B級小説『カクタスマン』 | まことアート・夢日記

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夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。





B級小説『カクタスマン』
徳村慎



*作中の聖書からの引用は、いのちのことば社『新版 リビングバイブル 旧新約』から用いました。

Scripture quotations taken from the Living Bible (Japanese)
Copyright©1978 by Intermatiomal Bible Society.
Used by permission. All rights reserved.



西暦2238年。

世界の軍事に用(もち)いられる物は生体兵器が当たり前の時代と成っていた。

主力製品として生体兵器を開発している戦争兵器会社のトゲール社は、毎週新たな兵器を提案している。そして世界中がその兵器を使用した戦争を起こしていた。

トゲール社長、棘田棘蔵(とげたとげぞう)が、お気に入りのニュースサイトを腕時計式空中投影タブレットで見ていた。「世界中が俺の兵器を使って戦争しとるがぁん。こりゃ、ええがぁん」まだ30半ばの社長は若くてフサフサした黒髪を撫(な)で上げて地酒を飲む。すっかり気持ち良く酔っ払っている。

「おお。これは俺の作った新兵器ハリモグレンやないかぁん。どや、この威力。スピード。俺の兵器を使わん軍隊なんかモグリじゃいッ」

しかし次の瞬間、街へと侵攻したハリモグレンたちが子供を殺(あや)めてしまう映像を見てしまった。

飛び散る肉片の映像に顔を背(そむ)けた。リアルタイムの放映だからカットが出来なかったらしい。胃の中の物を全て戻した。反吐(へど)が床に溢(あふ)れる。「こないな、はずや無かったんっやぁあああああああァッ!!」

涙の中で彼は悔恨した。特別に彫刻家に造らせた巨乳巨尻でグラビアモデルに似たマリア像の前に、ひれ伏す。奇妙な事に聖書『詩篇』の127が風も無いのに開いた。

子供たちは神様からの贈り物であり、ほうびなのです。

泣き崩れて自分の罪の重さに気付いてマリア像に縋(すが)り付く。知らぬ間に両手で巨乳を鷲掴(わしづか)みしていたのだが、 別段Hな気分だった訳ではない。そして顔を両手で掴んだ両の乳房の真ん中に押し当てて、泣き叫んだ。これも決してHな気分だった訳ではないのだ、断じて。(汗)

言葉に成らない号泣が止んで、彼は考えた。俺の作った全ての兵器を、いや、俺の作った物だけでなく、世界中の兵器を破壊せねばなるまい。これが俺の使命。せめてもの罪滅ぼしだ。

棘田棘蔵は設計図を描き始めた。脳内をスキャンすれば自然と形が浮かび上がるBrain-CADシステム。30分ほどで完成した設計図を、完全コンピューター制御の工場にメールで送った。

自分も屋上のヘリポートから工場へと飛ぶ。今日の棘蔵は、酒も女も、ヘリコプター内で味わわなかった。

工場では巨大地下施設内の溶炉を回転させ、遠心力で擬似無重力を作り上げて完全な混ざり具合の合金を生み出す。溶炉から出て四角い鋳型に流された合金が自動の金槌で叩き伸ばされていく。しなやかで強い合金。これこそが私の求める金属だ。完全コンピューター制御のレーザーのカットマシンが金属を切り抜く。余った合金は、ロボットアームが掴み、また溶炉に戻される。切り出された合金が人間の全身を覆うパーツに仕上がって行く。完全コンピューター制御のリューターが細かな部分を削り磨き上げていく。削りカスの金属も溶炉に戻される。プッシュプル方式のエアダスターが空気で運ぶのだ。完全コンピューター制御のエアブラシがメタリックグリーンの塗装を吹き付ける。更にドライヤーで乾燥させてから、透明なコーティング剤を塗布した。これらの塗料は宇宙船の表面や、宇宙船を爆発で地球外へと射出する台にも使われており、耐熱温度は宇宙クラスだ。中味のナノマシンや爆発物も次々に出来上がり組み込まれて、ハンダマシンがコンピューターチップと接続していく。

