合奏が、どんな曲か決まらなかった日の次の日。大西先生が、みんなに提案した。「サイケデリックやろか」
「サイケデリック?」と、ほとんどが知らない。
「サイケデリックは精神の視覚化とかいう意味らしいんやけど。まあ、ジミ・ヘンドリックスとかクリームとか。クリームはエリック・クラプトンが在籍したバンドな」
「へぇ」と、みんな。
「じゃあYouTube聞かせたるわ」とケータイからイヤホンケーブルにつなぎ、イヤホンジャックからミニジャックケーブルを音楽室のミニコンポのAUX端子につなぐ。
ミニコンポから流れるサイケデリック。
「なるほどー。でも、これやとトリオ編成やよね」と桜。
大西先生が答える。「だから、ソロ回しにしようかと思って。ベースとドラム2台で基本のリズムを作っといて、その上に乗せるのは1人でソロをやって次々に入れ替わっていくのでどう?」
「うーん。なるほど。順番はどうします?」と翔。
「じゃんけんやな」と大西先生が言う。
大西先生とベースの亜衣とドラムの奈々以外の7人でソロの順番を決めるための、じゃんけんで盛り上がっている。その間に大西先生がリズム隊と打ち合わせをする。
最後は新と桜が残って、じゃんけんした。
「やったー」と桜。
「うわー負けたー」とサックスの新。
「最後は私のソロで終わりって事で」
「私ら一番最初やで」と杏。
大西先生が「決まったみたいやな」と言った。「それじゃベースとドラムのリズム隊の練習やろか。シンバルの刻みは4分音符やから、これは4ビートのロックになるから気を付けてな。間は16分のタカタカっていうスネアとタタタっていう3連符で乗って。そこんとこ気ィ付けてな」
この日から、リズム隊のリズムとソロ隊のソロの特訓が、はじまった。