詩『左手の小指』
徳村慎
左手の小指が動かなくて
苛立ちをギターにぶつけてた
左手の小指が動かなくて
ギターを壁に立てかけてた
しゃらら
竹の葉ずれだね
しゃらら
車と水たまり
しゃらら
遠くの海の街
しゃらら
風のようなギター
「耳なし芳一」の
琵琶のように
「アッシャー家の崩壊」の
ギターのように
魂が音になるのかな?
そうだったなら良いのにね
カレーを食べてTV見て
……でもね
君は、いないんだ
毛布を抱いて目を閉じて
……でもね
君は、いないけど
目覚めると消える夢だよね
……でもね
君は、いないから
仕事で汗を流してた
……でもね
君は、いないまま
犬が吠える
洗濯機が鳴いて
鳥がさえずり
僕のギター
やれるまでやるって
決めたんだ
君は、いないけど、いないんだけど
妄想みたいな考えだけど
君の周りの男より上に
飛びたいって思ってあがいてるんだ
ときどき焦って見失ったり
ときどき諦めたりもするけどね
妄想みたいな考えだけど
君の世界の心みたいに高く
飛びたいって思ってあがいてるんだ
左手の小指が動くまでは
少しずつでも少しずつでも
ギターに恋してみようと思う
君への恋をギターで歌うよ
左手の小指が動くまで
少年の心が動くまで
iPhoneから送信