歌舞伎のせりふ集② | 紀州屋良五郎 ☆大衆演劇・上方芸能☆情報系ブログ

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大衆演劇のお勉強のつもりです

白浪五人男 (稲瀬川勢ぞろいの場)


日本駄右衛門 「問われて名乗るも烏滸(おこ)がましいが、生まれは遠州浜松在、十四の歳から親に離れ、身の生業(なりわい)も白浪の、沖も越したる夜働き、盗みはするが非道はせず、人に情けを掛川から、金谷をかけて宿ねで義賊と噂、高札のまわる配符のたらい越し、危ねえその身の境涯も、最早や四十に、人間の定めは僅か五十年、六十余州に隠れのねえ、賊徒の張本、日本駄右衛門」


弁天小僧 「扨てその次は江の島の、岩本院の稚児上がり、ふだん着馴れし振り袖から、 髪も島田に由比が浜、打ち込む浪にしっぽりと女に化けて美人局、油断のならねえ小娘も、小袋坂に身の破れ、悪い浮名も龍の口、土の牢へも二度三度、だんだんくぐる鳥居数、八幡様の氏子にて、鎌倉無宿と肩 書きも、島に育ってその名せえ、弁天小僧菊之助」


忠信利平 「つづいて後に控えしは、月の武蔵の江戸育ち、餓鬼のころから手くせが悪く、抜け参りからぐれ出して、旅を稼ぎに西国を回って首尾も吉野山。まぶな仕事を大峰に、足をとめたる奈良と京。碁打ちといって寺々や、豪家に入り込み盗んだる金が御獄の罪科(つみとが)は、毛抜きの塔の二重三重、重なる悪事に高飛びなし、後を隠せし判官の、お名前騙りの忠信利平」


赤星十三郎 「そのまた次に連なるは、以前は 武家の中小姓、故主のために切り取りも、鋭き刃の腰越えや、砥紙(とかみ)が原に 身の錆を、研ぎ直しても抜けかねる、盗み心の深縁、柳の都谷七郷(やつしちごう)、花水橋の斬り取りから、今牛若と名も高く、忍ぶ姿も人の目に月影が谷、御輿が岳、今日ぞ命の明け方に、消ゆる間近き星月夜、その名も赤星十三郎」


南郷力丸 「さてどん尻に控えしは、潮風荒き小ゆるぎの、磯馴れ松の曲り成り、人と成ったる浜育ち、仁義の道も白川の、夜舟へ乗り込む船盗人。漁にきらめく稲妻の、白刃でおどす人殺し、背負って立たれぬ罪科は、その身に重き虎が石、悪事千里というからは、どうで仕舞は木の空と、覚悟はかねて鴫(しぎ)立つ沢、しかし哀れは身に知らぬ、念仏嫌れェな南郷力丸」


日本駄右衛門 「五つ連れ立つ雁金の、五人男にかたどって……

弁天小僧菊之助 「案に相違の顔ぶれは、誰白浪の五人連れ……

忠信利平 「その名もとどろく雷の、音にひびきし、われわれは……

赤星十三郎 「千人あまりのその中で、極印打った首領(かしら)分」

南郷力丸 「大えが布袋(ほてい)か盗人の、腹は大きいきもっ玉……

「日本駄右衛門 「ならば手柄に……

五人 「搦めてみろ」

      

           

与話情浮名横櫛 (源冶店)


与三郎 「しがねえ恋の情が仇。命の綱の切れたのをどう取り止めてか木更津から、めぐる月日も三年越し、江戸の親には勘当受け、よんどころなく鎌倉の、谷七郷は食いつめても、面に受けたる看板の、きずが物怪の幸いに、斬られの与三と異名をとり、押し借りゆすりも習おうにも馴れた時代の源冶店、その白化けか黒塀いに格子造りの囲い物、死んだと思ったお富たァ、お釈迦さまでも気がつくめえ。よくもお主や、達者でいたなあ」


続く