2022年読書47冊目は吉村 昭 著
「戦艦武蔵」
あらすじは
日本帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の戦艦「武蔵」――厖大な人命と物資をただ浪費するために、人間が狂気的なエネルギーを注いだ戦争の本質とは何か?
非論理的“愚行"に驀進した“人間"の内部にひそむ奇怪さとはどういうものか?
本書は戦争の神話的象徴である「武蔵」の極秘の建造から壮絶な終焉までを克明に綴り、壮大な劇の全貌を明らかにした記録文学の大作である。
(Amazonより)
感想は
読み始めてすぐに、「ん?読んだことあるぞ!これ」と思いました。
kindleのライブラリーを見たらやはり既読でした。
しかし、記憶もだいぶ薄れたし、何より買ってしまったので読まないわけにはいきません。
吉村昭さんの作品は好んで読みます。
特に盛り上がりや劇的な結末はありませんが、淡々と情景が目に浮かぶ描写が好きです。
この「戦艦武蔵」は概略設計の段階で長崎の三菱重工業が海軍から受注する段階から描かれています。
「世の中に武蔵の建造を悟られるな!」が至上命令です。
一般市民はもちろん、外国人には秘中の秘です。
長崎の三菱重工の造船所は山に囲まれた湾にあるので市内のあちらこちら見ることが出来ます。
長崎観光でおなじみのグラバー邸からはベストビュー!です。
こんな立地で建造を悟られるなって無理難題ですが、当時の三菱重工社員は「棕櫚(しゅろ」のムシロで目隠しをするため日本全国から棕櫚を買い占めるところから武蔵の建造物語が始まります。
棕櫚の木は九州ではポピュラーで、あちらこちらに生えています。
棕櫚の皮はよく海岸で遊んでいると漂着していました。
この繊維で武蔵を隠すための膨大なムシロを作ります。
膨大な数を外注に出すと不審に思われるので、三菱重工業で機械を買って自社生産したようです。
大和もそうですが、武蔵もあまり活躍の場がないまま沈没します。
大型戦艦の時代は終わり飛行機の時代と移り変わっていました。
巨額の費用を費やし不沈艦と言われていたので、沈没した武蔵の乗務員がいることを悟られると日本全体の士気が下がると言うことで、生き残った武蔵乗務員は人目につかないように転属させられ、生き残る見込みが少ない作戦に従事させられます。
大和・武蔵と同型艦を4隻造る計画でした。
1番艦:大和、2番艦:武蔵、3番艦:信濃(戦艦から空母に改造)、4番艦:途中で製造中止
3番艦の空母信濃も横須賀から広島:呉に向かう途中、初出航から17時間で攻撃を受け沈没しました。
大和、武蔵の巨大戦艦構想は当時から多くの人が時代遅れだと気づいていたのでしょうが、もし、大和・武蔵も空母として竣工していたら、もう少し違った降伏の仕方になっていたのでしょうか?
退 屈 し な い 度:★★★☆☆
人 に 勧 め る 度:★★★☆☆
数年後に見返す度:★★★☆☆