メンケマイアーというヴィオリストはバロックが好きみたい。本盤はヴィヴァルディ、タルティーニ、ロッラ、パガニーニというラインナップなので、バロックから初期古典派まで食い込んでいるのだけれど。

 ヴィヴァルディはあんなに作品を書いたのに、ヴィオラ・ダモーレ協奏曲はあってもヴィオラ協奏曲はない。だからといってヴィオラに編曲して弾いたディスクというのも多くない。《四季》を全曲ヴィオラで演奏したカーペンター盤が筆頭だろうが、メンケマイアーはまずファゴット協奏曲をヴィオラで弾く。ト短調、RV.495。低音を生かしたアダプテーションでカッコいい。

 つなぎにヴァイオリン協奏曲《ムガール大帝》のカデンツァをおいて、カデンツァからコーダに入るかのように次のヴィヴァルディ、今度はチェロ協奏曲に突入する。これもト短調。RV.416。フレーズが意外なファゴット協奏曲と比べて、チェロ協奏曲はやはり弦楽のために書かれているのだと思う。

 次のつなぎはロッラの《アルペッジョ》。テオルボとの二重奏。

 タルティーニの《運弓の技法》より《コレッリの作品5第10のガヴォットによる変奏曲》で古雅な世界に遊ぶ。

 またもやロッラでヴィオラ・ソロ曲《オテロのロマンス》。このオテロはロッシーニの《オテロ》。《6 Pezzi di Murie Ridott》からとあるが、Murie Ridottの意味がわからない。

 メイン曲のように据えられているのが、パガニーニの《大型ヴィオラと管弦楽のためのソナタ》。これも仕掛けがあって、カデンツァにあろうことかシャリーノの《無伴奏ヴィオラのための3つの華麗な夜想曲》から1曲が嵌め込まれているのだ。しかしこれが違和感ない。パガニーニのフラジオレットなどの技法がシャリーノの特殊奏法を先取りしているからだ。

 寄せ集めのようでいて、上手に流れが作られているディスクである。