と聞かれると、たいていの人は自分の青春時代に

夢中で聴いた曲を答えるでしょう。

私にも勿論あります。

好きな曲、というより好きなアーティストと聞かれれば、

ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、

アース・ウィンド&ファイアー

が私の青春時代では「双璧」ですね。

1曲に絞れと言われるとなかなか難しいです。

 

ですが、私の場合の答えはそれだけでなくもう1通りあります。

それは「今好きな曲」「今好きなアーティスト」が別にいると言うことです。

今だったら、ニッケルバック、ブルーノ・マーズ、ジョン・レジェンド、

アリシア・キーズ、SZA、ヴィンテージ・トラブルあたりでしょうか。

中学生の頃、ブラックミュージックから洋楽の世界に入った影響で、

今でもブラックミュージック系のアーティストにお気に入りが多いです。

 

私のように50代も半ばになると、

青春時代というと1970年代、80年代あたりになりますので、

その頃のヒット曲をお気に入りに挙げるケースが多いですね。

そこに「あの頃は楽しかった」「あの頃は良かった」という感想が

付け足されることもよくありますが、

「じゃあ、今は?」と聞くと

「知らない」「ついて行けない」という答えが返ってくることもよくあります。

 

好みの問題なので昔を懐かしめるだけでも十分楽しいと思いますし、

他人があれこれ介入すべき性質の話でもないと思います。

でも「それだけじゃつまらなくないかなあ?」というのが

私の率直な感想です。

今の曲は、文章で言う「起承転結」に相当するような

決まった展開のパターンがなくなり、

どこで始まってどこで終わるのか解らないような

不思議な展開の曲が珍しくありません。

「不思議」と思っている私自身が既に

「昔」を基準にしていることはおわかりいただけると思いますが、

それを拒絶するかしないかで

「今」の曲を受け入れるか受け入れないかが決まるような気がするのです。

 

私自身もブラックミュージック系が好きと言いつつ、

ラップやヒップホップはいまいちついて行きにくいところがあります。

音程をきちんととってもらわないと「音」楽になっていないような

違和感があり、純然たるラップは今でも敬遠することが多いです。

ただ、ラッパーが、ラッパーでない歌手をフィーチャリングしたり、

その逆であったりすれば、いい曲だなと思えば没入もできます。

最近の曲では映画「ブラックパンサー」の挿入歌

「オール・ザ・スターズ」(ラッパーのケンドリック・ラマーと

SZAのコンビで歌われています)などは

今私がハマっている曲の一つです。

 

パーカッションにしても、昔のようなドラムスばかりではなく、

電子楽器(正式名称が解らないのでこう言うほかないのですが)で

「チ・チ・チ・チ・チ・・・」とまるで時計の秒針のような細かいリズムを刻む

パーカッションがここ1~2年の流行のようで、00年代とはまた違った

リズムの刻み方があるようです。

 

80年代の曲が今でも愛され続けているのは、

一つには口ずさみやすい、あるいは親しみやすいメロディが多かったこと、

MTVの急速な普及により、曲や音の良さだけでなく、

ビジュアル的な良さも同時に評価されるようになったこと、

などが要因ではないでしょうか。

 

でも今は当時以上にビジュアル面が重視されている曲も多いですし、

ミュージックビデオの制作を念頭にしているのか、

曲をフェードアウトで終わらせるよりも、

いわば強制終了的な終わらせ方で突然ブツッと切るような曲が

多数派を占めるようになりました。

「他にもっと自然な終わらせ方があるだろうに」と思わせる曲も結構あり、

そのあたりも私が「昔」型人間である証拠なのかもしれません。

 

話があちこち飛んでいますが、

言いたいことは「青春時代の曲」も勿論素晴らしいし、

今は今でいい曲がたくさんあるし、

どちらもそれなりの良さがあるのだ、ということです。

「今」の曲を聴いてその曲に似た曲を過去から探すこともありますし、

人によっては今が80年代の再来などと評する向きもありますから、

時代背景的に何か共通するところがあるのかもしれません。

 

「今」と「昔」を行ったり来たりしながら両方を楽しむ、

どちらもそれなりの魅力があるのだ、

だからどっちがいいかではなく、

どっちもいいのだ、というスタンスで臨みたい、

というのが私個人の楽しみ方です。

 

先日テレビのCSチャンネルミュージック・エアで

「ジュールズ倶楽部」(BBCのスタジオライブ番組)を

見ていたら、ゲストのK.D.ラング(カナダの女性シンガーソングライター)が

「私は昔の曲も今の曲も好き。今の曲は私を成長させてくれるから」

と語っていました。

プロの歌手でも刺激を求めてアンテナを広く張っていると

こういうコメントが自然に出てくるんですね。

 

繰り返しになりますが、「好み」の問題なので

「昔は良かった」という考え方を私は否定しません。

今見てきたように、私の中にも「今」の傾向に

抵抗を感じる部分もあるので、

私自身も部分的には「昔は良かった」と思いながら

「今」の曲を聴いている面が厳然としてあるのです。

でも、「今」は「昔」をベースに成り立っていて、

今を聞くことで昔の良さを改めて認識するというのも

一つの知り方です。

今を拒絶して「昔」だけ良かったというのは、

心の中で時間が止まってしまったようで、

なにか寂しい気がするのです。

年齢を重ねても青春時代の若々しさ、

柔軟さ、器の広さを持って「今」を

楽しめたら、人生幅が広がるだろうな、

と、音楽を通じて感じる今日この頃です。