感想
椎名誠『岳物語』
椎名誠が息子の岳にまつわる話を書いたもの。私小説だ。
岳のワンパクな感じから釣りへと興味が向かうところ、父と釣りをしているところ。全てがキラキラとしている。
小説は自分の成し遂げられない夢をかわりに実現してくれるもののように最近は思う。それは自分の書く(くだらないながらも自分の中では意味のある)小説もそうだし、他人の小説もそうなのだと思う。
別の人生を生きるのが読書だとすると、フィクションだとかノンフィクションだとかは関係ないだろう。とにかく自分の世界を広げることが気持ちいいのだ。
自分の限界を超えるのが書くのも読むのも小説(や本、文章)だとも言える。
案外、内的世界の探求はノンフィクションの釣りの話なんかのほうが描き出せている気もする。岳という少年が探求する、あるいは探求されるのだ。冒険は身近にある。その冒険が終わることはない。疑問に思うことを自分なりにつきつめると冒険なのだ。
雨の音とNHK-FMのクラシックを聴きながら読み終えると、部屋の中も外も冒険なのだとも思えた。
徳村慎
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