聞いた事ある!」
「そう。それを限りなく100%使えるようにリミッターを解除する作用があるんじゃ。だからそんな世紀の発明を簡単に捨てることができんくてな。」
「なるほど。じゃあ俺今リミッター解除できんの!?」
「まぁ一粒飲んだ程度じゃ大した事はできんがな。」
「でもすごいじゃんそれ!リミットが外せるって。だからちょっと体調もよくなったのかな!で、リミッターを外すとどんな事ができるんだよ!」
「瞬間移動、空中浮遊、透明人間、時間停止等、科学の法則を無視した力は使えんはずじゃ。ただ、例えば事故にあったらよく周りがスローモーションに見えたりするというじゃろ?あとスポーツ選手が集中の限界を超えるとゾーンという神憑り的な状態に入るとか。あれくらいなら自ら引き起こせるはずじゃ!」
「す、すげー。すげーじゃんそれ!!!じゃあ俺今集中すれば神憑り的な能力発動するの!?すげー!」
「まぁそうじゃな。試しにそこに飛んでるハエを目を凝らしてよく見てみ!」
「ハエ?」
僕は目をじっと凝らして見た。すると急に視界が狭くなり、ハエしか見えなくなった。するとどうだろう。ハエの動きがゆっくりになり羽の一枚一枚、顔から口まではっきり見える。そして僕が目を凝らすのを止めるとハエはまた普通に動いた。
「す、すげー…すげーすげー!!!!なんだこれ!!羽の一枚一枚まではっきり見えた!すげー!」
「まぁそれぐらいはたやすくできる。ただその作用は一時間くらいで切れてしまうがな。たくさん飲めばそれだけ強い力が出せると思うがまだ実験してないからわしもなんとも言えん。」
「すげー!じいちゃんすげーよ!この薬もらっていい?」
「んーまぁちょっとなら分けてもいいが正直ワシもまだわからん事だらけじゃから無理はするなよ。」
「わかった!ありがとう!」
「ちょっ!ちょっと待てそんな持ってくな!おい!」
僕は薬の瓶を持って家に帰った。
「ただいまー。」
「あっタケシー、またおじいちゃんとこ行ってたの?だめよーちゃんと勉強しなきゃ。」
「はーい、わかってるわかってる。」
僕は階段をかけあがり自分の部屋に入った。
薬の入った瓶を眺めながら僕は1人でニヤニヤしていた。明日からこれでどんな事をしようとか考えているうちに僕は眠ってしまっていた。
「タケシー!起きなさいー!学校に遅れるわよー!!タケシ!」
僕は母の声に起こされた。
「あれ?」
どうやら僕は疲れてたのかあのまま色々考えている内に机で寝てしまってたらしい。
「やばい!遅れる!」
僕は急いで制服に着替え、カバンを持って部屋を出た。
「おっと!忘れてた!」
階段を引き返し、机の上の瓶を持つと僕は急いで学校に向かった。
「おはよー!!」
「おータケシ!おはよ!」
学校に着くといつものように昨日のテレビの話とか誰と誰が付き合ってるとかそんな話をしていた。
そんなことをしているうちにチャイムが鳴って先生が入ってきた。
「おーい!もう授業が始まるぞー!自分の席に着けよー!」
先生は教卓で出席をとると紙の束を取り出し、
「朝からいきなりだが抜き打ちテストをやるぞ!はいはいうるさい!しかも点数が悪かった者は後日補習があるから心しておくように!」
そういうと先生はテストを配り始めた。
「げっ!まじかよ!」
「やばいよ。俺全然やってねえよ!タケシやった?」
「俺がやってるわけねえだろ!やばい。どうしよう。」
その時、僕は閃いた。
そうだ。僕にはあの薬があるじゃないか。脳の力が100%引き出せるならこれくらいの問題は解けるはず。僕は急いでカバンから薬を取り出しそれを一粒飲んだ。
これでなんとかなるはず。
そしてテストが始まった。僕はゆっくり目を閉じ、神経を集中して紙を裏返した。
するとどうだろう。
問題がスラスラ解ける!