棘蔵は指定された位置に立った。ロボットアームが何本も突き出て、棘蔵の身体に金属パーツを取り付ける。

「俺は……サボテンの国からやって来た、カクタスマンだ!」宣言して、目標地を腕時計型空中投影式タブレットに入力する。そう。まずは……あの場所に行かねば、なるまい。

中東の、とある石油産出国へとヘリコプターは飛んだ。しかし燃料がギリギリだったので着地に失敗してヘリに積んでいた自転車(ママチャリ)をキコキコ漕(こ)いで急ぐ。

砂漠でハリネズミのDNAを改良して針を飛ばす能力を身に付けた半機械生命とも呼べる生体兵器、ハリモグレンたちが集まって来た。

ピュンッ。
針を飛ばし、カクタスマンの胸に当たった。

しかし、大丈夫だ。しなやかで強い合金は針を弾(はじ)き返す。

「ふん。こんなヘナチョコ兵器で俺を倒せると思うのか?」→いや、ハリモグレンも、アンタが開発した兵器だからね。(汗)

「カクタスボンバー!」叫び声とともに自転車で走り寄り肩に付いた棘を飛ばす。

ヒュオンッ。
棘は幾つもに分かれてハリモグレンを殺していく。

しかし、ここでカクタスマンは気付いてしまった。これら生体兵器も生きているのだ。違う。悪いのは兵器を使う軍隊だ。世界中の軍隊を倒そう。カクタスマンは単身軍事施設へと乗り込むために自転車を漕いだのだった。

中東の石油産出国の軍隊は慌てた。
「What ? アノ、サボテンみたいな男は何だ?」

次々に戦闘機や戦車を破壊していくカクタスマン。メタリックグリーンが爆風に光り輝く。

戦車の砲台が自動でカクタスマンを狙っている。気付いたカクタスマンが「カクタスボンバー!」と叫ぶ。どの兵器の時もカクタスボンバーと叫ぶらしい。それは兵器の名前を考える間もなく日本から中東に辿(たど)り着いたためであり、決して彼の英語力が無いわけではないだろう。……たぶん。(汗)

カクタスマンは施設へと入りナノマシンを放つ。ダニのようなサイズの機械たちが散らばっていく。こいつらは軍事施設のコンピューターを操るプログラミングを持っている。

「ふん。二流のアホどもが。俺の兵器に勝てるわけが、ないやろがいッ」

→だから、この施設の全ての武器や兵器はアンタが開発してプログラミングもしてるからね。ちゃんとトゲール社が売り出した物だからね。(汗)

自転車で行けない場所は金だらいに乗って海を泳ぎ渡り、岸壁をよじ登り、世界中の軍事施設を破壊し尽くした。その間、3ヶ月。「これで平和になったげェ」とトゲール社へと戻ると待ち構えていたのが新たな敵だった。

「棘蔵。世界中で破壊の限りを尽くしたようね」メタリックオレンジのボディの機械のスーツの中から女性の声がした。

「そ……その声は我が妻、蜜柑子(みかんこ)!」カクタスマンは緑のボディの中から精一杯叫ぶ。着ぐるみ……いや、違った。機械のスーツの中で酸素不足になりそうな気持ちで。

「私は、もう、その名前を捨てたのよ。今の名前は、オレンジウーマン。貴方(あなた)の生んだサボテンマンの設計図を基(もと)に改良を重ねて作り上げたのよ」

「うぬぬ。卑怯(ひきょう)なッ。サボテンマンではなく、カクタスマンなのだ。ちゃんと俺の名前を呼びなさいッ」→そこをツッコむか?(汗)

「オレンジボンバー!」→夫婦揃(そろ)って英語に弱いわけではない。……たぶんね。(汗)

蜜柑ほどの球形ミサイルが放たれた。カクタスマンは避(よ)けられたが、トゲール社のビルが破壊される。1階が吹き抜けのような状態となり、次々に妻の放つミサイルで柱にダメージが与えられた。

ゴゴゴぉおおお。
ビルが崩壊する。

「この野郎ッ。俺のビルを潰(つぶ)しやがって!」カクタスマンが叫ぶ。

「私は女よ。野郎じゃないわッ」とオレンジウーマンも叫び返す。→やるな。冷静。(笑)

「くそおッ。こうなったら仕留めてやるぅうううッ」妻との別れを意識して棘蔵はカクタスマンのスーツの中で涙を流した。チラリと脳裏に保険金で儲かる事も、よぎったが。(汗)

