能力者と、長時間、一緒の空間に

居ることで、その人も、少しずつ

潜在能力が開花していくという


花の種が、太陽の光に照らされて

天へと、その芽を伸ばすように


まるで、メトロノーム実験

(同期現象)のようにも思える


台の上に、1台のメトロノームを

置き、その後ろに複数台(10〜)

のメトロノームを並べる


各々のメトロノームが、異なる

リズムを刻んでいる


メトロノームの振動が

土台の板を通して、伝達しあい

各々のリズムを、僅かに変化させ

次第に同期していく


数分で、全てのメトロノームが

同じタイミングで

リズムを刻むようになる


いつしか、私に起きた時空のズレは

夫だけではなく、息子と一緒にいる

時にも、起きるようになっていった


時々、自分達の居る一室だけが

まるで宇宙空間の中に、浮かんで

いるように、感じる夜があった


UFOの中の一室で、家族団欒を

楽しんでいるかのように


この状態こそが真実で、現実と

呼ばれるこの世界は、ドラマの

セットのように思えてくるのだ


私だけが、そう感じているのかと

夫と息子に問うが、彼らもまた

この部屋だけが、違う次元に在る

ように感じると答えるのだった


1部屋ごとの、パーツの組み合わせ

で出来ている、玩具の家がある


見えざる手が

その玩具の家の中から

私達のいる一室だけを掴みあげ

その掌の上に乗せ

そっと観察しているのだ


やっと巡り来た、静かな日々が

指の間から、溢れ落ちていく


いつしか私達は、さらなる怪異の

日々の中に、巻き込まれていった


始まりは夏だった

運転中、何度もアゲハ蝶を見る


多い日には、10匹以上の蝶を見る


国道を、かなりのスピードで

走っているのに、蝶がフロント

ガラスの前を、ヒラヒラ横切る

突然目の前に、現れてくる

今迄そんな事は無かったのに


あの日、15匹のアゲハ蝶が、私の

目の前を、横切って行った


これは、天界からのサインなのだ

天命に逆らう事など、私には

許されてはいないのだ


もう今迄の生き方は

捨てなくてはならないのだ


もう、人間であり続ける事を

普通の人生を生きる事を

諦めなくてはならないのだ


私はかつて光だった

自ら望み、地に降りた光だった


地球神に請われ、宇宙からこの星に

降りたった、スターシードだった


もう、人間ではいられない

時は満ちたのだから


私の覚悟を、試すかのように

不可思議な出来事が、起き始めた


ある日、息子の受験する学校に

下見に出かけた

少し離れた所から、校舎を眺める


黒いアゲハ蝶が、私達の近くに

ヒラヒラと飛んで来る


体育館と、校舎を繋ぐ渡り廊下を

男子生徒が歩いていく


バインダーの束を抱え、気だるげに

歩くその子は、息子だった


似た人だと思う間もなく、強い

確信が、胸の奥から湧き上がる


あれは、未来の息子だ


足元から、恐怖が這い上がってくる


帰り道、冗談めかしながら

見たものを話した


息子が、酷く驚いた顔で私を見

自分も、同じものを見たと言う


翌年息子は、その学校の生徒になり

渡り廊下を歩いていた


息子とコンビニに、買い物に行った

振り返ると息子が、酷く驚いた顔で

私を見つめている

話しかけても、無表情のままだ


車に戻った途端、興奮しながら

話し始めた


お母さんに、声かけようとしたら

女子大生になってた


黄色のチェックのスカートに

紺色のカーディガンを着て

三つ編みにした、22歳位の女子大生

になってたから、びっくりした


女子大生なのに、お母さんみたいに

話しかけてくるから、怖かったと