ピアノ音楽はちょっと苦手。とりわけロマン派のピアノ音楽。
 しかしいっそのこと徹底的に技巧的になって、楽譜真っ黒、両手で指が20本必要みたいな曲(ゴドフスキのショパン編曲とか、メトネルとか)になると妙に割り切って聴けてしまうのだ。

 そういう曲4曲をそれぞれの時代の楽器で弾いたメルニコフの興味深いディスク。シューベルト : さすらい人幻想曲 、ショパン : 12の練習曲、リスト : ドン・ジョヴァンニの回想、ストラヴィンスキイ : ペトルーシュカからの三章というラインナップで、ピアノはグラーフ、エラール、ベーゼンドルファー、スタインウェイとくる。
 ピアノフォルテだとシューベルトはより大変そうだし、エラールだとまさに苦手なショパンがとても聴きやすい。さすがにベーゼンドルファーともなると、もはや現代ピアノと大きく変わらないけど。いまだって、スタインウェイを嫌ってベーゼンドルファーを好む奏者とかもいるんじゃないかしら。
 楚々手ストラヴィンスキイまで聴き進むと、現代ピアノがなにを求め、なにを失ってきたのか白日の下にさらされるという趣向となっている。