「やめてよ!」子供がメタリックブルーのロボスーツで現れた。その声は……アルフォンス・○ルリック。……ではなかった。棘蔵の息子である棘太(とげた)だった。従って、棘蔵の息子のfull nameは棘田棘太だ。なんだか、のびの○太みたいだが、気にすんな。(汗)

棘蔵の妻であるオレンジウーマンが語り掛ける。「棘太。危ないから下がってなさい。子供は真似しちゃ駄目なのよ。R-10指定なの」棘蔵が深く頷(うなず)く。10歳未満禁止の世界なんだ。仕方あるまい。

「嫌だ。僕はナスマンなんだッ」とメタリックブルーのスーツに包まれた子供は叫ぶ。

ナスマンの父が疑問を口にする。「お前……ナスの英語を知らなかったのか?」

妻が棘蔵に言う。「じゃあ、アンタ分かるの?」

カクタスマンは威厳を持って胸を反り返らせて言い放つ。「俺は分かる。しかし、子供が自分の力で調べ上げるまでは、俺は答えを口にしない方針なんだ。……君が教えてあげなさい」

オレンジウーマンは少しの間考え込む。「私も子供の学びは自発的なものを望んでるのよ。棘太。自分でちゃんと調べたの?」

10歳のメタリックブルーのナスマンは叫ぶ。「そんなん、めんどくさいやんかッ」

カクタスマンが子供に軽く蹴りを入れる。「ネットに繋いだら楽勝やんけッ。なんで調べられへんのじゃぁ!……もう、そんなんやったら外へ出とけッ」

「お父さん。ビルが無いからここは外じゃないの?」静かな中で、風が少しの間吹き渡る。(汗)

オレンジウーマンが気づく。「ねぇ。ナスは紫じゃないの?……なんでメタリックパープルにしなかったの?」

答える、紫ではなく青い、子供。「赤色インクが切れてた」→エプ○ンのプリンターかよッ。(泣)

カクタスマンが叱る。「お前、何年やりやるんなよ、インターネットをぉおッ。言い訳(わけ)すなッ」

「ナスボンバー!」
子供の股間からナス型の爆弾が飛び出した。カクタスマンに直撃する。

倒れたカクタスマンが顔の金属パーツであるヘルメットを外す。「息子よ……お別れだ。まさか、息子の息子で殺されるとはな。あばよ……」
ガクリと首を落として死を迎えたカクタスマン。

「お父さァあああああああああぁァんッ。死なないでぇ~!」泣き叫び父の遺体に、しがみつくナスマン。→いや、お前が殺したんやッ。(汗)

オレンジウーマンが、しゃがんでナスマンの肩に手を置いた。「良いのよ。コレで。お父さんはね。世界中の兵器を破壊したかったんだから。このビルも必要無いし、お父さんも必要無いのよ……(ここからは小さい声で)ナスマンが殺さなければ私が殺してたから」→え?

「お父さんは必要やァあああッ!」
夕陽が照らし出した。全てが無に帰り家族の再スタートを祝福するかのように。

「アンタの本当のお父さんはアメリカに居るのよ」→んんん?

ナスマンもヘルメットを外して目が点になる。「え?」

オレンジウーマンは言った。「アメリカへ行きましょう……(ここからは小さな声で)お父さんが死んだら保険金が入るから」

「え?……なんだか最後の方が聞こえないよ?」ナスマンは耳に手を当てる。

「子供には、まだ早いの」
こうして親子はアメリカに渡るのだった。

実の息子に殺されたと思い込んで死ねたカクタスマンは幸せなのでは、ないだろうか?……もし不幸せだと思うのなら、それは狭い了見だと、オレンジウーマンなら語るだろう。何故なら、彼女は兵器開発で儲けられない夫になど何の興味も無いのだから。(汗)

世界に平和が戻った。
カクタスマンは永遠の眠りについた。→眠りから覚めたら、また、戦争になるからね。(汗)

もう1度言おう。
世界に平和が戻った。
(了)


あとがき。
念のために言っておきますが、パロディーは著作権にひかかりません。B級小説って作ってて面白くて楽しくて良いなァと思いました❤︎

d(^_^o)