詩『好きなのは海』 | まことアート・夢日記

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まことアート・夢日記、こと徳村慎/とくまこのブログ日記。
夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。

詩『好きなのは海』


好きなのは海だと
言えなくなるのか
思えば
光る君の笑顔を見つめ
君の海の闇へと泳ぐ
これが君の頭の中
これが君の心の声
たくさんの歌と色彩を
教えてくれた道を進む
君は人を愛するから
僕も人を愛してみよう
海底の都市は砂の中
潮の流れが変わったら
砂は何処かに消えて行く
都市の人々は起き出して
朝の太陽を拝んでいる
女王様のお陰だと
口々に交わす言葉から
君の心の中心だと知り
女王様に逢いに行く
長い石段を登っていく
会釈する人々の高貴さに
僕は怯えて振り返る
此処まで登って来たのかと
もう少し登ってみようかと
高みを目指して進むけど
汗の割には頂上が
中々見えて来ないまま
此処には君は居ないのか
此処にも君は居ないのか
玉座に見える数々は
君とは違う女の子
何処に女王は居るのです?
僕が叫んで求めたら
貴方の心には居ないのか?
老婦人が問いで答えたのだ
僕の心には居ない気がした
冷たい雨が降って来た
海底にも雨は降るのかと
不思議な気持ちになりながら
老婦人とお茶を飲んでいた
本と雨垂れだけが進む
ゆっくりとした時間の中で
僕は老婦人の憂いに君を見た
本から顔を上げた老婦人が
微笑んで僕の後ろを指差す
雨は上がって虹が出ていた
こんなにも美しい君の涙
こんなにも美しい君の笑顔
気づけば老婦人は
老いた仮面を外し
若々しい女王様の顔を見せた
貴方は何を求めているの?
ただ君に逢いたかった
貴方は自分に逢いたいのでしょう?
冷ややかでいて温かい
諦めと母性に満ちた女王様が
僕の肩にそっと触れた
そちらが森への道ですよ
獣と共に住む少女が居ます
怖い少女なのでしょうか?
それは貴方が決めること
女王様は再び老いた仮面を
被って本に視線を落とす
難解でも冒険と愛に満ちた
本の世界へと入っていく
僕は森への道を進んだ
苔とシダと竹と川と樹々と
山を進めば獣と共に少女が居た
獣は僕を食べたそうに睨む
少女が獣の首を撫でた
僕は僕に逢いたいんだ
それなら獣を仕留めなさい
殺されるか殺すかどちらかよ
少女は僕に石のナイフを投げた
受け止めた石のナイフは冷たく
鋭く怖い力に満ちて
僕には扱えないと思ってしまった
獣は身を起こしてのそりと歩く
身を沈めて飛びかかりそうな気配
石を扱えると信じるしかない
ギュッと握りしめたから
ナイフで指を傷つけた
僕の血が流れて固まりかけて
時間だけが過ぎていく
汗が傷口に入り痛かった
獣が突然笑い出す
合格だよ若造よ死なずに済んだな
普通は自分に負けて死ぬんだよ
この森は自分との戦いなんだ
少女が滝まで連れて行ってくれるさ
滝で裸で身を清める僕
恥じらうこともなく見つめる少女
少女が土笛を吹いていた
素朴で単純で心に沁みる
旋律だけが繰り返される
少女と干し肉を洞窟で食べた
火の番をしろと命じられた
風が洞窟に入って来て
今にも火は消えそうになったんだ
僕は風から火を守り
風が止んだら熱くて目が痛い
火の粉は僕に降りかかり
木をくべるたびに火傷しそうだ
喉がひりひりするほど煙を吸い
涙を拭うと少女が居た
朝だ良く頑張ったな
この川を筏で下れこの先に
黒い耳と目を持つ白熊が
青い目の女を捕らえている
助ければ何かが見つかるはずだ
筏は急流を進んでいく
岩に竿を当てて転覆を免れる
古くバラバラになった筏が
岸壁まで押し上げられていた
死体も幾つも見えていた
あれが僕だろうか
これが僕か
あの時の僕や
この時の僕か
怯える心で竿を突き出せなかった
過去の僕が死体の数々だ
ようやく広い流れに出たら
白熊がぬっと現れた
怪我をした青い目の女を支え
水を飲ませてやっている
この女は動く気力がないんだよ
白熊は言って悲しく笑う
もう怪我など無いに等しいのに
