岩壁にしがみつき登っていくベクトルの背。振り向いて、必死で汗を垂らしながら怒鳴った。
「早ク登レ。オ前モ!」
オレは幸せが顔に出てたと思う。
「いや、お前だけが生き残ればいい。ベクトル。ヌーパを幸せにするんだぞ」
オレは追いつきつつある軍人に向き直った。軍人の一人が歩み寄る。
「ほう…死を覚悟したのか?いいこった」
オレは驚愕の余り震えた。
「ボム!ボムじゃないか!」
軍人の額から頬にかけて大きな傷があるが、まぎれもなく彼は、ボムだった。
「ボム?そんな名前は知らんッ。俺はナンバー54だ」
ナンバー54だと?別人なのか?…いや、そんなはずは無い。共に命を賭けて脱獄したボムを見間違えるはずが無い。じゃあ、一体…?
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