一度見た事がある問題は確実に完璧にそれを思い起こす事ができた。
自分が見た事のない問題に関しては全くわからなかったが自分が見た事のある問題はスラスラ解けた。
すごい。一度見たものは無意識に脳に記録されているんだ。
おかげで8割くらいは完璧に解けた。
「はい!テストやめ!」
「うわーやべぇよー。全くわかんなかった。」
「俺も俺も。絶対補習だよー。タケシどうだった?」
「割とできたぜ!」
「えっ!?お前が!まじかよ!」
「意外と簡単だったじゃん!」
やっぱこの薬、使える。
僕は確信した。
今日の試練を乗りきり、緊張の糸が切れた僕はその後の授業でたっぷり寝て学校終わりでじいちゃんの所に行った。
「じいちゃーん!いるー?」
研究室のドアを開け僕がそう叫ぶと遠くからじいちゃんがひょっこり顔を出した。
「ん?おータケシか!どうした!?お前あの薬をむやみやたらに使っとらんだろうな!」
「あの薬すげーよ!今日、抜き打ちテストがあったんだけどあれ飲んだら問題がスラスラ解けた!いやーほんとじいちゃんすげー!」
「はーやっぱりそんな事に使いよって。お前は!タケシ!いいか!あれはもうあまり使うな!あれはな、脳を過剰に働かせる作用がある反面、その分使った後に使った分だけ副作用が出るんじゃ。脳が強制的に休息状態になるんじゃ。」
「あっ!それでか!!昨日は帰ったら知らない間に寝てしまってたし今日もテストの後、やけに眠くてずっと寝てたかも!」
「そうなんじゃ。それだけ脳に負担がかかっとるという事じゃ。だからもう余程の緊急時以外は使わんように!わかったか!」
「はーい。」
僕はじぃちゃんの言う通り、そのまま家に帰って瓶をタンスにしまった。
次の日、僕は家族みんなで川にキャンプに行く事になっていた。珍しくじいちゃんも一緒だ。みんなで車に乗り込み、目的地に向けて出発した。
「おい、タケシ。お前ちゃんと薬は置いてきたんじゃろうな。」
「あのねーじぃちゃん。心配しなくてもちゃんと置いてきたよ。まぁ非常時のために5粒くらい持ってきたけど。」
「全くお前というやつは!もう絶対飲むなよ!お前の寿命を縮める事にもなりかねんからな!」
「わかってるよ。うるさいなー。」
僕とじぃちゃんがコソコソ話していると、
「タケシ!おじいちゃんと何コソコソしゃべってるのー?ダメよーおじいちゃんに迷惑かけちゃ。」
「はいはいもー。みんなしてなんだよほんとに。」
そんな事を言ってる間に目的地に着いた。降りるとそこはきれいな清流と青々とした木が生い茂る素敵な所だった。
「わー!気持ちいい!」
僕は思い切り伸びをして靴を脱ぐとさっそく水に足を付けた。
「冷たー!最高!」
僕達はそこにテントを張りバーベキューを楽しんだ。夕方くらいになり、川にも飽きてきた僕は辺りを散策する事にした。山の中をしばらく歩き回っていると遠くで何やら物音がしたので行ってみるとそこには小学生くらいの少年が二人、溺れていた。
最初は二人で遊んでいるようにも見えたが様子をみているとそれはないとすぐに判断できた。
僕もすぐに飛び込んで助けようとしたが、僕は泳ぐのが苦手だ。
このまま泳いで助けに行った所で共倒れになる事は目に見えている。
僕はとにかく大きな声で助けを呼んだ。
しかし、返答はないしその間にも状況は悪くなっていく一方だ。
二人の少年はもう水に沈みはじめている。
なんとかするしかない。
辺りを見回したが手頃な棒やロープもない。
くそ。
どうすれば…。
そうだ!
