エイドリアン・J・スライウォツキー著「ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか」を読みました。

ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか/エイドリアン・J・スライウォツキー

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会社の利益に貢献したい、停滞状態から脱する方法を知りたい、という欲求は、事業企画に携わっている人であれば、共通に思うことではないだろうか。本書は、そんな人のための本です。

物語によるコーチング形式で、利益を生み出すモデルが23種類紹介されています。
自社には、このモデルは適用できるのだろうか、など考えながら読みました。2002年12月に既に出版されていたのですね。ザ・ゴールの装丁と似ていたので、二番煎じの書籍かと思って、いままで手に取らなかったことを残念に思いました。

以下は、自分なりの解釈も交えての本書で紹介されている利益を生み出すモデルの紹介です。
最後に記載があるように、それぞれの利益モデルは相似/関連性があるものもありますが、利益モデルの引き出しをたくさん持っておいて、それを組み合わせてビジネス(=利益を出す事業)をすることができるようになりたいいと感じています。

(1) 顧客ソリューション利益モデル
・時間とエネルギーを注いで顧客を知り、その知識を顧客固有のソリューションの開発に活かすこと。短期の損失には目をつぶり長期の利益を実現する。
→ どちらかといえば、エンドのお客様と直接対応している事業部に適した戦略だと思いますが、システム事業に使っていただく製品開発を行い、N倍化していくパタンとしては該当するような気がします。

(2) 製品ピラミッド利益モデル
・顧客ピラミッド(価格適応性が異なる顧客のヒエラルキー)にあわせた品揃えをすることで、低価格帯商品は他社が市場シェアを奪うファイアーウォールとなり、最上位層の製品では、顧客に最上位の満足感を与えて高い利益を得る。
→ 製品のエディションによって、提供する機能を差異化する戦略が当てはまるように思います。ただし、最上位の機能が、本当に顧客にとって有効なものである必要がありますね。

(3) マルチコンポーネント利益モデル
・製品はひとつだが、顧客が購買機会に応じて異なる購買行動を示す(幅のある価格適応性を示す)ことを前提に、対応するコポーネント毎に異なる率で収益をあげる。
→ ソフトウェア製品だとサービスとセットにすることで、そのサービスがついているなら高い価格を支払ってもよいと思ってもらう等が考えられるかもしれません。

(4) スイッチボード利益モデル
・部材を顧客の固有のニーズに合った最善の方法で組合せ、ワンストップパッケージとして提供すること。更に、そのパッケージを顧客が使わざるを得ない市場シェアを取ることで利益をあげる。
→ 垂直統合モデルによるDB専用機などの例があてはまりますね。ただ、これは他社排除の戦略でもあるので、ビジネスで適用するには、絶対的な強みが必要になりそうです。

(5) 時間利益モデル
・優れた製品を最初に市場に投入することで先行者利益を得る。他社の参入によって時間とともに価格は下落していくが、それまでに高い利益を稼ぐサイクルを回す。そのための手段として、販売後垂直立上げをするための即時普及の準備も必要。
→ これは理想ですが、なかなか難しそうです。新しいアイデアを着想する発想も必要ですが、新しいアイデアを反復生産可能な製品に転化する単調な部分が重要でそこをスピード感を持ってできる能力も必要と思いました。

(6) ブロックバスター利益モデル
・ブロックバスタ=大ヒット商品。ブロックバスターになり得る種をリストアップして、その製品に開発資源を集中投入することで利益を稼ぐ大ヒット商品を生み出す。ただし、それが失敗した場合に備えて、バックアッププロジェクトを同時に走らせておくことも必要。
→ まず選択ができていないのを何とかする必要がありそうですね。しかも、だんだんと使える原資が減ってきている状況の中で、一歩足打法で局面を打開しようとするバクチに陥いっている危険な状況にあるのかもしれません。

