ロウヴァリという指揮者、今やお気に入りの一人。ディスクでは後期ロマン派から近代あたりの実力しかまだわからないけれど。YouTubeではタンペレ・フィルとのベートーヴェンが聴ける。

 フィルハーモニア管のレーベルから、リヒャルト・シュトラウス集2枚組。《ドン・ファン》《アルプス交響曲》《ツァラトゥストラかく語りき》《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》という選曲。

 2021年のシーズンから主席指揮者になったロウヴァリが就任記念のコンサートで取り上げた《アルプス交響曲》と《ツァラトゥストラかく語りき》に、後日の演奏会の《ドン・ファン》《ティル》を加えたもの。

 シュトラウスの音楽には粗野なバイエルン人的なオケを鳴らしまくる精力的な部分と、ヴィーンに長らく住んでいた後天的ヴィーン子のメロウな歌の両面があるが、ロウヴァリは後者の方に若干軸足があるような気がする。あの勢力的な《ドン・ファン》ですら、ポルタメントを聴かせて歌い上げる部分の美しさの方が目立つ。だから《アルプル交響曲》は殊にいい。