「なぁ、楸瑛。これが何か知ってるか? 女が使うものらしいんだが・・首輪や帯止めでもなさそうだし」
「楸瑛なら、女人のことにも長けているから、多分、知っているだろうと、余も考えたのだ」
絳攸が女に疎いということは知っていたが、それにしても、それにしても!
主上、アンタは、少しは女遊びだってしてただろうに、なんだってこんなところで天然かましてるんだ!?
藍楸瑛は、翡翠や琥珀の珠を丈夫な糸で連ねた不思議な道具を手にしている友人と、その隣でニコニコしている君主を前にして、一体どう対処したものか、途方に暮れた。
からかえば、李絳攸のプライドを傷つけるだろうし、真顔で諭し教えてやっても、やはり彼らの無知を指摘することになって傷つくだろう。かといって、ここで自分がせき止めなければ、彼らはもっと辱められ、辛い目に遭うだろう・・というより、そんなものを神聖なる宮中で持ち歩かれては、公害以外の何ものでもない!
「お言葉ですが主上、これはどこで、ご入手なさったんですか?」
「どこでと言われても・・秀麗の寝台の下に見慣れぬ箱があったのだ。秀麗の暗殺を企てる曲者の仕業かもしれぬから、こっそり中身を抜いてきたのだ」
「こっ・・・紅貴妃の寝台にっ!?」
「む? 楸瑛、顔色が変わったぞ。どうしたのだ? やはりこれは何か、とんでもないモノらしいな。よし、楸瑛が答えてくれないのなら、邵可に尋ねてこよう」
「まっ・・・待て待て待て・・じゃない、お待ちください主上っ!」
【後書き】ライトノベルズで、NHKアニメにもなっている『彩雲国物語』の秀麗中心アンソロジーに、漫画と小説を寄稿する予定です・・・・話の筋が大幅にズレそうなので、没にしたエピソードをちょこっとだけこちらで披露。
天然ボケなふたりが手にしている道具とは、当然、オトナのオモチャです。秀麗が房中術を珠翠に習っている・・・という捏造設定のストーリーなのですが、秀麗が実際に使っているのではなく単なる教材で、大騒ぎした男性陣が恥ずかしいやらホッとするやら・・・というオチになる予定でした。