文献: Ilia Itenberg著,
Curves of degree 6 with one nondegenerate double point
and groups of monodromy of nonsingular curves,
Lecture Notes in Math., 1524, 267--288, 1992.
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この論文の前半は,記述が直観的な部分があって読みにくいので,後半の,K3曲面の周期領域を用いた議論 (2. The reduction to a problem on K3-surfaces)を先に読むほうがよい.この論文のアプローチは,V.V. Nikulinの real lattice polarized K3 surfacesのモジュライの研究(1983) のrank=2 の1例 (S = <2>+<-2>)となっている.ただし,markingの際に<2>, <-2> の各生成元についても指定していることに注意.
Itenberg氏本人によれば,この研究の詳細は彼のthesis(ロシア語)に書かれてあり,同様の研究方法が,Degtyarev-Itenberg-Kharlamov書: Real Enriques surfaces (L.N. in Math) において解説されているので参照とのこと.
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p.280
LをK3格子とし,φはL上の格子の対合, h', δ' ∊ L,h'^2 = 2, δ'^2 = -2, h'・δ' =0 とする.
isometry class (L, φ, h', δ') を先に与え、固定しておく.
L x C の元ω≠0で,
ω・ω=0,ω・\overline{ω}>0,ω・h'=0,ω・δ'=0,φ(ω)=\overline{ω}
なるもの全体を考える.
この空間をR^xで割った商空間を Ω とおく.
ここで,R^xで割る前の空間を考えてみよう.
ω = (ω_+, ω_-)
と表すと,(ω_+, ω_-) は,L_+ x R と L_{-, h, δ} x R の直和 に属する.
L_+ x R と L_{-, h, δ} x R の直和は,後半の条件:
ω・h'=0,ω・δ'=0,φ(ω)=\overline{ω}
で定義される実ベクトル空間である.
L_+ と L_{-, h, δ} はともにLorenzian (hyperbolicともいう),つまり,form を対角化したときのpositive square の数が丁度1なので,前半の条件:
ω・ω=0,ω・\overline{ω}>0
を満たす(ω_+, ω_-)の全体は,4個の連結成分からなる.なぜなら,ω_+, ω_- それぞれの第1成分の正負の組合せで,正正,正負,負正,負負,の4とおりとなるからである.これをR^xで割った商空間がΩなので,Ωは丁度2個の連結成分からなる.(正正 と 正負)
さらに,(-φ)の作用を考えると,(-φ)(ω_+) = - ω_+, (-φ))(ω_-) = ω_- なので,
(-φ)の作用により,上の2つの連結成分(正正 と 正負)は移り合う.
定義 (L, φ, h', δ') の自己同型で移り合うようなΩの元は,equivalentであると呼ぶ.
(-φ)(h') = h',(-φ)(δ') = δ'であることから,(-φ)は (L, φ, h', δ')の自己同型なので,(-φ)で移り合うΩの元はequivalent.そこで,(-φ)で移り合う元を同一視し,空間 Ω/{1, -φ} を考える. この空間は, L_+ と L_{-, h, δ} それぞれから得られる Lobachevskii spaces ( ,
と書く) の直積とみなせる.
p.281
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● (one ) double point が「非退化」であることの判定法
ωがnondegenerate double pointを1つ持つ実6次曲線に対応するmarked実K3曲面(markingに注意)の周期である
⇔(必要十分)
ω・v=0,v・h'=0,v^2=-2 なる v (in L)が,δ',-δ'のほかには存在しない.
(論文には一方向の主張のみ書いてあるように見えるが,必要十分であることが言える!)
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L_+ と L_{-, h, δ} のどちらか一方は,δ'とmod 2Lで等しい元を持たないことが容易にわかるので,
collections { Ω_+^j } と{ Ω_{-, h, δ}^i } のどちらか一方は唯1つのpolytopeからなることになる.
そこで,
Ω_*
を,
= { Ω_+^j } (L_{-, h, δ} が δ'とmod 2Lで等しい元を持たないとき)
{ Ω_{-, h, δ}^i }
(L_+ が δ'とmod 2Lで等しい元を持たないとき)
と定める.しかるに,反正則対合conj を,後者が成り立つように選ぶことができるので,結局は,
Ω_* = { Ω_{-, h, δ}^i }.
とすることができる. ようやく定理2.1を述べる:
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定理2.1. (Itenberg, p.282)
同型類(L. φ, h', δ')をひとつ固定する.
nondegenerate double pointを1つ持つ実6次曲線から決まるmarked実K3曲面 (X, conj)で,そのassociated involution (H_2(X, Z), conj_*, h, δ) が与えられた(L. φ, h', δ') にisometricであるものの全体を考える.
そのような曲線たちの rigid isotopy types は,
Ω_* に属するpolytopes (→ただし up to the automorphisms of (L. φ, h', δ')で考える) と bijective に対応する.
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