僕はポケットを探った。あった。この薬があればなんとかなるかもしれない。僕は後先は考えずに薬を飲んだ。
何か解決策を。なにかあるはずだ。僕は意識を集中して辺りを見回した。
しかし何も思い付かない。
「くそ!こんな時に限って!」
僕は近くにあった木を思いっきり殴った。
待てよ…そういえばじぃちゃんがたくさん飲めばそれだけ強い力が出せるって言ってたな…もうやるしかない。
少年達に限界が近づいているのは明らかだった。
僕は残りの薬をすべて飲んだ。
激しい頭痛が襲う。
「う…っ痛。あー…い、痛。」
しばらく頭痛が襲ったがそれがおさまると僕は少年達に意識を集中した。
頑張れ。助かれ。頑張れ。
するとどうだろう。少しずつ少年達が岸の方に近づいている。
よし。もうちょっとだ。いけ。
僕が念を込めると少年達は少しずつ向こう岸動いていき、しばらくして岸にたどり着いた。
よし。これで大丈夫…だ…。
少年達が岸にたどり着いたのを確認すると僕はそのまま意識を失った。
「ここは…?」
「おー!目を覚ましよった!タケシ!わかるか!わしじゃ!」
「じぃちゃん…?」
「おーそうじゃ!よかったわい。ここはわしの家じゃ。お前はこの1週間ずっと眠ったままやったんじゃよ。」
「そうか。じぃちゃんちか。へー、一週間。って一週間!?」
「そうじゃ!お前相当無理したんだろう。あんなけやめとけというたのに。」
「だって川で子供が溺れてたんだ。助けるためには仕方なかった。」
「そうか。そういう事じゃったか。」
「で、あの子達は無事だったの?」
「あー、もう少し見つけるのが遅かったら危なかったらしいがもう元気みたいじゃ。」
「そうか。よかった。」
「お前はもうちょっと自分の事を考えんか!あれは劇薬なんじゃぞ!」
「ごめんよじぃちゃん。」
「ま、まぁ無事ならええんじゃが。」
「でもあの時、すごい不思議な体験をしたんだ。」
「なんじゃ?」
「あの時、最初一粒飲んで解決策を探そうと思ったんだけど全くどうにもならなかったんだ。だからもう持ってきてた薬を全部飲んだ。」
「おまえ…そんな無茶を…。」
「すると最初はすごい頭痛に襲われたんだけどしばらくするとさっきまでが嘘のようにすっきりして何でもできる気がした。だから俺は意識を集中して少年たちに動けって念じてみたんだ。そしたら少しずつ彼らが岸に動いていった。そして岸に着いたのを確認したら一気に緊張が解けて…そこから記憶はないんだ。」
「なに!?念じたら動いた!?…それは…まさか…テレキネシス。テレキネシスじゃないか!」
「テレキネシス?」
「そうじゃ!!念動力じゃよ!!念じるだけで対象物を動かすことができるという超能力じゃ!!」
「ふーん。そうか。」
「なんじゃ!もっと驚かんのか!!お前はテレキネシスをやったんじゃぞ!」
「うーん。確かに不思議な感じはしたんだ。でもそんな特別な感じじゃなく動いて当然みたいな感覚だった。だからそんなびっくりするって感じじゃないんだよなー。」
「人間の能力はまだまだ計りしれん。しかしテレキネシスを使う負担は考えただけでも相当恐ろしい。もう絶対あの薬は使うなよ!!」
「もう薬の怖さは俺が一番わかってるよ。もう使わないよじぃちゃん。」
僕はそれから1年程、僕はあの事がウソだったように普通の毎日を暮らしていた。そんな時、朝テレビを見ているとこんなニュースが流れた。
「次のニュースです。昨夜NASAが会見を開き、地球から約50万キロメートルの所に直径約2200キロメートルの巨大彗星を確認したとのことです。」
「なんだこれ?彗星??」
そこに写し出されていたのは青白い巨大な火の玉のような物体が不気味に輝く様子だった。
男なら誰でも一度はそう思った事があるはずだ。
