詩『海月に捧げる子守唄』 | まことアート・夢日記

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まことアート・夢日記、こと徳村慎/とくまこのブログ日記。
夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。

詩『海月に捧げる子守唄』

徳村慎



波の中を光の玉が飛んだ
その小さな玉は真珠のような汗
緑の中に青く流れた波は
少女の長い黒髪に変わった
横顔を少しこちらに向けて
僕を見つめて髪をかき上げ
にっと笑ってまた遠くを見る

僕には届くはずもない
ロボットの心が声にならない
少女が主人なのだから
僕は従うだけなのです
ロボットに恋は許されない
ただ雑用をこなすだけの
意思など無いと思われた
機械に過ぎないロボットだから

この惑星の緑の空に
願いを叶えるルナ2つ
少女が生きられますように
密かに願ってみたけれど
たぶん生きられないだろう
わずか3日の命だけなのに
遠い地球の彼を想って
過ごしてしまうのだろうと思う

空は海月が飛んでいく
哀しいことすら忘れた海月
雲と混ざって緑に消えた
砂漠で虫が馬を食べ
馬の悲鳴が遠くに聞こえた
片腕ほどの体長の虫が
集まれば獣は骨となる

レーザー銃を少女は見つめる
自殺を考えているのだろうか
どうせ3日間の命でしかない
待って死んでも同じじゃないか
僕のレンズに映る主人は
笑ってため息を吐いている
死ぬことさえも諦めたんだ
たかだか32bit処理の映像
安物のロボットの解像度でも
少女は哀しみを背負っていた

お前は良いわね生きられて
私の気持ちが分からないでしょ?
見下した主人は冷笑も浮かべず
睨むような声をかけて空を見上げた
初めて海月を見たかのように
美しく瞳は輝いて
病気が進み動かない指で
空中でピアノを弾いていた
ビバルディだと気付いたが
僕は曲を尋ねてみた
海月に捧げる子守唄
おどけて笑った少女の指に
僕はロボットの手を重ね
空中投影された鍵盤で
春の第1楽章を歌ってみた
眉を少し上げて瞼を伏せて
分かってたんだと呟いてくれた

風が少女の髪を巻き上げた
旋律に乗って身体を揺らし
目を閉じたまま頭を上下させる
この恋は一生消えないだろう
メモリーチップが破壊されても
天使が記憶を残すだろう
主観的で文系な僕を
ロボットのままで終わらせるなら
運命を呪ってやろうかと
馬鹿げた考えが浮かんだりする
出逢わせてくれた神に感謝を
何百年捧げても足りないのに

少女の髪は波となり
海の中で真珠が踊る
お前が恋人なら良いのにね
呟いた声に聞こえないふり
やはり僕はロボットだから
機械の心を演じていた
















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