「忘れませんねーあの日の事は。」
又次郎はゆっくりバーボンを回しながら遠くを見つめてそう言った。
「朝起きた時から今日は何かあるなっていうか胸騒ぎっていうか?そういう予感はあったんだよ。起きて目を開けようとしたら目やにで開かなかったり卵焼き作ろうと卵を割ったら双子だったり。」
又次郎はバーボンを指で少しかき混ぜるとそれをゆっくりねぶった。
「君は、超能力って信じるかい?」
又次郎は軽くドヤ顔でこちらを見てポール牧のように指を鳴らすとバーテンを呼び、飲み終わってないうちから追加でカルーアミルクを頼んだ。
「昔から割とそうでさー。何かが起こる前には必ず何かそれを予感させる出来事があるんだな。まぁ例えば茶柱が立ったりだとか同姓同名の人にあったりだとかね。それを超能力というのか偶然というのかは人それぞれだろうけど僕はそういう星の元に生まれてるんだろうなーきっと。」
遠くを見つめそういうとバーテンに何やら話し始めた。向こうに座っている女性にカルーアミルクが届き女性がこちらを向いたのを確認するとそっちに向かって派手にウインクをした。
「ところで君は普段からこういう店にはくるの?君ぐらいの年だとどうせ居酒屋か。わたみんちかやっぱり。」
ペンを取り出し、コースターに何やら書いた後、
「ちょっとトイレに行ってくる。あー大丈夫。すぐ戻ってくるよ。大事な話はCMの後でってね。」
と私の肩に手をポンと叩いてから席を立った。
それから10分ほど時間が流れただろうかなかなか又次郎は帰ってこない。やることもないので店内を見回してみると先程の女性に話しかけている又次郎の姿を見つけた。女性は少し怪訝な表情を浮かべていたがしばらくすると緩んだ表情を見せ始め次第にその笑い声はこちらにまで響いていた。しばらくすると又次郎はその女性と席を立ち肩を組んで店を出た。
最初はやんちゃだなーと思って見ていたが本来の仕事を思いだし私はあわてて彼を追いかけ、店を出た。
彼を見つけて
「又次郎さん!」
と叫ぶと彼は後ろを向いたまま右手を二三度こちらに振り夜の街に消えていった。