ありがとう! この礼は何で等価交換すれば・・「ノックス×ロイ小説で」と即答されました。ああ、そうだね、最近書いてないよ、ノックス×ロイ・・仕事中、乙女エンビのデート未遂(&マルコーさんセクハラ?トーク)ネタを妄想してニヤニヤしながら作業してたのに・・ええ、書きます、書きますとも!
・・というわけで、本館・無能地帯に『5つのお題2nd』と称してアップした短編です(もちろん、あと4つも書きますよ・・いつか、は確約できませんが)。エッチシーンもないし、最近サンプル掲載がなかったので、こちらにも公開させていただきます。
■豪雨
酷い天候だった。
こんな日が続けば、例の人体実験ができずに、課題ばかりが徒らに溜まっていく。
いっそ雨の日でも使える錬金術を開発したらどうかねと、上の連中は言っているらしいが、それは理論的にも物理的にも無理だし、もし可能だとしても、人殺しのためにそんな研究をするなんてまっぴらごめんだ。
だから・・雨の中でも任務を言いつけられる下士官らには悪いが、ロイ自身は割にのんきに、ぷらぷらしながら過ごしていた。
だから、いかにもヒマそうに見えたのだろう。
軍帽に合羽代わりのコートを羽織った姿で、雨に打たれながら(ヒューズが見たら「風邪をひくだろう」と口喧しく叱るに違いないが)、ぼんやりと仮設のゲートにもたれていたら、中央から物資を届けにきたトラックがゲートをくぐり、そこに民間人の女が乗っていたのを見つけた。
その中年女はトラックから下ろしてもらうと、鮮やかな赤い傘を広げ・・そんな目立つ色の傘なんか、もし敵の狙撃兵がいたら、まっさきに撃たれるだろうに、これだから素人は・・そう思ってぼんやり眺めていると、女は誰に話しかけたものかと迷っている様子だったのが、ふとロイに気付いて歩み寄ってきた。
よせやい、なんかあったら真っ先に巻き込まれる・・と、逃げ腰になったが、誰か上官の嫁さんかもしれないから、むげにもできない。
「あの・・第三医務班って所に行きたいんですが・・主人がいるもので」
「ああ、医務班・・こっちですが?」
入院している負傷兵の妻か母親なんだろうか? ここは最前線からはやや離れた、いわば後方部隊であるため、そういう見舞客がたまに訪れる。
ぼんやりと「誰か偉い人でも居たっけか」などと考えながら、それでも一応、エスコートするようにして、幕舎に向かう。
失礼ですが、お名前は・・と尋ねようとした矢先、その女が「ああ、ヨアン」と呼び掛けて、ロイを置いて走り出した。
その先にいたのは・・ノックス医師だった。
ヨアン? 今、ヨアンと呼びかけていたよな・・ノックス先生のファーストネームは、ヨアンというのか?
今まで知らなかった・・知らないことを、不思議とも不自然だとも考えたことはなかった。こっちからは「先生」と呼び掛け、ボウズとかクソガキとか呼ばれて・・それでじゅうぶんだったから。
・・私は・・先生の名前も知らなかったのか。その事実に気付いて、愕然とする。
あんなに親しくしていたつもりだったのに。
「バーバラじゃないか。どうした?」
「どうしたじゃないわ。こないだの休暇の時も、帰ってこなかったじゃないの」
「休暇といっても、中央に戻れるほどまとめて取れた訳じゃない・・忙しいんだ。その前は帰ったぞ」
「とんぼ返りでね」
「だからって、職場にまで押し掛けてくるやつがあるか」
「だって、ヨアン・・」
いつも仏頂面で斜に構えているノックスが、山の神相手にたじたじになっているのが珍しいのか、ひとりふたりと立ち止まる者が現れ、それに気付いたノックスが狼狽しながら「とりあえず、こっちに」と、妻の肩を抱くようにして促した。やや離れたところに、ロイが唖然として立っているのは目に入っていないらしい。
赤い傘は、ノックス医師の上にも差しかけられ、ふたりの背中がゆっくりと遠ざかっていく。
「ヨアン・・さん」
ロイは小声で呟いてみた。多分、そう呼ぶことは許してもらえない呼び名を。
雨の音が、そんなロイの声を容赦なくかき消してしまった。
※ノックスの名「ヨアン」と妻の名「バーバラ」は帝斗きさとによる捏造です。原作にて本名が判明次第、差し換えさせて頂きます。予めご了承ください。