仮面ライダー、ウルトラマン、ゴレンジャー、とにかく悪いやつから人々を守るヒーローが僕は昔から大好きだった。
でもそんな子供の夢は物心がついたらみんな次第にあきらめていく。
僕もそんな中の一人でヒーローになんかなれない、そう思っていた。
「ただいまー。おーい。じいちゃんー?いないのー?おーい。…ちぇっ。いないのか。」
僕はじいちゃんの研究室の椅子に座り器具を見つめていた。
暇だったのでじいちゃんが帰ってくるまで研究室にあるものを色々物色していた。じいちゃんの研究室はわけのわかんないもんがいっぱいあっておもしろい。海に眠る宝を探すような感覚になる。
「なんだこれ。」
傘の形をした機械に何かタコのような絵が書いてあるようなやつとか墓石のようなカバンとかとにかくガラクタがいっぱいあった。
「またこんなもんばっかり作ってんのか。まったく、じぃちゃんは。は、は、はっくしょん!!はーてかここ寒いな。風邪引いてるのかもなー。」
そう思っているとその時、ちょうど僕は机の上に薬のビンを見つけた。
「おっ!ちょうどいいや。飲んどこ。」
僕は近くにあったビーカーに水を入れ薬を飲んだ。
その時、
「はー大変じゃったー。」
小走りでじいちゃんが帰ってきた。
「じいちゃん!」
「おー!タケシ!きとったんか!すまんすまんちょっと近くの公園で実験しとったもんじゃから!」
「へー!今日はどんな実験してたの!?」
「うむ、よくぞ聞いてくれたな!ご、ごほん!聞いて驚くなよタケシ!今回の実験はな人類の、いや世の男達の夢である透明人間になる実験じゃ!」
「透明人間?」
「そうじゃ!!これが実現すればワシはノーベル賞なんか目じゃないぞ!で、今もマウスで実験しておったんだが…今回も…失敗じゃ。」
「まーまたやり直せばいいじゃん!いつか完成したらすごい事だよ!!」
「そうじゃろ!やっぱ男はロマンじゃろ!!」
そういうとじいちゃんは辺りをなにやら探し始めた。
「あれ?…おかしいな。」
「どうしたのじいちゃん?」
「いやな、ここに置いてあった薬が一粒足らんのじゃ。あれ?どこに置いたかな。」
「あーそれなら俺飲んだよ。ちょっと風邪っぽかったから。」
「なんじゃ。お前が飲んでたのか…ってえー!!!!!!!お前!!え!?!?お前あの薬を飲んだのか!?!?」
「う、うん。ちょっと風邪っぽかったから。なんかいけなかった?」
「いけないも何も…。あーなんて事を…。そうだ!早く!今すぐ吐き出せ!!まだ間に合う!ほれ!吐け!」
「わっわっ。ちょっと!やめてよ!大丈夫だよ。何も変な事はないし。むしろ治ってきたかも!ってかあれ風邪薬じゃなかったの?」
「風邪薬なんて生易しいもんじゃない。あれは劇薬じゃ。マウスでの実験では96%が死んだ。あの薬に耐性がある遺伝子を持っている生物は地球上にわずか5%しかいない。しかも耐性があるかないかは薬を実際飲む事でしか判断できないんじゃ。だから人に試す事ができずにずっと置いてあったのに。」
「えーー!?そんな危ないやつだったんだ…。でも俺何ともないよ。」
「うむ。どうやら奇跡的に耐性を持った5%の人間だったようじゃな。まあ結果オーライ。よかったわい。」
「てかなんでそんな劇薬を捨てずに置いといたんだよ!」
「それはな、この薬が世紀の大発明だったからじゃ。」
「どこがだよ!!95%の人が死んじゃうんでしょ!?!?」
「そうなんじゃが、その副作用さえなければその薬はノーベル賞は確実じゃった。」
「へー。で、どんな効果があるの?」
「その薬にはな、脳のリミッターを強制解除する効果があるんじゃ。聞いたことはないか?人間の脳というのは普段、全体のわずか3%しか使っとらんということを。」
「あー聞いた事ある!」
