恩蔵直人(著)「コモディティ化市場のマーケティング論理」を読了。
コモディティ化市場のマーケティング論理/有斐閣

コモディティ化市場のマーケティング論理/有斐閣

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- 非常に興味深いマーケティング本です。





- 従来のマーケティングは、いかにコモディティ化市場から逃れるかという点に主眼を置いているように思います。が、本書は、コモディティ化した市場にも、十分なビジネスチャンスがあるし、コモディティ化している市場は十分な規模がある安定市場なのだから、そこでうまくやることでむしろ成功が近づく、という点が出発点になっています。
- 具体的な企業名、商品名をあげて記載されているので、非常に説得力があります。
- 正直、目からウロコでした。

- 自分のマーケティングに関する既成概念を壊してくれた、啓蒙の書になりました。
- 最近の企業行動を見ると、コモディティ化した成熟市場への参入を余儀なくされている。その通りだと思います。市場自体が成長することを前提としていた時代ではなくなりました。私たちは、今、存在するかどうかもわからないブルーオーシャンを求めるのではなく、成熟市場でいかに戦うか、ということに軸足を移すべきなのかもしれないと思いました。逆に言えば、いかに戦略的にそういう動きができるか、ということが企業の命運を分けていく時代ということなのかもしれません。
- 成熟市場で戦うにはどうすればよいのか? 今まで、特に日本企業は、製品の機能の差別化ということを一生懸命やってきました。が、その機能差は、メーカーにとっては多大なコストと労力をかけた非常に難しい技術であるにもかかわらず、お客様にとっては、ほんの少しの違いでしかない、ということが多々あります。もしくは、こんな機能欲しくないんだけど、ということも往々としてあります。
- 消費者にとっての違い(メーカーにとっての差別化要因)は、いまやデザインだったりサポートの心地よさだったり、(VE用語を使えば)製品の基本機能以外の魅力機能部分にある、ということを、メーカーで製品企画をする人や製品を開発する現場はもっと認識する必要がありますね。製品に組み込むことすら必須ではなく、外付けでサービスとして提供した方が合理的だったりもします。別の視点から見ると、日本が持っている品質へのこだわりや損をしてでもトラブルに対応するという真摯な姿勢というものが、グローバル展開する上でも改めて強みになり得る、ということを示唆しているのではないか、と思いました。

- もうひとつ印象に残った論点は、非プロフィット・ゾーンの存在です。金を使うだけで利益をもたらさない非プロフィット・ゾーンの存在について、私たちは、それをできる限り排除する、という方向で努力してきたと思います。製品のセグメントを小さく切って業績管理し、赤字は悪との考えの下でそれをいかになくすかということに注力してきました。
- それ自体が間違いではないとしても、非プロフィット・ゾーンが他のビジネスをドラッグしてくれる(ちょっとイメージが違うのですが、一般にはシナジー効果があるという表現の方が馴染みがあるかもしれません)のであれば、その儲からない事業の存在価値がある、という考え方を経営に取り入れるべきではないか、と思います。ただし、モラールハザードにつながる危険もありますので、儲からない事業の存在価値を組織内で正しく評価するプロセスや処遇制度も含めて考える必要はありそうです。

- 利益モデルについても論じられています。本書の利益モデルがすべてを包含してはいないと思いますし、ソリューションで価値を提供するとか、インストールベースで付属物で利益を確保するとか、の利益モデルはあまり目新しくありません。ただし、どうやって儲けるのか、ということを既存のビジネスモデルに固執せずに考えつづけることは、企業人として忘れてはならない姿勢であることは間違いないと思います。

- ところで、ソリューションビジネスモデルの事例として、エネルギー利用の効率化をサービス(顧客価値)として提供しお客様とベネフィット(利益)をシェアする、日立製作所のHDRIVEビジネスが紹介されていました。2003年頃の事例(本書の初版は2007年)なのですが、すでに10年前から時代の流れを読んで様々な試みにチャレンジしている先輩方に感服致します。






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