昨夜、成田空港に降りたったサムライブルーの選手達。1勝1分け1敗でのグループリーグ敗退となったが、当初の予想を上回る活躍に、空港に押し寄せたサポーター達は拍手をもって選手達を出迎えた。
帰国後の会見では、選手達も口々に「悔しい」としながらも、その表情には安堵や充実感のようなものも感じとれた。
しかし、今大会の日本代表最終節の戦い方について、世論の評価は二分している。
「敗退は自分たちのサッカーを貫いたものでやむを得ない。できる限りのことはやった」とする意見と、「もっとクレバーにやれば決勝トーナメントに上がることが出来た」とする二つによってだ。
皆さんはどのような意見をお持ちでしょうか?
私が今回の敗退により感じたもの。それは、日本サッカー界として超えることが出来ない壁の存在だ。そして、今私を支配するものは多大なる無力感だ。
_最終節、あまりに実直であるがゆえの悲劇と感じている。
この悲劇は避けられなかったものだろうか。
この試合、後半37分の段階で、グループHのもう一試合コロンビア対セネガルの試合でコロンビアリードとの一報が報道ブースにも届いていた。もちろん同様の情報が日本ベンチにも届いていたはずで、その一瞬、ベンチが慌ただしくなる様子はこちらからも見てとれた。
ご存知のようにその後、グループHもう一方の試合はコロンビアが勝利して終わった。
ここからはタラレバの話になるが、後半37分の時点より日本が1点ビハインドの状況を保つことができていたならば、セネガルとの勝ち点、得失点差で並ぶことになっても、最終的にフェアプレーポイントの差で日本が決勝トーナメントへの進出を決めていたことになる。
しかし、実際の日本は、西野監督自身のフィロソフィーの実現に徹した。他会場の状況に目を瞑るかのごとく、戦い方を変えることなくポーランドゴールを攻め続けた。実直に。
そしてあのロスタイムの悲劇を迎えたのである。
試合後、センターサークル上で大の字になり天を仰ぐ本田圭佑の姿を眺めながら、私はひとつのifを思い浮かべていた。
「ハリルならどのような決断を下しただろうか」と。
推測でしかないが、彼であれば他力本願なコロンビア勝利を前提とした自陣後方でのボールキープ(時間稼ぎ)も躊躇なく実行するであろう。
彼は自らに求められるものが何であるかを判断するだろう。それはある種、選手を冷徹に突き放すものである。その方法が選択肢として存在することこそ、戦術や技術ではない、日本と世界の差ではないだろうか。
そのような決断を下すためのサッカー観やその根幹の部分こそ、日本文化の中では養い難いものであり、ヨーロッパ社会に息づく高度なサッカー文化の中でこそ育まれるものである。
逆説的であるが、サッカーが文化であるがゆえ、そこにアンチフットボール的選択肢も生まれるのではないか。
日本文化の中で育まれた美徳や国民性を持つものとしての筆者個人の感覚であるが、時に「卑劣」とも映る時間稼ぎなどの選択を下すことを善しとする日本人監督など果たしているだろうか。各種リスクを汲み取った上で必要とされる決断であるとしても、だ。
実際に、西野監督は選手たちにフットボールの遂行を指示し、アンチフットボールな選択肢など存在しないかのように、日本はポーランドを打ち続け、あのような結果を迎えた。
この最終節の戦い方に対して、私は西野監督を責めることなどできない。
言うなれば三ヵ月前、この日本人監督に頼らざるを得ない状況を自ら作り出したことにより、今日の結果はもうその時、既に決まっていたことなのだ。
私は今回の結果に、日本人監督の、そして日本サッカー界の限界というものを感じた。
それは“自分たちのサッカー”という曖昧なものではなく、我々の根幹にある国民性と、サッカーというスポーツのマッチングの限界である。そこに無力感を得ているのだ。
このサッカー界での現実主義に対し、実直さを美徳とする国民性との乖離。それを埋めることは並大抵のことではないだろう。(今の時代でも、我が国のサッカーの基礎にあるものは学生サッカーなのだ。殆どの代表選手がそこでの薫陶を受けている。果たして日本サッカー界が現実主義との乖離を埋める必要性をどれほど感じているのか、私には分からない。)
今大会の戦いにおいて、前任者と比べるところの“意思の疎通”を容易とした日本人監督による利点の部分もフィーチャーされたところではある。
しかし、最後に残ったものは、腹をくくり現実主義に舵を切ることができない我々自身の臆病さに対する失望である。
日本的価値観と、サッカー界での成功は両立することのないファンタジーだとするならば余りにも悲しい。しかし、目の前で起きたことこそが現実である。
この敗退は、単に西野ジャパンだけの敗北を意味するものではない。
これは世界のサッカー界の地図における「日本」の敗北である。
(「ベップチャン(前別府 蹴造)の 前のめりフットボリスタ!」/ミンメイスポーツ関東版(2019.6.30)より)
※この記事はフィクションをもとに構成されております。