夜中、突然目が覚めた
言葉に出来ない違和感に
暫く動けず、空を見つめていた
何かがおかしい
けれど、何がおかしいのかが
わからない。言語化が出来ない
数分が経ち、やっと理解出来た
時間が、空間がずれているのだ
大きなずれではない
微かな、人間には認識出来ない
出来るはずのないずれがあるのだ
2つの空間が、時間が
繋ぎ合わされているのだ
真ん中の時間が、すっぽりと
抜けていて、その前後が
貼り合わせられている
その貼り合わせられた部分に
自分がいる
それを、得体のしれない違和感
として、感じていたのだ
そうわかった時、毛穴が逆立つ
ような不快感に、身体が震えた
2枚の紙を、貼り合わせる時
数ミリの糊代を作る
その部分には、僅かに厚みが出来る
そこを見れば、貼り合わせた部分が
確認出来る
そのポイントに、私がいるのだった
ゼリーをスプーンですくい、その
ゼリーを元に戻しても、形が崩れ
隙間が出来る。すくわれたゼリーと
元のゼリーの境目は、見ればわかる
今の私は、その境目にいるのだ
元々あった、時の流れの中には
もう、決して戻れはしない
このまま、進むしかないのだ
全て、自分で決めた事なのだから
友人と、SF映画を見に出かけた時
車の中で、その話しをした
未来から来てるから、時間軸を
行ったり来たりするの、得意だよね
友人は、笑いながら私に話す
それは、友人の言葉ではなかった
彼女の守護霊の言葉だった
守護霊さんが話す時は、その場の
空気が、さっと代わる
軽く明るい空気が、広がっていく
声のトーンも、一段明るくなり
軽やかで、弾むような話し方に
変わる
何よりも、肉体から発される
エネルギーが、ガラリと変わるのだ
彼女の言葉を、全部聞き終わらない
うちに、身体が激しく跳ね始めた
危ないからやめて、と言っても
身体の中で、エネルギーの塊が
様々な方向へと、出口を求める
かのように、跳ね回る
まるで、瓶の中のノミのように
友人は笑いながら、軽い口調で
大丈夫?と聞いてくる
まだ守護霊さんがいるらしい
なかなか静まらず、映画館に着く
前に、酷く疲れてしまった
映画の中で、男の子がUFOに拐われ
た瞬間、時間が止まり、元の場所に
戻された途端、再び時間が
動き始めるシーンがあった
私に起きたことの、答え合わせを
してもらえたように思った
ある朝、 あれ、なんでまだ
私生きてるの!? と思った
その途端、得体のしれぬ不快感が
ゆっくりと身体を包んでいく
私は確かに、死んだはずなのだ
この世界は、人類は、確かに滅んだ
はずなのだ。なのになぜ、私はまだ
ここにいるのだろうか
目に映る世界は、今迄と同じ時間の
流れの中に、有るように見える
何も変わらない、けれど全てが違う
幾つもの、ネズミの入った水槽が
ズラリと並んでいる
全く同じ大きさの水槽、同じ敷き藁
同じ餌。条件は全部同じだ
けれど、同じ物でありながら
同じではない。置かれている場所が
違うのだ
右端の、水槽の中にいるネズミを
見えざる手が、ひょいと持ち上げ
すぐ隣の水槽に移した
そのネズミは、私なのだ
奇妙なイメージに、頭が混乱し
つい、夫に言ってしまった
ねぇ、天変地異起きたよね
人類滅亡したよね
アトランティスの時のように
夫は、目を丸くして、ポツリと
うん、起きた と答える
お互い、奇妙な感覚に耐え切れず
顔を見合わせ、黙りこんだ
否定してほしかったのに、夫も同じ
感覚に囚われていたのだ
ならばと、以前感じていた事も
話してみることにした
アトランティスの時代と、全く同じ
エネルギーが、世界中に満ちている
あの頃より、もっと重いエネルギー
だというのに、何も起きていない
何故まだこの世界は、滅ぶことなく
存在しているのだ
昨日までは、そう感じていたのに
今日は、もう滅んだはずだと思う
そんな私の感じたことについて
貴方はどう思うのか、と聞いた
夫も、そう感じていたと言う
時間と空間が、ぐにゃりと歪み
足元が揺らぐように感じた
自分だけが、おかしな時空に
放り出されたと思っていたのに
夫も、同じように感じていたらしい