子供の塾の帰りに、知人を見かけた


走行中だったので

減速した車内から、声をかけた

互いに笑顔で、手を振り合い

知人の横を、通り過ぎた


彼女の姿は、ジブリ映画に出てくる

ソフィーによく似ていた

とても美しい、若い女性の姿だった


彼女はもう、80歳を過ぎたはずだと

いうのに


息子に話すと、うん、そうだったね

と軽く返事をした


ソフィーは、ハウルの前で、

老婆になったり、若い女性に

戻ったりしていた


そうか、彼女はソフィーだったのか


コンビニでの私は、息子の目に

あんな風に映っていたのか


彼女がとても美しかったので

なんだか、とても嬉しかった


息子が小学生の頃、Оさん、友人

私の4人で旅に出かけた


息子が、寺院の仏像の前で、熱心に

お参りをしている


もう行くよ、と声をかけると、最後

にもう一度だけ、お参りしてくる


そう言い、くるりと背をむけた


急ぎ足で立ち去る、息子の後ろ姿は

かつて私の元へ


「貴女の息子として生まれます

どうぞ宜しくお願いします」


と、挨拶に来てくれた

大人の彼の、後ろ姿だった


息を飲みながら

その背中を見つめていた


Оさんが、とても嬉しそうに

「うわぁ、彼凄いねぇ」と

満面の笑顔を向けてくる


友人も、ニコニコしながら

子供じゃなかったね

大人の男の人になってたね、と言う


私が、「25歳位の、黒いスーツを

着た、大人の男の人だよね」

と言うと、そうそうと

2人揃って、笑顔でうなずく


私達は、同じ姿を見ていた

3人で、あの日の彼を見たのだ


息子の、幼い頃の事を思い出した


ゲームがしたくて、ぐずっている

彼の傍らに、眉間に皺を寄せ

苦々しい顔で佇む、ほっそりとした

長身の、僧侶の姿を見た事


山奥の寺院へ旅をした時

修行僧の宿坊へ続く、廊下の前で

跪き、動こうとしない


あの奥に、仏様がいる

あっちに行きたい


そう言って、手を合わせ

泣いていた彼の姿を見た事


Оさんの研修所で、お茶をしながら

友人と、反省がなかなか出来なくて

情けない、と笑いあっていた


幼い息子は、目を丸くして、私達を

見つめ、大人びた口調で話し始めた


あのね、お母さん達は、白い色の

ワンピースを着てるの

その服で、水たまりをパシャンって

したら泥がつくでしょ?ポチンって


2人共、そのポチンって付いた

ちっちゃい汚れをつまんで

こんなに汚れちゃった

情けないって言ってるんだよ


そんなに真っ白なのに、なんで

真っ白な自分じゃなくて、ポチンて

付いたとこだけ見てるの?


そう一気に言って、私達の顔を

じっと見つめてくる


何と言っていいのか分からず

3人で、そうかぁと笑いあった


かつて、独裁王だった自分を

かつて、悪魔だった自分を

全てを思い出した時、精神の

バランスを、大きく崩してしまった


かつての話ではないのだ

別のタイムラインの自分達は

今現在も存在しているのだ


彼らが消える事も

彼らを消す事も

決して出来はしないのだ


そもそも、彼らが存在するからこそ

今ここの私は、存在出来ているのに


逃げる事も、消し去る事も出来ない


でも、受け入れられない

思い出してしまった以上

忘れる事も出来ない


混乱する私を、心配した友人が

家を訪ねて、来てくれた


2人で話し込んでいると、ゲーム

をやめ、様子を見に来た息子が

鋭い目をして、話を聞いている


突然、お母さん!と

強い口調で、話しかけてきた


あのね、お母さん

皆んな、悪魔になった事あるんだよ

天使だったのに

悪魔になっちゃうんだよ


俺だって、真っ暗な闇の中で

大きな岩に座って、どうして

こうなっちゃったんだろうって

ずっと考えてたんだよ


でも、また天使に戻れたよ

今のお母さんは、もう悪魔じゃ

ないんだよ。天使なんだよ


悪魔だった時も、お母さんは

ずっと、天使だったんだよ!

忘れちゃっただけなんだよ!


そう一息に言って、見つめてくる


私達は、何も言えなかった


まだ幼稚園児なのに


マリオカートで、遊んでたのに


そこにいるのは、幼子の姿をした

知らない誰かだった


友人は、すぐ笑顔になり、息子に

そうだよね、私もそうだったかも

と、笑いかけてくれた


彼女のエネルギーが、スッと変わる

彼女の守護霊様だ


そうか、この人は、息子の守護霊だ


空間が揺らぐ

エネルギーが、マーブル模様に

うねり始める。白でも黒でもない

けれど、白でも黒でもある私達


今私達は、一体何処にいるのか



息子という肉体(板)に

魂(メトロノーム)が

固有の振動を発し、肉体の持つ声や

言葉、細胞に影響を与え、息子の

肉体を通して、その振動を周囲に

放っている


毎日、一番近くにいる私に

能力の復活という、エネルギーの

同期現象を起こしたのだ


息子の肉体が、大きくなり

この世界での、経験を積むうちに

彼は普通の人間になっていった


けれど、彼から放たれる振動は

私と同期し続けていたのだ


これらは、集合的無意識の領域

で起きている


だから、私と同じ周波数帯を持つ

他者(Оさん、友人、知人)にも

影響した


時空を超え

同期現象が起きていたのだ

湖に小石を投げ入れると

波紋を描き、広がっていくように


個々の要素が、互いに影響しあい

全体としてのリズムが、同調し

集合想念が同期していく


ガイアをお創りになられた

源の愛の神のエネルギーと、人類を

同期させていく


それが、私達スターシードの

最大の仕事なのだ


私は数多くの、母として慕った

星々を、目の前で失ってきた


いつも彼らは、私の愛するものを

奪い尽くし、破壊し去っていく


幾度繰り返そうとも、私は

愛する星を、家族を、友を、恋人を

守り抜く事が、出来なかった


幾度、愛する星が、泪するのを

星の泪を流すのを、見ただろうか


一瞬の煌めきを宇宙に放ち、

儚く消えゆく姿を、一体幾度

見つめたことだろうか


私達スターシードは、かつて愛した

星の欠片を、星の泪を、その光を

己の魂にそっと抱き続ける


そして、源の、愛の神の命を受け

次なる星へと、旅立つのだ


愛してやまぬ、この星に、決して

星の泪を流させぬ為に

私達は、愛を放ち続ける


この星が、誰にも傷つけられぬよう

この星が、最後の時を迎える

その日まで

私達の仕事は、終わらないのだ