「先パーイ!」翔が声を掛けて図書室に入ってくる。陸も後から入ってきた。陸は野球部をやめて、音楽一本に絞って頑張っているようだ。
「おー。翔と陸君。どしたん?一応ウクレレは教え終わったけど」と桜。
「最近はベースの亜衣さんからも教えてもらっていて。ハンマリング・オンとプリング・オフとスライドも教えてもらいました」と翔。
「スライドはウクレレでやってもエレキ・ギターみたいには伸びんやろ音が」
「将来エレキ・ウクレレになった時の事を考えているんです。アサミ先輩が言ってたじゃないですか。ウクレレエレキ化計画って」
泉が言う。「あー。そんな事も言っとったねぇ。ところでハンマリングとかプリングって何?」
翔が答える。「ハンマリング・オンは、左手の人差し指で押さえて右手で弾いてから、左手の中指と薬指をタッピングするように置くと音が鳴るってやつですね。プリング・オフは逆に薬指とか中指を外しながら引っ掛けて弾くと音が鳴るんです」
桜が言う。「ま、基本中の基本やね。と言っても私もクラシックギターは初歩の初歩をやりやるけど」
泉が口を挟む。「それもエレキで。2度半下げたナチュラル・チューニングで転調したので弾きやるんやで」
「でも『禁じられた遊び』(愛のロマンス)は弾いておくと、ナチュラルでも弾けてええんやよねー」
「え?先輩、パーフェクト4thじゃないんですか?」と翔。
「これからは時々ナチュラルも使っていくんやよ。私も進歩せねば。いや、進化かな」
「桜先輩カッコいいー!」
「泉ちゃん。新曲作るで。夏ライブまでに」と桜。
「ええー?ホンマに?今までの曲じゃアカンの?」と泉。
「うん。苦労した方がライブは楽しいで」
「あのさー。3曲やるやんか?」
「うん」
「その内の1曲はアドリブ勝負に、せぇへん?一発勝負」
「うーん。それも面白いかもね」ニヤリとする桜。
「そうやろー。一発勝負で何が出るか分からんの面白いで。絶対やろう」と泉がはしゃいだ。
「本当にスゴイですね」と陸が、うなづいた。