ある新聞が北海道紀行を連載し、JR北海道の駅舎などを撮影した写真をその紀行文に添付したところ、当のJR北海道から「撮影日の10日前までに申請が欲しいが、今回はなかったのでデジタル写真を削除して欲しい」旨の要請を受けたそうです。

一般の鉄道マニアが即日で記事の写真を撮ってアップしても何も言われないのに、こうした記事には「内規」を適用して記事に難癖を付けてくるのは不自然で、記事の筆者が鉄道事情に詳しい後輩に聞いたところ、この筆者が「サービス精神に欠けるとかダイヤ編成が悪いとか本当のことを書くからですよ」と言われたそうです。

要するに会社批判への意趣返し。

実はこうした撮影に許可を要する法的根拠は薄弱なのだそうです。

 

鉄道会社はどこでも、少しでも多くの乗客を獲得すべく何らかの経営努力をしていますが、どう工夫改善しても批判は免れない。

そもそも限られた範囲での移動しかできず、すべての利用客に便利な運営というのはそもそも難しいからです。

それでもダイヤ改正を何度も試みたり、列車を新しくしたりと、少しでも快適に利用できるよう何らかの工夫はするはずです。

 

北海道の場合はそもそも土地が広く人口密度の極端に低い地域を結んでいるため、鉄道の利用客が初めから少ないというハンディは背負っています。

そして本数が少ないため自家用車で移動するのが当たり前になっている。

それが過疎化や鉄道の減便などに拍車を掛けています。

 

しかし国鉄の分割民営化後、北海道と四国と九州は1社で単独でまかなっていくのが困難なため、経営安定基金を国から交付され、自助努力で独立を果たしたJR九州はそれによって基金の交付を受けなくなりました。

「ゆふいんの森」や「七つ星」などの高級感あふれるな特別列車を開発することで九州という土地自体も好きになって欲しいし、当然乗って楽しい列車を開発してどんどん利用客を増やす。

そうした経営努力が実って上場会社として出発することができたのです。

 

北海道と九州を同列に扱う事はできませんし、北海道でも特別列車はいくつか運行されて人気は博しています。

しかし永く続かない。

人を呼び込むことに明らかに失敗しています。

また日常の足としても使い勝手が悪いのは事実で、それはとりもなおさず連載の筆者が批判したように、ダイヤ編成のまずさやサービス精神の欠如に起因しているのは間違いないでしょう。

 

そうした点を批判されたから記事を削除しろというのは、自分たちの経営のまずさを認めたがらない閉鎖的な姿勢にあるのは間違いなく、乗客の便も考えずただ慢性的に列車を動かしているだけと思われても致し方ないでしょう。

分割民営化されてむしろやりたい放題なのかも知れません。

簡単に減便や廃線を打ち出すのではなく、赤字を少しでも減らすために設備は残して売り上げを伸ばすことを考えないと、北海道の鉄道の先行きは先細る一方です。

自家用車でなく列車を使ってどこかに通えるような快適な列車を開発するとか、行楽用には特別な列車を走らせるとか、北海道独自の特徴を活かした運用の仕方はいくらでもあるはずです。

 

どうやらJR北海道は乗客の方を向いて商売を行っていないようで、もっと魅力ある列車の開発に取り組むとか他業種とタイアップして観光客を呼び込むとか、そういう工夫をした方が良さそうです。

失敗してもいいからとにかくいろいろチャレンジしてみる。

本人たちが失敗と思い込んでいても利用客から好評を博すものがあればそれは維持する。

そういった、外部との関係において自身を見直す機会にも恵まれます。

 

鉄道はインフラですから、ある程度の公共を維持して多少の赤字が出てもそちらを優先するだけの使命感と度量が必要ですね。

そうして沿線住民との関わりを持って住民に支えてもらう関係を築く方が、長い目で見れば会社の存続につながります。

「乗りたくなる鉄道」は地道な作業から生まれます。

既存の鉄道をまず総点検し、利用動向を調べ、日常の足をしっかり固め、それと並行して遠くから人を呼び込める列車を開発する。

そうやって「ファン」を増やすことが第一歩です。