(7) 利益増殖モデル
・ひとつの技術やキャラクター等の資産を様々な形式で繰り返し再利用することによって、コストを抑えつつ成功確立の高いビジネスを行う。
→ 技術を再利用して、別のプラットフォーム上で動かしたり、異なるターゲット市場向けに仕立て直すなど、応用動作としてはありそうです。

(8) 起業家利益モデル
・徹底した倹約精神、明確なコミュニケーション、スピード、挑戦、仕事をおもしろがることでしか生きていく道はないと思いひたすら邁進。
→ 非常に楽しそうではありますが、ベンチャー時代の特性という面もあり、大きな企業体の中で実践するには、部署を区切って何でもありにしてやるなど、環境作りが必要かもしれないと思いました。

(9) スペシャリスト利益モデル
・顧客のシステムを熟知することで、製品やサービスを提供するコスト優位性を得る。知見を再利用することで稼働率も高くなり、後継製品の品質・コスト・販売力を改善。また、細かな内容や条件に応じて納得性のある高価格設定ができる。
→ 製品体系と価格体系については、競合の類似製品からxx%引きで競合力を維持するということでお茶を濁しがちですが、本来は、非常に高度で高いスキルが要求されることなのですよね。できていないなぁ。

(10) インストール・ベース利益モデル
・利益率の低いハードウェアをまず売って、顧客をロックインし、利益率の高い消耗品でもうける。また消耗品を購入しやすい環境を整えて機会損失を防ぐ。
→ 例えば、無償でベース製品を配布しオプション品を売ったり、製品価格は安くして、その後のサポート料で長期ストック型で収益をあげていく例が当てはまりそうです。

(11) デファクト・スタンダード利益モデル
・デファクトの地位を得ることによって、グレードアップを周期的に繰り返し、顧客に定期的に購入を促す。また、顧客自身がマーケティングしてくれることにより、コスト削減を図ることができる。
→ WindowsやOracleが事例としてあげられていますが、デファクト製品を作ることは、なかなか狙ってできることでもありません。あえて言えば、圧倒的な地位を得るに至るまでの先行投資を我慢できるかということがポイントなのかも。

(12) ブランド利益モデル
・同じ製品やサービスが、ブランド力の違いで異なる価格で提供される。
→ 広告費がどこまで拡販(顧客の線品選択)に効果があるかがよく話題になりますが、ブランドを確立しておくことも重要であることがわかりました。ただ、定量的な測定ができないところが難しいところですね。

(13) 専門品利益モデル
・コモディティ製品の割合を下げ、利益率の高い専門製品(ニッチ製品)の割合を増やすことで利益をあげる。
→ 専門品もやがてコモディティ化する中で、今現在そこそこの利益を上げている製品群のポートフォリオを、意志を持って変えることのできる仕組みつくりが大切(これが難しい!)であると感じました。

(14) ローカル・リーダーシップ利益モデル
・ある地域ごとに店舗を集中的に出店することによって、その地域での立地条件、仕入れコスト等を下げるとともに、価格設定を高く設定することで利益を得る。
→ グローバルに事業を展開する場合にも、一度にたくさんの地域を狙わずに、特定地域で絶対的な強さを持つように資源を集中した方がよいということ?。展開スピードがかなり速いことが条件だと思いますが。

(15) 取引規模利益モデル
・取引規模が大きくなるほど、一件あたりの売上の上昇が一件あたりのコストの上昇よりも大きくなる。大口顧客との関係性の維持も必要。
→ SIビジネスは、今までこの利益モデルでやってきたのかも。大口顧客だけを狙うと小規模な取引も取りこぼして大口も取れないというリスクがあるので、大口顧客を追いかけるチームと小口案件を追いかけるチームを分ける等の仕掛けも必要かもしれない。

