図書室。ついにテクノ・アッシャーのアッシャーの部分、奇怪な旋律を奏でるという部分の研究に至る桜。
泉のカオシレーターに付いていたスケール・リストを書き写して自分で色んなスケールを練習したのだ。杏がスパニッシュ・エイト・スケールを使って弾いていたのもヒントになっている。
今日使うのはRG2。インドのラーガというスケールの2番だ。
「ブロークン・ビーツっていうのやってみるね。お母さんのケータイでYouTube見たんよ。そしたら、中々カッコええんやで」と泉。
「うん。泉とは、もう、文化祭までやしね。思いっきりやろう」
「え?桜ちゃん木高(もっこう)行かんの?」
「うん。私の頭じゃ紀南(きなん)しか行けんよ」
「じゃあ、もう7月から10月いっぱいで解散かァ」
「うん。ケンカもしたけど、泉ちゃんのカオシレーターともあと4ヶ月か。11月はじめには文化祭やもんね」
ブロークン・ビーツをやりはじめた。BPM125。スケールRG2。音色はDRUMで色んなパーカッションを重ねていき、S.E.を入れていく。BASSも頭に入れていく。
ジャー、ジャッ、ジャッカ、ジャー。桜もギターで2弦コードをかき鳴らす。ドミとレ♭ファと平行コードだ。カオシレーターでシタールが入る。そのソロに合わせてオブリガート的にギターが入ってくる。初めてテクノ・アッシャーの名前にふさわしい演奏が出来たと桜は思った。泉もノリノリでシタール音色を奏でまくる。
「この曲のタイトルは『テクノ・アッシャー』にせえへん?」と桜。
「ええねー」と泉。
窓の外は夏の空に雲が浮かんでいた。