「まぁできない事はないですよ。ただし、戻るのは自分ではないですが」



「えっ?どういうことですか?」



私は天使の言っている事がわからなかったので聞き返した。



「つまりやり直せるというのは過去の自分に戻ってやり直せるというわけではありません。なにせあなたはあの世界ではすでに一度死んでいますからね」



「はぁ。では何をやり直せるんですか?」



「まず、最初に説明しておかなければならないのは天国に行くには生きている間に『天国ポイント』を取得していなければいけないんです」



「天国ポイント?」



「そうです。天国ポイント。まぁ人間はそれを『徳』等と呼ぶようですが。つまり良い行いですね。たくさん良い行いをしていれば天国に行けます。まぁ普通にしていれば自然に貯まるものなんですが。ただ、ここにいる人たちは何かしらの理由で天国に行けたものが行けなくなくなってしまったんですよ。だから泣きの一回という事で天国に行くために必要な天国ポイントをもう一度稼ぐチャンスを与えています」



「でも自分に戻ってやり直すわけではないんですよね?」



「ええ。戻ってもらうのはあなたのいた世界の並行世界の一つです」



「並行世界?」



僕はもう何が何やらわからなくなった。



「そうです。並行世界です。あなたがいた世界の他にも何千、何万の並行して存在する世界があるんですよ。だからその中の一つにいってもらってやり直してもらいます。」



「はぁ。で、自分ではないとなると一体誰になってやり直すんですか?」



「それは今から決めるんです。そこの横にあるボタンを押してもらっていいですか?」



自分の座っている横を見ると赤いボタンが付いていた。僕はおそるおそるボタンを押した。すると目の前に巨大なルーレットらしきものが出てきた。中には色々な事が書いているようだがあまりよく見えない。



「それではルーレットスタート。」



天使がそういうと点滅しているところがくるくると回りだした。



「では、もう一度そのボタンを押してください。」



僕は言われるがままにもう一度ボタンを押した。すると点滅は次第にゆっくりになっていき斜め右下あたりで止まった。



「さぁ、ここが運命の分かれ道。果たして斎藤さんの運命はいかに……」



天使はそういうと席を立ち点滅が止まったところに近づいた。



「斎藤さんにやり直して頂く人物は……国際指名手配中のテロリストリーダー、黒田勇気(38)です!」



「はっ?国際指名手配?テロリスト?」



「そうです。国際指名手配中のテロリストのリーダーです」



「えっ、そのテロリストになっていい行いをして天国ポイントを稼がなければならないんですか?」



「そういうことになりますね」



「それって大丈夫なんですか?」



「さぁ。どうでしょうか。こんなケース今までなかったですからね。ただ言えるのは、斎藤さん、ツイてないですね。ミュージシャンとか引いた人はあっという間に天国ポイント貯めてすぐ戻ってきましたからね。」



「貯めればすぐ戻ってこられるんですか?」



「あっ、そこいい忘れていましたね。そうです。目標の天国ポイントを貯める事ができればすぐにこちらに戻ってこられますしそのまますぐに天国へいけます。ただし、その反面、悪い行いをすれば今あるポイントさえ減っていってしまいますので注意してください。あと一番最悪なのはその体で死んでしまった場合です。こちらは問答無用で地獄行きになってしまいますので気を付けてくださいね。斎藤さんの場合、職業的に両方気をつけなければならないと思うので慎重に。では時間もあれなんでそろそろ参りましょうか」



天使は立ち上がり、僕の手を引っ張るとドアの前に立たせた。



「ちょ、ちょっと待ってください!」



僕はあまりの展開の早さに何が起こっているのかよくわからなかった。



「まぁさすがに今回のテロリストは厳しいと思うのでせめてといいますか、極力前世と同じ並行世界にしときますから。斎藤さん。では検討をお祈りしていますよ。グッドラック!」



そう言って天使はドアを開けると勢いよく僕の背中を押した。真っ暗やみの中をどんどん落ちていく。振り返ると天使がにこやかにほほ笑みながら手を振っていたがそれもみるみる小さくなり、僕はそこで意識を失った。