7月。もう少しで心踊る夏休みだ。図書室で練習している桜と泉。
桜のリズム練習は5連符に入った。カオシレーターのバスドラムに合わせていく。バスドラムの4分音符2つ分で、桜のメロディは5つ入る。最初は「ありさんが」×4「あるいてる」×4などと5文字の言葉をバスドラム2つ分に合わせて喋る。それに慣れると、ギターのタッピングで両手を使って5連符を弾く。さらに今はメロディで弾けるようにまでリズム感を鍛えた。
「ふー。」桜がため息をつく。
「大丈夫?桜ちゃん?」と泉が読んでいる本から顔を上げて言った。
「中々キツいわ。これと6連と7連までやらなアカンよね」
「6連は8分3連と同じで、8連になると16分音符やね」
「1学期中には、何(なん)とか7連符まで行けると思うけど」
杏が図書室にやって来た。「おおー。桜ちゃん。さっき、廊下で聞いたけど、5連符やっとったん?」
「杏ちゃん。そうなんやよ。超難しいで」
「そこまでリズム鍛えやるとは思わんかった…って泉ちゃん、本読みやるやん!」
「たまには図書部の部活もせんとね」と泉。
「何読みやるん?」と杏。
「ファーブル昆虫記」と泉。
「へぇー。面白いん?」
「まあまあ、面白い」
「昆虫の動きを音楽で表現するとか、面白いかもね」
「そこまでいくと、すごい発想力が要(い)りそうやで、杏ちゃん」と桜。
「うん。それがテクノ・アッシャーのこれからの課題、なんちゃって」と杏。
「そうや。杏ちゃん、今から7、8月の夏休み中に『禁じられた遊び』(愛のロマンス)を覚えたいんやけど出来るかな?」
「あー。桜ちゃんぐらい弾けたら、わりと簡単やで。『クラシックギター初歩の初歩』っていう楽譜持っとるから貸しといたるわ」
「おー。さすが杏ちゃんやわー。助かるゥー」桜は、とても喜んだ。