街に出れば男たちに逢えるのに
街は女の居場所じゃないと
動かぬつもりでいるらしい
お前は女を動かせるのか?
白熊が両手を広げて語る
僕は青い目を見つめて
後ろに回って金髪をとかした
女は空の月を眺めた
昼の青い澄んだ月を
女は白熊に抱きついて
サヨナラを言って街へ向かう
僕は隣を歩いていく
無言で二人手をつなぐ
あれが女王様の城
女が言って青い目で
遠くの城という名の都市を
憧れの目で眩しく見つめた
男たちが女に声をかける
僕は別れて酒場に行く
金貨1枚でビールをあおった
大男の荒くれ者が腕相撲をしてた
あんたもやってみなさらんか?
白髪の痩せた男が言った
大男の荒くれ者に打ち負かされて
僕は痛む右腕をさすった
どうれワシもやってみるかな
白髪の男が荒くれ者の
腕の骨をへし折った
金歯を見せて笑う白髪の男
あんたはワシに勝てるかな?
勝つまでやってみなさらんか?
目を伏せて断る僕に
酒場の娘が嘲笑う
やってみなくちゃ
分からんだろうが?
あたしがやってみせようか?
酒場の娘は白髪の男と良い勝負だ
二人とも力尽きて引き分けとなった
僕は酒場の娘に習って
腕相撲がどんどん上達した
酒場の娘の部屋の床で
僕は眠ることになったんだ
娘はベッドで鳥の話をした
鳥を捕まえて欲しいのさ
その鳥ならば彼を連れてくるんだ
遠い国に行った彼を連れてくる
願いが叶うんだねと僕が言った
そうだよ鳥は願いを叶える
酒場の娘は眠ってしまった
恋する人を取り戻せるなら
僕だって鳥を捕まえたい
朝は鳥を捕まえるため
高い木に登って待ち続け
夕方になれば酒場に戻り
酒場の娘に腕相撲を教わる
ある日鳥を捕まえて
酒場に戻れば手紙を読んで
泣いて酒を飲む娘が居た
彼は死んでしまったよ
鳥を捕まえる前に死んだんだ
その鳥はお前にあげるから
お前の願いを言ってごらん
僕は願いに君の名前を
呼ぼうかよそうか迷っていた
白髪の男が旅立つと言う
僕は鳥を籠に入れて
白髪の男と勝負した
僕はギリギリで腕相撲で勝った
成長したなと金歯を見せて
白髪の男は旅立った
僕は酒場の娘に好きな人が
出来るように祈って鳥を飛ばす
僕は鳥の飛ぶ方向に向かって
歩いてみようと思い立つ
牧場の牛を横目に見ながら
ずいぶん歩いたもんだと思った
学校帰りの女学生が
数人連れ立って歩いていた
僕が牛を見つめていたら
貴方は牛を恋人にしたいの?
そんなふうに女学生がからかった
まあね牛なら学生のように
僕をからかうことなんてないしね
笑って女学生が髪飾りに使った
一輪の花を僕にくれた
花びらをちぎって占うのよ
本当は自分と恋人のどちらが
大切なのかを占うのよ
笑って女学生たちは去って
僕は花びらをちぎっていった
僕が残るか君が残るか
あとほんの少しで分かるのに
馬車が走り抜けて風を起こし
花を僕の手から奪って
空高くへと運んでいった
馬車が突然止まったんだ
中から占いをするような
婆さんが手招きして僕を呼ぶ
あんたの未来は不思議に満ちとる
あんたの思う通りになるじゃろ
しかし多くは望んではならぬ
あんたが本当に求めれば
求めるものは手に入る
何も思い浮かばなかった
富も名声も女でさえも
君さえ思い浮かばないのなら
僕には何も手に入らないのか
あんたが一番最後に思った
光の笑顔の女がおるな
そんな女が手に入るわい
そんなふうな女が待っておるわ
占い婆さんと別れて歩く
君なのか君に似た顔なのか
それとも性格が似ているのか
知識が似ている人なのか
歩けばここは都市の外
海底にある都市の前
再び砂に埋もれていく
君の心に別れを言って
闇迫る海を泳いで上へ
水を蹴って君の外に出る
君は結末を分かっていたのか
僕には始まりさえも見えない
耳を澄ませば波の音
君の心音もこんな波だろうか
波に削られて石が流れた
石は波の中で泳いでた
生きている石の姿が見えた
石が僕だとしてもまだ
始まりさえも見えないままで
色んな海が明るく光った
好きなのはやはり海だった














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