「そう。それを限りなく100%使えるようにリミッターを解除する作用があるんじゃ。だからそんな世紀の発明を簡単に捨てることができんくてな。」
「なるほど。じゃあ俺今リミッター解除できんの!?」
「まぁ一粒飲んだ程度じゃ大した事はできんがな。」
「でもすごいじゃんそれ!リミットが外せるって。だからちょっと体調もよくなったのかな!で、リミッターを外すとどんな事ができるんだよ!」
「瞬間移動、空中浮遊、透明人間、時間停止等、科学の法則を無視した力は使えんはずじゃ。ただ、例えば事故にあったらよく周りがスローモーションに見えたりするというじゃろ?あとスポーツ選手が集中の限界を超えるとゾーンという神憑り的な状態に入るとか。あれくらいなら自ら引き起こせるはずじゃ!」
「す、すげー。すげーじゃんそれ!!!じゃあ俺今集中すれば神憑り的な能力発動するの!?すげー!」
「まぁそうじゃな。試しにそこに飛んでるハエを目を凝らしてよく見てみ!」
「ハエ?」
僕は目をじっと凝らして見た。すると急に視界が狭くなり、ハエしか見えなくなった。するとどうだろう。ハエの動きがゆっくりになり羽の一枚一枚、顔から口まではっきり見える。そして僕が目を凝らすのを止めるとハエはまた普通に動いた。
「す、すげー…すげーすげー!!!!なんだこれ!!羽の一枚一枚まではっきり見えた!すげー!」
「まぁそれぐらいはたやすくできる。ただその作用は一時間くらいで切れてしまうがな。たくさん飲めばそれだけ強い力が出せると思うがまだ実験してないからわしもなんとも言えん。」
「すげー!じいちゃんすげーよ!この薬もらっていい?」
「んーまぁちょっとなら分けてもいいが正直ワシもまだわからん事だらけじゃから無理はするなよ。」
「わかった!ありがとう!」
「ちょっ!ちょっと待てそんな持ってくな!おい!」
僕は薬の瓶を持って家に帰った。
「ただいまー。」
「あっタケシー、またおじいちゃんとこ行ってたの?だめよーちゃんと勉強しなきゃ。」
「はーい、わかってるわかってる。」
僕は階段をかけあがり自分の部屋に入った。
薬の入った瓶を眺めながら僕は1人でニヤニヤしていた。明日からこれでどんな事をしようとか考えているうちに僕は眠ってしまっていた。
「タケシー!起きなさいー!学校に遅れるわよー!!タケシ!」
僕は母の声に起こされた。
「あれ?」
どうやら僕は疲れてたのかあのまま色々考えている内に机で寝てしまってたらしい。
「やばい!遅れる!」
僕は急いで制服に着替え、カバンを持って部屋を出た。
「おっと!忘れてた!」
階段を引き返し、机の上の瓶を持つと僕は急いで学校に向かった。
「おはよー!!」
「おータケシ!おはよ!」
学校に着くといつものように昨日のテレビの話とか誰と誰が付き合ってるとかそんな話をしていた。
そんなことをしているうちにチャイムが鳴って先生が入ってきた。
「おーい!もう授業が始まるぞー!自分の席に着けよー!」
先生は教卓で出席をとると紙の束を取り出し、
「朝からいきなりだが抜き打ちテストをやるぞ!はいはいうるさい!しかも点数が悪かった者は後日補習があるから心しておくように!」
そういうと先生はテストを配り始めた。
「げっ!まじかよ!」
「やばいよ。俺全然やってねえよ!タケシやった?」
「俺がやってるわけねえだろ!やばい。どうしよう。」
その時、僕は閃いた。
そうだ。僕にはあの薬があるじゃないか。脳の力が100%引き出せるならこれくらいの問題は解けるはず。僕は急いでカバンから薬を取り出しそれを一粒飲んだ。
これでなんとかなるはず。
そしてテストが始まった。僕はゆっくり目を閉じ、神経を集中して紙を裏返した。
するとどうだろう。
問題がスラスラ解ける!
