歌舞伎のせりふ集① | 紀州屋良五郎 ☆大衆演劇・上方芸能☆情報系ブログ

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大衆演劇のお勉強のつもりです

                

三人吉三巴白浪 (大川端の場)


お嬢 「月も朧に白雲の、篝霞む春の空、冷てえ風もほろ酔いに、心持よくうかうかと浮かれ鳥の唯一羽、塒(ねぐら)に帰る川端で、竿の雫か濡れ手で粟、思いがけなく手に入るる百両……ほんに今夜は節分か、西の海より川の中、落ちた夜鷹は厄落とし、豆沢山に一文の銭と違って金包み、こいつァ初春から縁起がいいわえ」

お坊 「モシ姐さん、ちょっと待っておくんなせえ」

お嬢 「はい、何ぞ御用でござりまするか」

お坊 「用があるから呼んだのさ」

お嬢 「何の用かは存じませぬが、私も急な……

お坊 「用もあろうが手間はとらさぬ、待てといったら待ちなせえ」

お嬢 「して、私への御用は」

お坊 「用というなア外でもねえ。浪人ながら二腰手挟む武士が手を下げ、そなたへ無心。どうぞ貸して貰いたい。」

お嬢 「おなごを捕えてお侍が、貸せとおっしゃるその品は……

お坊 「濡れ手で粟の百両を……

お嬢 「ええッ」

お坊 「見かけて頼む、貸して下せえ」

      

      

      

      

白浪五人男 (雪下浜松屋の場) 


弁天小僧菊之助 「知らざァいって聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残した盗人の、種はつきなし七里が浜。

その白浪の夜働き、以前をいやあ江の島で、年季づとめの稚児が淵、百味でさらす蒔銭をあてに小皿の一文字、百が二百と賽銭のくすね銭せえ段々に、悪事はのぼる上の宮、岩本院で講中の、枕探しも度重なり、お手長講の札つきに、とうとう、島を追い出され、それから若衆の美人局(つつもたせ)ここやかしこの寺島で、小耳に聞いた音羽屋の、似ぬ声色で小ゆすり騙り、名せえゆかりの弁天小僧、菊之助たァ、おれがことだ。」

南郷力丸 「その相ずりの尻押しは、富士見の間の向うに見る、大磯小磯小田原かけ、生まれが漁師の浪の上、沖にかかった元船の、その船玉の毒賽をぽんと打ち込む捨て猫、船丁半の側中を、ひっさらってくる利得とり、板子一枚その下は、地獄と名に呼ぶ暗闇も、明るくなって度胸がすわり、櫓を押しがりやぶったくり、船足重き凶状に、昨日は東今日は西、居どころ定めぬ南郷力丸、面ァ見知って貰いやしょう」

      


続く