「オイ。緊張してんのか?初試合だもんな」
ニヤニヤしながらジムの会長が言った。
「いえ。昔を思い出してました」
「昔ィ?オイオイ。んなもん試合に勝ってから浸れや」
「会長。オレってプロレスに向いてますかね?」
「それが今から分かんたろうがよ?練習通りだ。とにかく、ぶつかっていけ。ぶつかってみりゃ相手も人間だよ」
オレは中学を卒業した後、しばらく何もしなかった。ニートだった。母親から金をふんだくって夜行バスで都会に来た。何kmも歩いた。立ち止まってはコンビニでお茶を買ったり雑誌を読んだり、好きな卵サンドを食ったり、コンビニの前に座り込んだりして歩き続けた。
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