一度見た事がある問題は確実に完璧にそれを思い起こす事ができた。
自分が見た事のない問題に関しては全くわからなかったが自分が見た事のある問題はスラスラ解けた。
すごい。一度見たものは無意識に脳に記録されているんだ。
おかげで8割くらいは完璧に解けた。
「はい!テストやめ!」
「うわーやべぇよー。全くわかんなかった。」
「俺も俺も。絶対補習だよー。タケシどうだった?」
「割とできたぜ!」
「えっ!?お前が!まじかよ!」
「意外と簡単だったじゃん!」
やっぱこの薬、使える。
僕は確信した。
今日の試練を乗りきり、緊張の糸が切れた僕はその後の授業でたっぷり寝て学校終わりでじいちゃんの所に行った。
「じいちゃーん!いるー?」
研究室のドアを開け僕がそう叫ぶと遠くからじいちゃんがひょっこり顔を出した。
「ん?おータケシか!どうした!?お前あの薬をむやみやたらに使っとらんだろうな!」
「あの薬すげーよ!今日、抜き打ちテストがあったんだけどあれ飲んだら問題がスラスラ解けた!いやーほんとじいちゃんすげー!」
「はーやっぱりそんな事に使いよって。お前は!タケシ!いいか!あれはもうあまり使うな!あれはな、脳を過剰に働かせる作用がある反面、その分使った後に使った分だけ副作用が出るんじゃ。脳が強制的に休息状態になるんじゃ。」
「あっ!それでか!!昨日は帰ったら知らない間に寝てしまってたし今日もテストの後、やけに眠くてずっと寝てたかも!」
「そうなんじゃ。それだけ脳に負担がかかっとるという事じゃ。だからもう余程の緊急時以外は使わんように!わかったか!」
「はーい。」
僕はじぃちゃんの言う通り、そのまま家に帰って瓶をタンスにしまった。
次の日、僕は家族みんなで川にキャンプに行く事になっていた。珍しくじいちゃんも一緒だ。みんなで車に乗り込み、目的地に向けて出発した。
「おい、タケシ。お前ちゃんと薬は置いてきたんじゃろうな。」
「あのねーじぃちゃん。心配しなくてもちゃんと置いてきたよ。まぁ非常時のために5粒くらい持ってきたけど。」
「全くお前というやつは!もう絶対飲むなよ!お前の寿命を縮める事にもなりかねんからな!」
「わかってるよ。うるさいなー。」
僕とじぃちゃんがコソコソ話していると、
「タケシ!おじいちゃんと何コソコソしゃべってるのー?ダメよーおじいちゃんに迷惑かけちゃ。」
「はいはいもー。みんなしてなんだよほんとに。」
そんな事を言ってる間に目的地に着いた。降りるとそこはきれいな清流と青々とした木が生い茂る素敵な所だった。
「わー!気持ちいい!」
僕は思い切り伸びをして靴を脱ぐとさっそく水に足を付けた。
「冷たー!最高!」
僕達はそこにテントを張りバーベキューを楽しんだ。夕方くらいになり、川にも飽きてきた僕は辺りを散策する事にした。山の中をしばらく歩き回っていると遠くで何やら物音がしたので行ってみるとそこには小学生くらいの少年が二人、溺れていた。
最初は二人で遊んでいるようにも見えたが様子をみているとそれはないとすぐに判断できた。
僕もすぐに飛び込んで助けようとしたが、僕は泳ぐのが苦手だ。
このまま泳いで助けに行った所で共倒れになる事は目に見えている。
僕はとにかく大きな声で助けを呼んだ。
しかし、返答はないしその間にも状況は悪くなっていく一方だ。
二人の少年はもう水に沈みはじめている。
なんとかするしかない。
辺りを見回したが手頃な棒やロープもない。
くそ。
どうすれば…。
そうだ!
