感想:『金閣寺』三島由紀夫 | まことアート・夢日記

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夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。

感想:『金閣寺』三島由紀夫
徳村慎


なぜ『蜜蜂と遠雷』の感想を書かずに『金閣寺』の感想を書くのか。自分でも分からない。
『蜜蜂と遠雷』は良かった。『金閣寺』よりも好きかも知れない。それでも屈折した心理は『金閣寺』にある。

仏に逢うては仏を殺し。
南泉斬猫(なんせんざんみょう)。
乳房と金閣寺。

同じ美を語りながら、『蜜蜂と遠雷』は表、『金閣寺』は裏なのだ。……とも言える。

僕の音楽は、どっちなのだろう?
悪魔的な音楽なのか、天使の音楽なのか。
いや、そういう話じゃないのだろう。ディオニュソス的、アポロ的というのも、西洋観念だし。
妖怪と仏と言えば近いだろうか?
妖怪には仏のカケラがあり、仏には妖怪のカケラがあるように思える。

眠りながら悟るような。死と眠りと悟り。

と、ここまでは、途中まで読んで書いていたのだが。

ここからは、読み終えてから書く。


『金閣寺』をすすめた教師が居たような気がした。
ものすごく腹が立った。作られた過去かも知れない。それでも、怒りは本物だった。

心理学を学びたいと言っていた女子高生(同級生)に僕はひどいことを言った。これも作られた過去かも知れない。

「心理学は人文科学。人文科学は科学じゃない。」と。

まあ、自然科学が科学なのであって、人文科学は科学じゃない、というのは、若干本当のことのように思える。でも、精神医学(や脳科学)は科学だなぁ。心理学と精神医学(や脳科学)は別物だなぁ。

いや、同じようなものか。

芸術を科学的に探求したいから、芸術をやっているわけではない。

小説は、別の人生を生きられる。
だから小説を読むのだ。

パラレルワールドだ。

小説を読んだ数だけ人はパラレルワールドを生きているのだろう。

夢日記を執拗につけてきたのは、夢の科学的解釈が欲しかったからだが、最近は、夢を物語として楽しむようになった。パラレルワールドとして楽しんでいるのだ。

『金閣寺』には、さまざまな美が登場する。尺八、生け花、禅の思想。そして、足の不自由さや、吃音でさえも美にしてしまうところは、フランシス・ベーコンの絵画のようだ。

果たして、燃える金閣寺は、美であるのか。

おそらく美である。究極の美。

読み終えて良かった。途中まで読んで読み終えなければ、僕は思想的に死んでいたかも知れない。

生きることを決めた主人公は、全てを捨てて生きるのだろうか?

僕で言えば、大学を退学して那智黒石の仕事に就いたが、、、例えば那智黒石を捨てて、ホームレスになって生きるぐらいの感じだろうか。

そこに若干、ワクワクしてしまう自分も居て。
そうはならない自分も居て。

一番、気になるのは、金閣寺を燃やすという解放感に主人公は酔うのだが。金閣寺は幾らでも人間の手で再建されるのだ。それを主人公は知らない。金閣寺は輪廻転生する。また同じものに生まれ変わる。

金閣寺は生きる仏なのだ。そう考えると、主人公は、初めから終わりまで死んだ存在に等しい。今日叩き殺した蚊のようなものだ。蚊は転生するだろうか?

草木国土悉皆成仏。
やはり主人公も(蚊も)転生するのだろうか。
生きることは、死ぬことなのだろうか?

『金閣寺』は、人の不幸を笑う三流小説めいた部分がある。三島由紀夫は、自らの思いを告白するように主人公に告白させた、と解説で書いてあったが、どうなのだろうか?

三島由紀夫の中に、ゲスな部分があって、自分の不幸を笑って、主人公を笑っていたように思えてくるのだ。だからこそ、ラストのタバコを吸うシーンは、良い。読者も著者もゲスな美から解放されるのだ。

ゲスな美。
今の現代アートでゲスな美でないものがあるだろうか?

ゲスでない美は古びた美で。
那智黒石のようなフォークアートというか工芸が、ただ、一本立ちしているのだろう。
だから、那智黒石は、古いから新しく感じられるだろう。

解放を求める人たちは、現代アートを観て楽しむだろう。ゲスだなぁ。と。それは『金閣寺』を楽しむ読者の気分である。

だとすると、小説は、三島由紀夫の時代から、もうすでに現代アートになっていると言える。

読み終えて、やはり、『蜜蜂と遠雷』とは真逆だと思う。あの美しいピアノの世界の描写。

いや、真に迫る描写という意味では『蜜蜂と遠雷』も『金閣寺』も共に高いレベルに達しているのだ。

『蜜蜂と遠雷』は、美術で言えば印象派のような美しさ。『金閣寺』は現代アートのような美しさがあると言えるかも知れない。



最後まで、読んでいただきまして、、、
ありがとうございます。
(●´ー`●)