3曲目。この曲でテクノ・アッシャーは最後だ。
フォー。フォーフォー。
シンセ音のロングトーンが重なっていく。
ピロッパン。リズム音を出さずにアンビエントあるいはチルアウトの世界を作る。
思い出。「ま、中学でハジけるだけハジけさせるしかないなァ」師匠の言葉がうっすらと思い浮かんで消えた。
タータリラー。ギターもロングトーンだ。エレキ・ギターがこんなにも美しいなんて。自分で弾いてて驚く。泉ちゃんが支えてくれるから、こんな曲でも出来るんだ。もっと行こうよ。泉ちゃん。こんな世界は他のどのバンドでもやっていない場所だよ。もっと行こう。もっと行こうよ。
桜の目に涙が伝う。泉も涙を目に溜めている。
フォー。フォーフォー。
ターリーラーリー。
ラー。最後のロングトーンが消えていく。
泉の手を握る桜。高々と持ち上げた。
控え室へ、降りる。最後の舞台。良かったよ。
「うわァーん」2人抱きしめて泣き出す。
その横を通り抜けていく、杏トリオのみんな。ポンと肩を叩く杏。何も言わずに舞台に上がっていく。
ジャズをやっている間、桜と泉はしっかりと抱きあっていた。そしてジャズは終わった。サックスの新が切ないような音を吹き上げた。観客の拍手が終わらない。
「行くよ。桜。泉ちゃん」とアサミが声を掛ける。翔と陸も、ライトを暇な先生に任せて控え室へ走って来た。
「桜先輩。まだ泣いちゃ駄目ですよォー」と翔。
「うん。行こうか、泉ちゃん」
「うん」泉はしっかりと桜の手を握った。