僕はポケットを探った。あった。この薬があればなんとかなるかもしれない。僕は後先は考えずに薬を飲んだ。
何か解決策を。なにかあるはずだ。僕は意識を集中して辺りを見回した。
しかし何も思い付かない。
「くそ!こんな時に限って!」
僕は近くにあった木を思いっきり殴った。
待てよ…そういえばじぃちゃんがたくさん飲めばそれだけ強い力が出せるって言ってたな…もうやるしかない。
少年達に限界が近づいているのは明らかだった。
僕は残りの薬をすべて飲んだ。
激しい頭痛が襲う。
「う…っ痛。あー…い、痛。」
しばらく頭痛が襲ったがそれがおさまると僕は少年達に意識を集中した。
頑張れ。助かれ。頑張れ。
するとどうだろう。少しずつ少年達が岸の方に近づいている。
よし。もうちょっとだ。いけ。
僕が念を込めると少年達は少しずつ向こう岸動いていき、しばらくして岸にたどり着いた。
よし。これで大丈夫…だ…。
少年達が岸にたどり着いたのを確認すると僕はそのまま意識を失った。
「ここは…?」
「おー!目を覚ましよった!タケシ!わかるか!わしじゃ!」
「じぃちゃん…?」
「おーそうじゃ!よかったわい。ここはわしの家じゃ。お前はこの1週間ずっと眠ったままやったんじゃよ。」
「そうか。じぃちゃんちか。へー、一週間。って一週間!?」
「そうじゃ!お前相当無理したんだろう。あんなけやめとけというたのに。」
「だって川で子供が溺れてたんだ。助けるためには仕方なかった。」
「そうか。そういう事じゃったか。」
「で、あの子達は無事だったの?」
「あー、もう少し見つけるのが遅かったら危なかったらしいがもう元気みたいじゃ。」
「そうか。よかった。」
「お前はもうちょっと自分の事を考えんか!あれは劇薬なんじゃぞ!」
「ごめんよじぃちゃん。」
「ま、まぁ無事ならええんじゃが。」
「でもあの時、すごい不思議な体験をしたんだ。」
「なんじゃ?」
「あの時、最初一粒飲んで解決策を探そうと思ったんだけど全くどうにもならなかったんだ。だからもう持ってきてた薬を全部飲んだ。」
「おまえ…そんな無茶を…。」
「すると最初はすごい頭痛に襲われたんだけどしばらくするとさっきまでが嘘のようにすっきりして何でもできる気がした。だから俺は意識を集中して少年たちに動けって念じてみたんだ。そしたら少しずつ彼らが岸に動いていった。そして岸に着いたのを確認したら一気に緊張が解けて…そこから記憶はないんだ。」
「なに!?念じたら動いた!?…それは…まさか…テレキネシス。テレキネシスじゃないか!」
「テレキネシス?」
「そうじゃ!!念動力じゃよ!!念じるだけで対象物を動かすことができるという超能力じゃ!!」
「ふーん。そうか。」
「なんじゃ!もっと驚かんのか!!お前はテレキネシスをやったんじゃぞ!」
「うーん。確かに不思議な感じはしたんだ。でもそんな特別な感じじゃなく動いて当然みたいな感覚だった。だからそんなびっくりするって感じじゃないんだよなー。」
「人間の能力はまだまだ計りしれん。しかしテレキネシスを使う負担は考えただけでも相当恐ろしい。もう絶対あの薬は使うなよ!!」
「もう薬の怖さは俺が一番わかってるよ。もう使わないよじぃちゃん。」
僕はそれから1年程、僕はあの事がウソだったように普通の毎日を暮らしていた。そんな時、朝テレビを見ているとこんなニュースが流れた。
「次のニュースです。昨夜NASAが会見を開き、地球から約50万キロメートルの所に直径約2200キロメートルの巨大彗星を確認したとのことです。」
「なんだこれ?彗星??」
そこに写し出されていたのは青白い巨大な火の玉のような物体が不気味に輝く様子だった。