藤岡幸夫がシャンドスと契約して、吉松隆の交響曲録音、そして新作の委嘱を始めたのはもう四半世紀も前か。2004年の《ケンタウロス・ユニット》他の録音でプロジェクトは終わってしまったようで、交響曲は第5まで録音された。そして2013年の第6交響曲はDenonに。前年2012年には大河ドラマの音楽を担当していて燃え尽きたのかわからないが、以後、新作の作曲は非常に乏しくなってしまった。

 吉松隆を最初に聴いたのは確か《朱鷺によせる哀歌》ではなく、ギター協奏曲《天満効果》だった。民音の音楽祭で《カムイチカプ交響曲》が初演され、CDになった時は狂喜したが、大風呂敷を広げすぎて、美しいところはいっぱいなのだが、なんだかまとまらず、散乱していく感じが、なんだかなあ。5つの楽章それぞれが外に拡大し、しかも5つとも別方向を向いているというか。まあ、各楽章を異なる性質にというコンセプトなのだろうが。

 この曲の初演時に5歳だった原田慶太楼、こうした新しい世代が、吉松隆の解釈に乗り出す。それでも散漫な感じは変わらないのだが、シリーズは続いて欲しい。第2《地球にて》は2002年に四楽章版に拡張されているようなのだが、それもまだ録音がない。続いて第3が出たところだが、交響曲全集に発展して、その勢いで第7交響曲を書いてくれることを望む。まあ、ご本人も第7はまだかと言われ続けて辛いようだが。

 併録は《チカプ》。