徳村慎
いつ果てるともない人魚たちとの海中での戦い。
兵士はみんな少女だ。男たちは先の大戦や病気で亡くなってしまっている。唯一、Tだけが、男の艦長として潜水艦オリドンナノラに乗り込んでいるのだ。
人魚は醜悪とも美麗とも言える顔つきをしている。
美醜とは何か?、、、行動で結果は出る。
少女たちは、潜水艦に閉じこもって大昔の小説や音楽を聴いて過ごしている。
少女たちは、戦闘で死ぬと、ナノマシンの蘇生術で生き返る。
果てしない戦い。
戦争は、いつ終わるのか分からない。
潜水艦オリドンナノラが、
姉妹潜水艦ソリドンカナヤと出会ったのは、太平洋の沖だった。
艦長Sがソリドンカナヤからオリドンナノラに移ってTと話をする。
Tが言う。
「人魚どもの進化ったら、すさまじいものがあるよなぁ」
Sも言う。
「人間が退化してるんじゃないだろうか?」
「まさか。バケモノどもが超常的な進化をとげてるのがスジだろうよ」
「でもって、人間も退化してるのかもしれん。人魚が進化して我々はナノマシンによって退化しているのかもしれん」
「人魚たちは、我々の動きを感知して素早く逃げ回る。そして素早い攻撃だ。百発百中だった我々の少女兵士たちも、今では命中率が50%ってところか」
「オリドンナノラでは50%か、太平洋沖だとソリドンカナヤは33%ぐらいのものだぞ」
その時、伝令が入った。
海坊主が出たというのだ。
Sは素早くソリドンカナヤに戻った。
「魚雷発射!」
ソリドンカナヤから魚雷が発射された。
Sが無線電話で言った。
「T。そちらのオリドンナノラに負傷者を載せて逃げてくれ。その代わり、戦える者は、ウチのソリドンカナヤに載せてくれ。全員でたたかって、必ず海坊主は仕留めるから」
Tは背後を振り返った時には、海坊主が海から膨(ふく)れ上がり、Sと戦闘可能な少女兵士たちを載せたソリドンカナヤを包み込んでしまっていた。
「Sぅー! 死ぬなー!」
ソリドンカナヤとの別れから2日後。
潜水艦オリドンナノラは、人魚の群れに遭遇した。
早速潜水服を着た少女兵士たちがオリドンナノラから出て行き、戦闘体制に入る。
ナノマシンの蘇生術でも時間的な限界があるのだろう。
少女兵士たちは、片手のない者、片足のない者がほとんどだ。
しかし、そのような状態で、まともに戦えるはずもない。次々に少女兵士たちは殺されて海に沈む。その沈んだ者たちを回収する潜水艦オリドンナノラのロボットアーム。
早速、ナノマシンで治療し蘇生させる。
死んでも死んでも生き返らせられる世界。
生きることに意味などあるのだろうか?
代わりの者など幾らでも居る、この世界で、生きるとは何なのか?
突出した才能も、人間性も備えていない僕らの生きる道はあるのだろうか?
また、人魚たちが正義で僕らが悪である可能性だってあるんじゃないか?
人魚たちは新人類で、僕らは旧式の人間で、滅びる運命なんじゃないのか?
古いアニメソングを呟くように歌う。
愛や夢を失くした者の歌。
時々、思うのは、死んでも良いんじゃないか?
ということだ。
生き返らせられるのは地獄で、死にゆくのは極楽なんじゃないのか?
輪廻から逃れるのが良い、なんて説があった気がする。復活しないのが良いのだ。
潜水艦オリドンナノラは、壊れた。
海の流れのまま漂い続ける。
酸素が無い。
少女たちのナノマシンが崩落して、生きながら腐る身体になっていった。
それでも、古いアニメソングを懸命に聴いている姿があった。生かしてやりたい。生きて地上に帰りたい。
それでも、地盤沈下で海の底に沈んだ都市ばかりなのだ。地上に帰ることなど出来ないのだ。
ふと、指先の痺れが、暖かいものに変わった。
錯覚かもしれない。
船長室に人魚が、どこからか侵入したのか、立っていた。幻覚か?、、、それとも僕は助かるのか?
神よ! 仏よ!
最後まで、読んでいただきまして、
ありがとうございます♬
😊😅🥲😘😛🤨😋😆