(16) 価値連鎖ポジション利益モデル
・バリューチェインの中のコントロールポイントを支配することで大きな利益をあげる。コントロールポイントを制した企業は、自分の手でビジネスのベースを決定できるようになる。競合はそれに追随する形になるので、対応がどうしても遅れてしまう。
→ インテルとマイクロソフトの例が出ていますが、どのようにコントロールポイントを見つけるかが課題。かつ、コントロールポイントが遷移していく場合に素早く追随できる能力も必要と感じました。

(17) 景気循環利益モデル
・事業は景気循環に影響を受けるが、損益分岐点を下げることによって、同じ景気でも他社よりも価格を下げることができたり、同じ売上でも多く(早く)の利益をあげることができる。
→ 損益分岐点を下げるのは、人が固定費として多くを占める労働集約型産業にとっては、大きな課題。開発プロセス/環境の見直しやパートナーとの関係の持ち方など、大きな努力が必要になりそうです。価格設定能力も重要なポイントですね。

(18) 販売後利益モデル
・価格が高く、価格の幅が大きく、選択肢が多い場合価格感応力は高くなる。一方、価格が安く、価格の幅が小さく、選択肢が少ない場合は価格感応力は低くなる。ゆえに、高額な製品を購入した後の周辺の機能を提供するミニマーケットが生まれる。
→ インストール・ベース利益モデルのようにも思えるのですが、違いは提供者が違うことだそうです。ハードのサポートサービスは、こちらのモデルになっているということなのかな? ソフトウェアのサポートはインストール・ベース利益モデルになっているように思うけど、その差異はどこから来ているるのだろうか?

(19) 新製品利益モデル
・全てのプレイヤーが稼ぐ利益は、初め上昇し、ピークを打ち、下降し、最後はゼロになる(お椀を逆さにした形)。ピークに到達する前に、投資原資を下げて利益を最大にする。
→ 製品の種別にライフサイクルがあることは経験上納得できました。一方で、現在利益を生んでいる製品から投資を減らして利益の最大化をするには、製品のポジションを冷徹に判断する能力が必要で、投資によるポジションの退き戻しの選択とどちらを取るべきか、製品カテゴリの市場特性の中で判断することが必要だと思います。

(20) 相対的市場シェア利益モデル
・市場シェアが大きいほど利益も大きい。規模が大きければ材料費の購買で有利な立場になれ、製造コストを下げることができる。宣伝等のマーケティングにも費用も製品あたりのコストを安くできる。大量の資金を投入して市場から競合を駆逐できる。
→ ハードを作るという意味での製造業ではありませんが、検索市場におけるGoogleなどは、この戦略を取っているのかも。

(21) 経験曲線利益モデル
・製造経験を積むごとに、同じものを作るためにかかるコストが下がり、利益が増える。
→ ソフトウェア業界で言えば、開発効率・保守効率を向上させて生産性を上げることにつながると思いますが、同じ機能を繰り返し作るわけではないので、作っているものが顧客にとって価値のあるものか(売れるものか)も同時に意識する必要がありそうです。

(22) 低コスト・ビジネスデザイン利益モデル
・新しいビジネスモデルをもって、同じものを安く提供することによって、従来のビジネスモデルでのコスト削減を上回る効果をあげる?
→ この利益モデルの上記のまとめは間違っているかもしれません。想像したのは、オープンソースによるサポートビジネスが、プロダクト事業を緩慢な死に追いやろうとしている現状なのですが..。

(23) デジタル利益モデル
・デジタル型=顧客自身によるカスタマイズモデル?顧客自身が望む製品のデザインをしてくれることによって、無駄な製品モデルの在庫を持つ必要がなくなり利益増につながる。顧客自身が製品サポートができるデジタル情報の提供により、コストを削減する効果もある。
→ Dellモデルを例にとっていたので、上記のように理解しましたが、デジタルの意味するところを間違っているかもしれません。これについては、「デジタル・ビジネスデザイン戦略」という本があるようなので、積読候補本に入れておくことにします。

- The Art of Profitability.